第1話
僕、姫島紘一は自殺が趣味だ。
僕は死にたいんだ。
家族も、知り合いも、つながりのある人はいない。
死んで悲しむ人間も、相続などで面倒を被らせる人間もいない。
普通に人なら命が助かることが幸運かもしれないが僕からすれば死ねないことはただの不幸なのだ。
僕はここまで苦しんで生きてきても僕に不幸として“死を与えてくれない"神がただただ憎いのだ。
今日も僕は街を歩きながら目だたずに確実に死ねる場所を探して歩く。
僕は過去に自殺を何度も何度も繰り返した。
しかしそのたびにものに引っかかって落ちれなかったり、入水しても何故か浜に打ち上げられたり、体に火を放とうとしたにもかかわらずライターやコンロが消えたりと、僕は死ねないのだ。
僕の幸運の代償は死ねる日まで一生続くのだ。
今日も今日とて何処か良い自殺ポイントがないか探して外出していた。
どこか人目につかなさそうでかつ確実に死ねそうな場所。
そんな場所は10分も歩くうちに見つけた。
今日はあそこから落ちよう。
僕が見つけたのは入り組んだ路地の奥にある絶対に日照権について考えられていない6階建てのマンションだった。
タンタンタン…
僕の階段を上る音が響く。
ロックはなく簡単には入れたし今日はやっと死ねるかもしれない。
僕は心を躍らせながら登る。
ギィィィィ…
屋上の扉を開ける。
やはりだ。
この建物は完全に四方をより高いマンションに囲まれている。
日照権を完全に無視した建築だった。
しかし僕にとっては好条件。
下を向き先ほど入ってきたエントランスと逆の方向に行く。
僕だってできたてほやほやの死体を見せたいわけじゃない。
できるだけ見つからないようにしたい。
その気持ちからきた行動だった。
さようなら
「現世よ」
僕は持ってきたかばんを置いてボソッと呟く。
そして………
地面にダイブした。
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