十二




結局の所、属性の判別は済んだものの、魔法を使うと行ったことは叶わなかった。




  魔法に関する本はあったものの魔法の取得に関わる本はなく、村に魔法をある程度つかえるのは教会に属するサーモルのみ、教会に属する者は教会意外に属しているものに魔法を教えることを宗教上禁止している。教会に属するにはかなりの制限がかかり、今後の行方を教会にゆだねないといけない。


  そうなってしまうと自分が今後冒険にでることが叶わないため、教会委にて魔法と行った手段を取得することは叶わなかった。





  村人の中にはちょっとした魔法ぐらいなら使えるものもいたが、軽いものを動かしたり、小さな穴を掘るぐらいのことで、実際の所手でした方が早いことが大半だった。


  それでも教えを乞うてみたが、自身の感覚を人に伝えることが難しかったのか、こちら側が教えて貰っても理解力が足りないのかでいくら使おうとしても発動することもできなかった。





  結局の所、異世界転生?召喚?どちらかはわからなかった、それによってなにか特殊な力を得ている実感はなかった。






  それでも村の人達は優しく接してくれていた。全く何も出来ず、知識もないもの村長宅にて記憶を無くしているといった設定の自分に対して、あまり距離をおかずに接してくれていた。





「じゃぁ、罠に掛かっていた角ウサギの解体をしてみようか。」





 あれから2日、自分の力のなさを実感していただが、どうしても街にいってみたいといった気持ちから、村長宅にて少しでも手伝い等を行いながら小遣いをもらう約束をした。


 今は初めての狩り体験をさしてもらっているが実際のところ罠の確認、そこからの解体作業である。





 自分より年下の少年が目の前でナイフを使いあっさりと内蔵を取っていた。

 いくつか貼っていたトラばさみのような罠が小さな角の生えたウサギのような生物を捕まえていた。




  罠にかかっていたのは4匹。うち3匹はすでにこと切れているのか動いておらず、もう1匹はまだ少し体力があったようで必死に罠を外そうと体を動かしていた。





 きっと俺のためなんだろうが、年下の少年はあっさりとその命をナイフを突き刺し奪った。




「さぁ、やってみて」



 既に事切れている1匹の足を持ちながらこちらに少年は渡してきた。




「ここにナイフを……」





  はじめて包丁を形のあるものに刺してみようとした。これまである程度調理され、肉になっているもの、刺身の薄切りにされていない状態のものを、自分の食べやすいサイズに切り分けたり、こねたり、そういったことはこれまでしてきたが、形が完全にある状態から【捌く】といった作業は初めてである。





「そうそう、深すぎず刺していっきにぐいっと!」





 少年は残り3匹のうちに2匹をあっさりと解剖してしまう。




  あとは手渡されていた1匹のみ。気分はよくない、数日前の現実では、ただただ生きて、ただただ勉強をして、ただただ寝て食ってしてきた。


  実際の所同じようなことをしていた人は少なくないのだろう。一般的に、牛や豚、鳥が食卓に並ぶと行ったことはそれを育てコロしていた人がいたからだ。だからこそ肉を食うことが出来ていたんだから。





  いざ自分がやってみようと思うと手が止まってしまう。地域によっては、学部によっては解剖を授業でしているところもあるだろうが、タケルにとって初めての経験であるので手はすぐに動かすことが難しい。


  手が震える、本当にこれでいいのかと思いながらナイフをウサギの皮膚につきつける。




「せーの!」




 少年の言葉と同時にいっきに多少失敗してもイイカと思いサクっと切れ目を入れる。



「そこに手をつっこんでいっきに引き抜く!」





 嫌悪感。


  素手で表面を触る分に関しては、愛らしい見た目もあったのであまり抵抗なくできたが、内側に手を突っ込むといったことに切り裂くとは別の戸惑いはある。しかし、自身のこれからのためにもと思うとやらざるを得ない。





  手をそっと切れ目を通していれていく。グチュグチュっとそんな音が聞こえ、手を離したくなったがこうなればやけくそである。


  なかにあった周りより少し堅い部分を掴みながら引っこ抜く。





「うえぇ……できた…?」





 手には小さな肉の塊を掴みながら少年のほうへ振り向き訪ねる。




「まぁ及第点だけどね~」




そういってケンリーは血の付いた手を水筒のような容器から水をこぼして流す。





  彼は村に数少なく住む子供の一人でケンリー。歳で言うと11才になったばかりの子で、時折自身の家族のためや近隣の人の代わりに村の仕事を手伝っていて、今回の狩りについてもお手伝いの一貫である。





  そしてもう一つの仕事が結界の確認。こちらは罠の確認より先に済ましていたのだが、村に限らず、街、首都がどうして魔物に襲われることなく、そこに有り続けることができるのか。


  首都などに至っては、大きな壁があるため門を通じて中に入るしかないのだが、ここのように森の中に存在している村がどうして安全でいられるか。





  サーモス曰く必ずしも安全といったわけではないらしいが、魔物に限らず、生物が苦手とする空気を発する膜を張っているって考えるのがいいらしい。実際の所、どの生物でも出入自体は自由にできるみたいだ。





  魔物とは、元は獣だった生物が進化の過程で魔力の影響を大きくうけ、突然変異したものらしく、魔獣のみを阻むような結界も作れないかと試行錯誤されていたらしいが、結局できたものは火力を阻む結界のようなものぐらいで、すなわち人種はみな大なり小なり魔力をもつためはじかれてしまうと行った理由で上手くいかなかったらしい。





  所詮近づきたくないような感覚にされるだけなら安全性はないのではないかと疑っていたが、生物上、特に野生の生物はわざわざ危険だと思うものに近づこうとはしないとのこと。





  あとは、気配の多さでも近づかれにくい。例えるならば、結界を人で例えるなら、体格の良く、見た目もあきらかなお兄さんにわざわざ話しかけたくないでしょ。と問われると頷いてしまう。



 話してみたらとても優しく、いい人だったとして話すまではわからない。





  そして気配とは、明らかに確立されたグループがあるところに自ら入り込んでいくことは、意外と気が付かれてしまう。学校でも、サークルでも会社でも、0からというのは難しく、それに近い感覚だろうか。



  それがより敏感な人種以外の生物たちは、わざわざ危険を犯してまでこちら側にくることが少なく安全が保たれやすい。





  しかし、時々結界の破損や紛れ込むこと、近くで様子を岡が宇用に集まってくることもあり、そういった際に冒険者組合や国に依頼する。



  結界の部分破損の場合は、教会に属する人間が1人で修復できるらしいが、完全に破壊されてしまっては大がかりな作業になるため、守るための依頼と修復するための依頼を出さなければならず、村の資金を使うことになってしまうため、1日1回は必ず見回りをするようにしている。




  本来は大人の仕事だが人手が足りないため2人での行動のため、中でももっとも魔獣の出没率が低い東通りの結界の確認。



  魔石を木の上層部に縛り、念のためその木の下にも土を掘り、魔石を埋めることで片方が何らかの具合で不良を起こしても大丈夫なようにし、それで一セット完了、この作業を繰り返して村全体を覆う。




「ケンリー、これって徐々に広げて、安全な場所を増やしたらいいんじゃないのか?」



「兄ちゃんもバカだなー、そんなことすると狩りするにももっと遠くまで行かないといけないし、あいつらだって住んでるとこ追い込まれていったら襲ってくるかもしれないだろ?だから程ほどじゃないといけないって父さんがいってたぜ!」



「ケンリーだってお父さんに教えてもらった割にひどくね?」

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