第15話 晩餐会
僕はアイザの温もりと重みで、今日も目を覚ます。
初日は、アイザが先に寝ていたから隣で寝ていただけだったけど、次の日から一緒に寝る時に腕枕して寝る事になった。
そして寝相が良いのか、今日も朝になっても寝た時の状態です。
家族が恋しいのかな?
添い寝をしたとき、凄く喜んでいたし直ぐに寝たし、今も幸せそうな顔してるし…
もう少し寝かせてあげたいけど…
僕は、アイザの小さな寝息を聞いていた。
でも、そろそろ時間なので意を決して、僕はアイザの頭を撫でる。
「アイザ朝だよ。一緒に起きる?」
もそもそと、胸の上にある頭が動きだす。
「ん…起きる…」
アイザが横に移動したので僕は体を起こすと、軽い筋肉痛のような感覚が全身にあった。
これは、添い寝でなったのかな…
でも昨日は無かったし…そうか、昨晩のエイルさんとのダンスレッスンだ。
夕食の後、またエイルさんとダンスの練習をしたのです。
お酒の入ったエイルさんとのダンスは、30分くらいずっと踊っていたので、それかもしれない。
全身の筋肉痛だしね。
僕はその時のことを思い出して、体が熱くなる。
手を背中に回してのダンスを教わり、密着するほどの距離でエイルさんと踊った。
というか、胸だけはもう密着していると言ってもいいほどでした。
エイルさんからはお酒で体温が上がっていたのせいなのだろうか…甘い匂いがしていた。
僕には刺激が強すぎです。
エイルさんは楽しそうに踊って指導していたけど、胸と匂いで僕はそれどころではありませんでした。
はあ…エイルさんって僕をからかっているのだろうなぁ~
マイジュさんもアイザも何も言わないし、僕も嫌じゃないから嬉しいのは嬉しいけど…
平静を装うのが辛いです。
それにしても、アイザに対しては、逆になんで緊張とか胸の高鳴りとか無いのだろう…
僕は、隣の下着姿で横になったままのアイザを見る。
うん。可愛いです。
「ハルトぉ~、どうしたの?」
僕の視線に気付いたアイザが体を起こした。
「ん? アイザは可愛いなって見てただけ。」
と、僕がそう言ったらアイザが僕の太もも辺りを枕にして抱きついた。
「そんなの、当たり前でしょ。」
顔は見えないけど、喜んでいるのは判る。
こういうところとか、本当に可愛いんだよなぁ~
「あ、もうそろそろ朝食の時間になる。アイザ着替えてリビングに行くよ。」
「はぁ~い。」
『着替えさせて』と、いつもの格好になったので僕は今日もメイド服を着せる。
今日は、アイザのドレスや下着を買いにいく約束なので、アイザもいつもより浮かれているようだった。
リビングにはマイジュさんが既にソファに座っていました。
エイルさんはまだ来てません。そして昨日と同じで、朝食の準備が終わった頃に部屋から出てきました。
ここ数日で判った事。
エイルさんはお酒は強いけど、朝は弱いのでした。
朝食も終わって、僕とアイザで買い物に出かけようとした時、扉を叩く音がしました。
「失礼します。」
従業員の制服(メイド服)を着た人が扉から入って来て、鉢合わせの形になった僕とアイザに深々とお辞儀をしています。
それに釣られて僕も頭を下げる。
「すみません、ハルト様宛に手紙が届きました。」
ほぼ同時に頭をあげたメイドさんの言葉に僕は、「はい、僕です。」と小さく手をあげる。
「しっ失礼しました! こちら、イデリアス・サイズン伯爵様よりお預かりしました。」
メイドさんから手紙を受け取る時、少し息が荒いことに気付いた。
走ってきたのかな?
