第10話

ガチャン

古びたドアの閉まる音が部屋の中にこだまする。

僕は八女の部屋から出てまた10分くらい歩いて家へと舞い戻ってきた。

「ああぁぁつっかれたあ。」

ドスンと音がなりそうなほどの勢いで僕は玄関に倒れこむ。

柵に引っかかってブラブラしてる時間が長かったからか、八女の当たりが強く感じたからか、はたまた歩き疲れただけなのか、どんな事情でかは定かではないが、とにかく僕は疲弊していた。

まあ何より今日もまた死ねなかったことに対する落胆が大きいのだが…。

しかしながら落胆だけではない。また新しい自殺が試せるのだ。こんなにもワクワクすることはない。

僕にとっての自殺は、みんなの外食みたいなもんだ。

そのくらいのペースで自殺をするのがちょうどいい…のか?

まあただ単に死ねてなくて、さらにすぐに死にたいだけなのだが…。

僕にとっての死とは何なんだろうか。

どんなに辛くても自分を殺してくれないこの世界は、果たして自分に何を求めているのだろうか。

幸せ、楽しさ、そして自分自身も無くしてしまいそうな、そんな僕に何ができるのだろう、今の無気力で動くしかべねのような自分には何ができるかなんて、そんなものは思い浮かばない。

僕の思考はただ”死にたい”ただそれだけなのだから…。

ただただ僕にとって意味の無い時間が毎日毎日毎時間、永遠に続くかのようにゆっくりと流れていく。

世の中の多くの人は死にたいとか言ったら生きたくても生きられない人がいるとか言うが、誰かまだ生きたい人が目の前にいたのならその人に僕にある残りのすべての時間を分け与えてあげたい。

ただそれは叶うことのない空想だとわかっている。

だからこそ僕自身のこの無駄な時間に終止符を打って……。

どこへ行くのだろうか…。

考えたこともなかった、いや考えないようにしていただけかもしれない。

自分はとにかく死にたい気持ちに支配された結果、その先について考えれないようになっていたのか。

そんな不思議な焦りに似た感情が僕の中で増殖していく。

ぼくにとっての死はなんになるのだろうか、なんで死ぬしか道がないのだろうか、そもそもなんで死ななければならないのだろうか。

そんな気持ちが増殖していった。

今まで目指してきた”死”とは無駄なものだったのか。

いや、僕は誰かのためとか、誰かのせいでとか、意味とかそんなことじゃない。

ただ自分の意思で、自己満足のためにこの世界から消えてしまいたいのだ。

僕にとっての、自分への最後の贈り物なのだ。

この世界なんて捨てるつもりなのだ、僕にとって俯瞰する必要などなかったのかもしれない、というかほぼ確実になかった。

ここ最近そーいった”無駄な悩み”に費やす時間が以前より格段に増えている。

その時間をもっと有効に確実に死ねるスポット探しに当てることができたならより良い自殺を遂げることができるのかもしれない。

明日からはもっと遠くにも出てみよう。

どこがいいだろうか、崖だろうか…滝だろうか…

考えるうちに僕の意識はどこか遠くへと飛んでいってしまった。



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