第18話 会ってみたい人③

「いたたたた」

階段から転がり落ちたが奇跡的にそれほどの怪我をせずに済んだ。

「だ、大丈夫?」

桜井さんが心配してくれた。

「………」

光はなぜか黙っている。

「大丈夫。それよりさ、この扉の向こうに会って欲しい人がいるんだけど」

そう言いながら、扉を開けた。

いつもならここでガラスの向こう側から声をかけてくるが、今日は無かった。

「優希…ここの鉄の扉って開いてよかったかしら?」

光りが指差す鉄の扉は、確かに少し開いている。たしか、この扉は病院の先生が通る時の為にあると聞いていた。

ちなみに物を渡す時は、こことガラスの向こうの部屋に繋がる引き出しがあり、そこで空気を変えて渡していた。

それなのに、鉄の扉が開いてるなんて。

恐る恐る鉄の扉開けて中を確認すると、奥にもう一つ鉄の扉がある。

多分、ここで鉄の扉を閉めて、空気を変えてから奥の鉄の扉を開いて霧街さんの部屋に入るのだろう。

だが、奥の鉄の扉は、全開に開いている。

部屋の中に入ろうとしたら、

「ま、まさか、女の子の部屋に勝手に入るつもりなの?」

「えっ、優希くん。入るつもりだったの?」

そう二人に言われたのでコンクリートの部屋で待つことにした。

ガラスで部屋が丸見えなのに女の子って難しい。


プルルルル、プルルルル

霧街さんの部屋の携帯電話が鳴っている。

とりあえず、光が持ってきてくれた。

「どうする、勝手に電話を受けていいのかしら…、優希、任したわ!」

俺ですか?

とりあえず、霧街さんの手がかりになると思って電話を受けてみた。

「はい、もしもし」

「お前が父親か?」

聞き覚えのある声がした。

「あの、もしかして、初○ ミクさんでしょうか?」

そう聞き覚えごある声とは、あの有名ボーカロイドの声だ。

俺がそう聞くと、電話越しで

「馬鹿野郎、なんでその声にしたんだよ」

「いいじゃないですか、好きなんですよ」

少し言い合いをした後、

「まぁいい。お前の娘は預かった。返して欲しかったら、三億用意を持ってきな。場所はお金が用意できたら掛け直せ。わかっているとは思っているが警察を呼んだら娘の命はねぇからな!」

ツーツー。

それだけ言い残して、電話が切れた。

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