十八


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カサカサ





微かに草をかき分ける音が聞こえる。










いつの間にか意識を手放してしまっていたようだ。





体は……すごく重たいものを乗せられている感覚がして動かせそうにない。






 状態は仰向けのままで、左に首を向けてしまっているので視界は悪いが右目少し動かすとぼやけているが微かに夜空が映る。


左手は腹部を抑えており、右手はだらりと地面に投げ出され。








 ケイリーが誰かを連れて戻ってきてくれたのだろう。


 どれぐらいの時間意識を失っていたのだろうか。








 よかった。助かる。












「……」






 声が聞こえない。


 誰の声も。






「……ぅ゛……ぅ゛…」






 目を醒ましてからろくに呼吸ができておらず、声を出すために必要な空気を吸い込もうとしても息が詰まる。






 どうして動かないんだろうか。




 それともさっきの音は聞き間違いだったのだろうか。







 考える力も徐々に落ちていく中、右手に液体のようなものを触る感触が伝わる。





 先程まで音はなく、静寂に包まれていたが今は音が聞こえる。


 ネチョリネチョリといったように。そう錯覚しているだけかもしれない。


 だがそれは確実に右手を包むように濡らしていく。






 気持ち悪い。






 右手を振り払おうとするもそんな力もないのか腕が上がらない。




 首も動かせず、振り向くことも出来ないが、圧迫感からゆっくりと右腕を覆い尽くしている。








 怖い、怖い、怖い。




 腹部の痛みは感じなくなっていた。






 それと入れ替わるように怖いという感情が溢れ出す。






 抵抗できない恐怖。






 腕を包みこみ、胸にうつり、首元に迫ってくる。


 それが何か見たくない気持ちはあるが、謎のものが時間の経過と共に自然と正体を現す。






 液体状の生物。


 様々な作品で雑魚の代表例であるスライム。






 RPGの醍醐味として知られるスライムは本当に存在しているかどうか気になり、


 リムルに聞いてみた所、存在していた。





 スライムは基本的には無害だと。弱く、個体数もあまり見ない代わりにどんな場所にでもふと現れる魔獣の一種。


 生きている生物に襲いかかることもなく、生まれても特段何もせず死んでしまうこともあるほど貧弱な魔獣。





 いくら弱いといっても魔獣なので食事を取る。食料は死骸。別名掃除屋とも言われるのだが、死骸なら何でも食べる。虫でも、魔獣でも、人でも。


 溶かす力も弱いので、じっくりと時間をかけて食事を取る。




 生命力溢れる生物に自ら近づくこともしない。






 タケルはスライムに死体と思われているのだ。




 体が少しでも動けば小さな子供でも取り除くことは容易と聞いている。






 なのに、容易なはずなのに体が動かない。







 徐々に徐々に這い上がってくる。




「……ぁ…ぁ……」




 生きているぞ。まだ生きているぞ。




 小さな抵抗の為に声を出したくても叶うことはない。





 その僅かな抵抗すらも阻むようにスライムはタケルの口元に到着する。





 微かなにできていた呼吸も許されなくなった。















 痛いという感覚は随分前になくなっていた。



 苦しいといった重いもなくなった。



 怖いという感情もいつの間にか消え失せた。















 ただ、ただ思うことは1つだけ


























 異世界なんてこなければ良かった





















































































 タケルの意識は完全に途切れた

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