十一



翌朝、鳥の鳴く声によって目が覚める。




知らない天井、知らない部屋、どこだここ?





  目に映るものを確認する。自分の部屋と違い、木製で出来た部屋。机も全て木製。パソコンも置いていない。まだ夢でも見てるのだろうか。そういえば昨日の深夜アニメを録画し忘れていたな。なんて事を思いだしながら、再度眠りにつくため目を閉じ眠る体勢を取る。







 何かがおかしい。意識すると眠気は引いていく。目を開け、再度体を起こし、辺りを見渡す。




 心臓がいつもより早く鼓動しており、頭に血が昇る感覚がする。






「そうだ、異世界に飛ばされたんだった……」






  昨日の出来事を思い出す。今できることは、ムウラの手伝いをし、少しでも金を手に入れ、街に行くこと。それと、昨日の結果を見ることだ。


紙は無くすことないよう、サイフの中に入れておいた。


 自分の血がついているといっても少量であり、折りたたんでいるため汚れる心配もない。





  立ち上がり、カバンの置いている机へと向かう。サイフから紙を取り出す。紙についていたはずの血の痕は消えており、紙は赤色と緑色がどちらも同じぐらい色を滲にじませていた。






 色によって、どの属性なのか聞くのを忘れていたが




「赤色は火で緑色は風の属性?」






  色で想像できる属性としては間違っていないだろう。これについては、ムウラかリムルに確認すればわかることだから問題はないはず。


  わかったところですぐに魔法を使えたりしないのがとてつもなく残念である。






  起きてから今の部屋でやれることはないのでリビングに向かうがムウラとリムルの姿は無く、勝手に上の階に行くことは注意されていたので朝の散歩をすることにする。


  朝から元気に走り回っている子供達、畑仕事に向かうのかクワを持って移動する大人や、家の前で話し込んでいる主婦達がおり、平和な村だということがわかる。





 少しの間歩いていると教会が見えてくる。






  教会の入り口にあたる階段部分で二人の人物が座り込んで話をしているのがわかる、


 徐々に近づいていくうちに、それがサーモルとリムルだと気がついて足を止めて民家の物陰に隠れてしまった。




「なんで俺、今隠れてるんだ?」




  別に悪いことをしたわけではない。たまたま会いたくないヤツが帰り道の途中で見つけてしまったからあえて遠回りする時と同じ、できるかぎり見つからないようにしなければいけない。そう反射的に動いてしまったのだ。






 顔を隙間から出し、様子を伺う。






「最近、街では沢山の色を使った派手な服が流行っているって聞いたけど本当なの?」




「少し前はそうでしたが、今は花柄の服が流行っていると聞きましたよ?」




「そうなのね~、派手な色は目立っちゃうから好きじゃ無いけど、花柄なら可愛らしいわよね」




「リムルにも似合うと思いますよ?」




「な……何言ってんのよサーモス、似合うだなんて!」




「次回街に戻る際に購入しておきますので、是非とも着た姿を見せて下さい」




「うちにはそんなお金ないわよ?」




「お金なんていりませんよ、私がリムルの着た姿を見たいのですから贈り物として受け取って下さい」




「ん~……せっかくだし貰っちゃおうかな?」




「そうしてください」





まるで恋人同士の会話ではないか。





  村に来てからリムルと同世代とおぼしき人物はサーモスだけしか見ておらず、自然な流れなのかもしれない


  村自体大きくないため人口も多くなく、小学生ぐらいの子たちはそれなりにいるが、それ以上となるとリムルを抜くと20代中盤ぐらいの大人ぐらいしかいないように見える。





 そのことを考えると異性だとしても、話やすいのだろう




「いやいや、こんなところでジッとしててもラチがあかない。別にリムルちゃんとサーモルさんがまだ付き合ってるって訳でもないから俺にだってチャンスはあるだろ!」




  この世界に、ましてやこの村に自分との差は歴然かもしれないが、まだ付き合ってないのなら自分にもチャンスが残っているはずだと言い聞かせ、物陰から出て二人の元へ歩く。





「サーモルさん、リムルちゃん、おはようございます!」




「おはよう、よく眠れたかしら?」


「おはようございますタケルさん、よい朝ですね」




 二人とも穏やかな笑顔で挨拶を返してくれる




「ぐっすり眠れたよ、ありがとう。早速なんだけど紙に色が出たので見ていただきたくって来ちゃいました」




 タケルは色が滲んだ紙を二人に見せる。




「へ~、珍しいわね」


「そうですね、2色の色が出ているなんて珍しいですね」






 そうそう、こういった展開を待っていたんだ!


 大抵は1色しかなくて、得意な属性は1属性って限られていて、2属性が得意って時点で周りよりも優秀とか、強くなれるとか、特別だとか


 そういった展開を待っていたんだ……!




 本当なら全属性とか、今は存在しない属性が……とかを期待はしてたんだけども、反応を見る感じ悪くなさそうだ。




 2色ってすごいんですか?


 いやいや、この聞き方は自慢げに聞こえてしまうかも知れない。




 焦らず平然を装って聞いてみよう。


 ここで自慢げに言ってしまってはリムルに対する印象も悪くなるかも知れないし。




 本当に何も知らないように聞くのが一番だろう




「ど……どうなんでしょうか?」


 恐る恐る答えを聞くように。




「大体の方は1色で埋め尽くされるので珍しいですね、しかも同じぐらいに色が出ているってこともなかなかいませんよー、どちらかの方が多く面積を取っているといったことが殆どですので」




「私は青色だけだったわ」




「ということは、2属性が得意という事で良いんですか?」






「得意と言えばその通りなのですが……他の属性に比べて覚えるのは早いです。しかし、1属性だけ得意の方と比べると少し遅れを取りやすい傾向があるぐらいですかね?」






 結局の所、器用貧乏。


 2属性が得意だとしても、1属性だけを得意とする人に比べては遅いとのこと。





「もちろん個人差はありますので、どちらも1属性だけを得意とする人に比べても早く、そして効果のある魔法を出せる人もいますので落ち込まないでください。私も水属生だけなので、そういった意味を含めるなら自慢できることですよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る