第3話

「ええっとぉ、これどうやって助ければいいんですかね…??」

女の人が聞いてくる。

そんなこと僕は知らない。

初めて柵に引っかかったし、今にも落ちそうだし…そもそも風めっちゃ強くて風邪ひきそうだし、とりあえず助けてほしいって気持ちがいっぱいの状態でそんな冷静に考えれるものではない。

「とりあえず首元が引っかかってるみたいなんでいったん僕が全力で策に掴まってみるんでそのタイミングで首元の引っかかってるのはずしてもらっていいですか?

多分あとは腕力で上がれますから…」

僕は腕力には自信があった。

というのも小さいときからスポーツは何かしらやってきた。

大学を辞める前も一応草野球はやっていたし、筋トレだって毎日やっていた。

2年間のブランクがあるとはいえおそらく自分の体を持ち上げれるほどには腕力はあるはずだ。

「わ、わかりましたー。」

女の人はちょっとだけうわづったような声で答えて作業を始めてくれた。










「よかったー。」

女の人はこたつに座ってホッと息を吐きだす。

女の人は僕の柵から引っかかっている部分を助けてくれた。

そしていまはなぜか部屋に招かれていた。

自信のあった腕力だったがちょっと力が足りなかったので女の人に手伝ってもらった。

「あのーなんで僕はこんな風に部屋に上げてもらってるんでしょうか…」

ちょっと日本語がおかしい気もしたが聞いてみた。

女の人は「んーーーー」と少し考えてから

「あなたが悩んでるように見えましたし……それに別にあなたのことを下着泥棒みたいな犯罪者だと思ってないからですよ。」

女の人は僕をからかうように言ってくる。

「僕が言うのもなんか不思議な感じがしますけどなんで僕のことをそんなに信用してくれるんですかね…。」

ほんとに僕が言えたことではないがなぜ僕のことをそんなに信用してくれるのかわからない。

正直僕は何なら引っかかったあとそのまま落とされる可能性だってあると思っていたし落とされてもケガしないようにどうしようか考えてもいた。

そうやって深く考えたからというところもあるだろうが信用がなぜか厚くてむしろ僕が女の人を不審に思ってしまうところもあった。

「あーーやっぱ覚えてないかー。残念だなー」

女の人はがっかりした表情で言う。

覚えている?

彼女のことを?

少なくとも僕の記憶には僕の目の前にいる美少女と町ですれ違ったものも知り合いだったものもましてや友達だった記憶もない。

というか目の前にいる女の人はかなり美しかった。

それでいてどこか幼いところもあってまさに美少女という言葉がふさわしい佇まいだ。

なんでこんな人の家の柵に引っかかってしまったのだろう。

これも不運のうちの一つなのだろうか。

「えーとなにを?」

コミュ障全開の返答してしまう。

この何年間かまともにしゃべってなかったからな。

まあ仕方ない。

「やっぱり覚えてないんだね。紘一君」

その口調に聞き覚えはなかった。

いやきっとあの時に封じ込めたのだろう。

正直僕はあの事件が起きる前の人とかかわった記憶が抜け落ちている。

というよりも心のどこかに封じ込めていて思い出そうにも思い出せない。

「えーとなんで俺の名前知ってんの??」

あーやっべぇ年上の可能性もある人に思いっきりため口聞いちゃったよ。

「はーがっかりだよ紘一君。私の知ってる君の記憶力は知り合いの中でダントツトップだったはずなんだけどなぁ。」

目の前で彼女は

「ほんっとに残念だよ。」

また大きくため息をついていた。

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