#4
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部屋のブラインドからは、夜の街の灯りが差し込んでいる。
床に敷かれたラグに、その灯りが縞模様になっている。
気付いた時、エリはベッドに寝かされていた。
男がシャツを羽織っている後ろ姿が見える。
その肩から肘にかけて、不思議な熱帯の植物の文様のような刺青が見えた。
「それは…なに?」
エリの立てた声に、男が振り向く。
そして一言、
「モンステラ」
と答えた。
モンステラとは、何だろう。
エリには分からなかった。
それはなに、と聞こうとしたけれど、男は上着を羽織って部屋を出て行こうとしていた。
そんな、急に。
エリは焦る。
今までの男たちとまるで違うやり方に、心が追いついてこないのだ。
男は振り返らずに部屋を出ようとした。
「また会える?」
「さぁな」
そっけない声が背中越しに戻ってきた。
エリはその先に続けるべき言葉を持たなかった。
何故なら会いたがるのは常に男たちの側だったから。エリはそれをあしらうことしか、知らなかったから。
男が部屋のエントランスへ向かって歩き出した。
「名前は?」
エリが必死に絞り出したのは、そんな質問だった。
男が振り向く。
そして、エリを見つめる。
あの目で。
あの、時を止めてしまう瞳で。
「モンステラ」
そう、呟いた。
そして二度と振り向かず、部屋を出て行った。
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