#31





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 先生の指先が、トロトロになったエリの花びらを割って、その芯をつたう。

 しびれるような快感が、身体中を駆け巡った。

 花びらのなかの、やわらかな裂け目。そこを指先でただ、上下にこすられる。それだけで腰が勝手に引きつってしまう。蜜があふれだし、歯を食いしばっても、声を押しとどめることができない。


 先生は目を閉じて、エリの股間にしゃがみ込んでいる。

 何も言わず。何も尋ねず。

 指先は割れ目の谷底をこすりあげ、そのままエリのチャーミングな突起にいたる。


 っあ!


 言葉にならない悲鳴を噛み殺すように、エリの身体に雷光が走る。

 充分に濡れた指先が、小突起に触れると、痛みにも似た強い刺激が身体の内側ではじける。

 身をよじろうとすると、縄がエリの身体を規制する。どこにも逃がさない、なにも隠し立てをさせない、と縄は冷たくエリに告げる。


 いや。

 いや。


 エリの中で何かが強く拒絶する。

 望んでここにきたのに。

 望んでこうして拘束されたのに。

 今まで味わったことのないような快感を、いまこうして感じているというのに。


「あぁ…いや……いやっ!」


 気持ちが言葉になって、外に出てしまう。

 押さえきれなかった。


「ダメ…ダメっ!!」


 その言葉に、先生の指が一瞬止まる。

 エリは我に返る。

 やめないで、と願う。

 そしてやめて、と祈る。

 思い出してしまうから。嫌なことを。忘れていたいことを。

 先生の指が、エリの中に入ってくる。

 そのまま深く、侵入されてしまう。

 エリは追い詰められてゆく。

 先生の指が、狭いトンネルの中を走る。

 なかのひだをこすられ、奥の壁をノックされる。


 いや。いやいや。ダメ。


 拒絶の言葉が身体のなかをかけめぐる。

 しかし同時に、身体はどうしようもなく反応してしまう。強い快楽の刺激に。厳しい官能の津波に。

 逃げられない。


『―――


 あの、不吉な声が聞こえる。

 嘘。あいつはもういない。


「安心しなさい。もう誰も、きみを傷つけたりはしない」


 その声が聞こえた。

 トンネルの天井を爪先でひっかかれる。

 先生だ。

 先生の声だった。

 そこを刺激されたら、漏れそうになる。

 コリコリと、指先がエリの襞をまさぐる。

 行為に似合わない穏やかな声。


 あぁ…。


 溶けちゃう。

 漏れちゃう。


 ゆだねていいのだ、とエリは思った。

 この人に、いま、自分をゆだねてもいいのだ、と。


 心のいましめを、自ら解いた。

 エリは、いままで一度もしたことのない勇気を持った。


 ため息とともに、エリのスリットから、透明でサラサラの液体がほとばしる。

 でもエリはそれすら、意識できない。

 先生の指がエリを貫く。

 固く閉ざしたエリの芯を。心の核を、その指が撫でる。

 エリを縛っていたのは、麻縄などではなかった。

 それを、その指が教えてくれた。


 あっ!


 目の前が真っ白になり。

 身体中が引きつった。

 痙攣し。

 すべてを解き放った。

 エクスタシーのただなかで、エリはだった。




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