第4話

「ほんっとに残念だよ。」

大きくため息をついた。

「……あんなに仲良かったのに………」

彼女は消え入るような声で言う。

残念だが僕に主人公補正などかかっていない。

ばっちり耳に届いていたがどう答えればいいかわからないのでとりあえずだんまりだ。

「……聞こえてんでしょ?ねえこ う い ち く ん?」

そうやって詰め寄るように聞いたって思い出せない。

「何のことを言ってるかわかんないから早く言ってくれ。ほんとに記憶にないんだ。」

僕は焦っている。

段々と目の前の美少女の顔は怪訝になっていく。

僕はを合わせないようにして考え込む。

どうすればいいか

彼女は誰だったかを

彼女の様子は見えないが何かを思い出せない僕のことを蔑むようにでも見ているのだろう。

視線が痛かった。









そのまま何分が立経っただろうか

僕と僕の前に座っている美少女の間には静寂という二文字がここまでふさわしいのかというほどに静かで、どこか緩やかで、そして冷たい空気が流れていた。


ピィィィィィィぃぃーーーーーーーー!!!!

そんな僕らの静寂を破ったのはやかんの甲高い音だった。

「はいはい今行きますよー。」

目の前の彼女が立った時に起きる生ぬるい風が全身に緩やかに当たる。

僕は考えた。

必死に考えた。

そうまた逃げる方法を

僕はまた運に頼ろうとしていた。

また不運が起きるかもしれないのに

いや不運が起きる前に死んでしまえるかもしれない

そんな期待もあった。

と同時にまた今回のように引っかかったりしてしまうのではないのか

という不安もあったがまた運に頼ってしまっていたのは確かだった。

「さてじゃあもうそろそろわかってくれたかね?紘一くーん。」


「……わからない。ほんとにわからないんだ。もう焦らすのも十分だろ?教えてくれあなたの名前と僕が何を忘れてるかを」

僕は懇願するように言った。

すると彼女は

「うーんそうだねもう十分だ。多分これ以上考えさせても思い出せないだろうな。」

とあきらめるように言って

「ほんとは思い出してほしかったな。君が忘れてるのは私のことだよ。私はずっと探してたのに部屋に上げたのも知ってるからだよ。君がどんな人間でどんな奴かってのをね。」

そして少し間を開けて

「私の名前は八女覚えてない?来居くりい八女」

僕は知っていた。

確かに知っていた彼女の名を

そして思い出して涙が自然と溢れてきた。

なぜ彼女のことを忘れてしまったのか

絶対に忘れてはいけなかったはずで忘れることなんてないと思っていた。

そんな彼女を忘れていた自分を殴りたい。

そのレベルだった

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