第37話 サプライズ⑧

俺は急いで体育館に向かっていた。

夏穂に告白の返事をしたら夏穂は何も変わらずにいた。まるで俺がそう答えるのを知っていたかのように。

「そうですか。…優希さん私のライブの前に優希さん達のミュージカルを先にやる予定に変更になったので体育館に急いだ方がいいですよ」

それで俺は急いで体育館に向かっていた。

「優希さん待っていましたよ」

文化祭実行委員の人が俺を探していた。

「次が優希さんの出番ですからね」

体育館に着くと同時に俺の番がきてしまった。

「ちょっと待ってくださいよ。俺まだ怪盗のコスプレしているんで。今直ぐ着替えますから」

急いで着替えようとしたが実行委員の人に止められてしまった。

「その格好のままでいいですよ」

「えっ。俺の役は船乗りですよ。こんな格好の船乗りがいますか?」

俺の役は主人公の勇者を姫を拐った怪盗の城まで船に乗せるはずなのに。

「早く出番ですよ。この仮面を着けて」

実行委員の人が強く背中を押して、俺は着替えずに舞台に出てしまった。


「ガルルルル!」

ドラゴンがこっちを睨んでいる。

…ドラゴンが出るなんて聞いていない。

「…怪盗。お前は姫がこいつの生贄にならないように姫を拐ったんだな」

勇者がそんなこと言うのも台本にはなかったはず。しかも、勇者役は相馬だったはずなのに俺でも知っている有名な俳優の人が勇者役を演じる。

何がなんだかさっぱりだ。

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