第78話 結婚式と親②

 話を戻して結婚式。

 俺の親も結婚式に合流して結婚はどんどん進んで行く。

 「それでは料理の次は二人のケーキ入刀です」

 流石にウエディングケーキまで用意されてはいなかったが特大のケーキが俺と桜井さんの目の前に用意された。

 二人で包丁を持ってケーキを切る。

 この結婚式ってどこまでやるんだろう?

 かなり準備されているので投げ出して帰るのは申し訳ない。

 だが、桜井さんが小声で俺に

 「みんなの前でキスは…」

 恥ずかしいに決まってる。俺だって流石にそれは…。

 いや、あれだよ。本番だったら堂々とキスするよ、でもこれはまだ正式な結婚式じゃない。

 だいたい俺はキスした事まだ無い。

 「楽しい時間も、そろそろ終わりに差し掛かりました」

 どうやら相馬もキスまではやらない様だ。

 「最後に誓いのキスです」

 …あいつ。今度〆る。

 「どうぞ!」

 どうぞって何を?

 どうやら神父などは用意されていないのであろう。

 きっとみんな結婚式のあの長い神父の話を聞いている間に心に準備をしているだろうに…。

 みんなが一斉にこっちを向いている。

 やるのか、やらないのかをはっきりしないといけない。

 チュッ。

 自分のほっぺたに柔らかいものが当たった。

 振り向くと桜井さんが下を向いている。

 下を向いていて顔までは分からないが多分今もの凄く顔を赤くしているであろう。だって桜井さんの耳が真っ赤。

 もちろん、俺も真っ赤に顔がなってしまっている。


 結婚式が終わったのは21時ちょっと過ぎた辺り。

 その2時間くらい前に大人たちは酒を飲める場所に向かって行き、大人と子供で分かれる形になった。

 11時からは深夜徘徊になるので俺は最後に桜井さんを家まで送ることにした。

 「今日は俺が考えた事じゃなかったけど、困らしていたのならごめん」

 「…なんでそんんあこと言うの?楽しいかったよ」

 桜井さんは確かに結婚式の最中は楽しいそうだった。が、これは俺が企画したものでもなければ俺は本当に何もしていない。

 それになりより…

 「だっていきなりキスとかになってしまったし…」

 そこだ。

 あんな多勢の前でキスを強要されれば誰だって嫌であろう。

 「べ、別に嫌じゃないよ。ただ恥ずかしかっただけ…周りに誰もいない今なら…キスしても良いよ」

 「………?!」

 「返事しないって事はもしかして嫌だった?」

 「なんなわけない!」

 「じゃあ…」

 少し寒い3月の外。

 柔らかいものが唇に当たった。

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