「ありがとうございます。これって、急ぎの返信が必要だったりします?」
「はい。いえ、急ぎでないですがロビーで使いの者がお待ちしています。」
気を使って言い直したみたいだけど、急ぎだなこれ。
僕は封がされている手紙を、テーブルでまだ食後のお茶を飲んでいるマイジュさんに掲げて見せる。
「伯爵から返事待ちの手紙が来たみたいです。」
僕はアイザを連れて、さっきまで座っていたテーブルに戻りました。
「そうだ、執事さん。手紙を持ってきてくれた彼女に飲み物をお願いします。」
僕は席を立ち、当然遠慮しているメイドさんをソファに座らせます。
「僕達が手紙を確認している間、ここで休憩していてください。遠慮は駄目ですから。」
僕はテーブルに戻って、マイジュさんが読み上げる内容を聞きました。
今日の夜、伯爵家での晩餐会のお誘いでした。
「どうします?」と、一応僕は聞いてはみる。
伯爵からの誘いを断るのは、それ以上の重要な用件がなければ断れないのは判っています。
だけど僕は最後の夜だから、この部屋でのんびり過ごしたいのです。
明日には出発する予定だったので、部屋を手配してくれた伯爵に、昼から挨拶に行くつもりだったのが、晩餐会でお礼を言う。
って事に変わるだけなんだけど…
「伯爵家、だけとの会食ならなぁ~。あの貴族達も居るんだよなぁ~。」
「どうしてそこまで毛嫌いするの?」
エイルさんの問いに、僕は脱力のまま答えました。
「いえ、毛嫌いは無いのですが、気を使うじゃないですか。伯爵家の人達にはもう、気取ったりする必要ないですし…寛げないじゃないですかぁ~」
「伯爵家に対して、それもどうかと思いますけどね。」
マイジュさんがツッコミを入れてくれました。
「ハルトなんだから、いいんじゃないの?」
アイザのフォローでエイルさんとマイジュさんが笑っています。
アイザは僕の事を判ってくれてるから好きです。
やっぱアイザは可愛いなぁ~
って、いつまでも拗ねてても始まらないのは判ってます。
僕はテーブルにうつ伏せ気味だった背筋を戻す。
「まあ、部屋のお礼を言いに行くつもりだったし、晩餐会行きますか。」
僕とアイザは、手紙を持ってきてくれたメイドさんと一緒にロビーに向かいました。
出かけるところだったので、直接返事を言う事にしたのです。
もちろん、返信の手紙をマイジュさんに書いて貰って、それも渡します。
伯爵家からの使いの人に手紙を渡して、僕は参加の意思を伝えた。
「では、ハルト様。夕刻18時に、お部屋までお迎えに参りますので宜しくお願いします。」
使いの人を見送った後、僕はアイザと商店街に向かって歩きだす。
ちょっと憂鬱な気分になったけど、アイザの買い物を楽しみにしている笑顔を見て、僕は気分を戻すことが出来ました。
「それじゃあ、色々買いにいこうぉー!」
女性服専門の店を見つけたので、ドレスと下着をじっくり選んで買った後、僕は家具屋で椅子とテーブル買いました。
それから、商店街を色々と探索しながら、大きめの水筒とカップも揃えました。
そうです。馬車の外でお弁当を食べる為のアイテムです。
あとは医療品関係も多めに持っていた方が良いとマイジュさんが言っていたので薬屋に寄りました。
この世界には薬という物は1つしかないのでした。
所謂、万能薬。
液体で瓶に入った、見た目はゲームに出てくるポーションそのままです。
病気系はこれで直るそうで、僕が最初に買った医療セットの中にも入っています。
だけど1種類といっても、性能で5段階あって、医療セットに入っていたのは一般的なDランク品で、食中毒や軽い感染症までならすぐ直る物でした。
で、今回買うのは最高のAランク品で1個が金貨1枚します。猛毒などのほとんどの病気を即効で治すそうです。
僕はアイザと一緒に、小さな店構えの扉を開けました。
「いらっしゃいませ。」
売り場に一人だけの店員さんは僕と同じくらいか、アイザくらいの女の子でした。
店も店員さんも小さいけど商店街唯一の薬屋で、もちろん国が認めた公認店です。
薬が万能薬5種しかないから、この広さで十分なのは見て判ります。
薬以外は、包帯系や傷薬系の外傷用があるだけでした。
「Aランクの薬を20個とBランクの薬を20個貰えますか。」
「20個ですか?! 少々お待ちください。」
驚く店員さんを眺めながら、僕は気恥ずかしい気分になってます。
自分でも、買い過ぎの自覚はあるのでした。
店員さんが座っていたカウンターの後ろの戸棚から、数を確かめながらカウンターに並べていく。
「もし差し支えなければ、どのようなご利用か教えてくれませんか? 重大な流行病とか、猛毒系の災害とかなのでしょうか?」
ああ~そういう話になるよね…最初に理由を話しておくべきだった。
僕は、気恥ずかしさを更に上乗せして、小さな店員さんに説明しました。
「それは、懸命な判断だと思います。ここまで多く買う人は居ませんでしたけど。」
「それについては、僕も思っていました。でも、何があるか判りませんからね。」
僕は笑って答え、恥ずかしさを笑い話に変えた。
「そうですね。バラージュ国は、薬を薄めて売ったりすると聞いています。道中で買い求めるのは正直お勧めしません。」
流石にその情報まではマイジュさんも知らなかったみたいで、初めて聞きました。
それから、傷薬と包帯も多めに買って店を出ました。
「丁度いい感じで、お昼ご飯だね。」
僕はアイザと手を繋いで歩きながら、飲食店探し始める。
「ハルト、あれがいい。」
アイザが指を指したのは大きなグラスに2本のストローが刺さったカップル用のジュースです。
まさか…あれも勇者の誰かが伝えたのか?
その店は『幻夜蝶』目当てのカップル観光客を集客しているだけあって、店の造りや雰囲気が良い店だった。
独りで入るには勇気がいる店です。
「ご注文は何にしますか?」
注文を聞きに来たウエイトレスに、僕はカップル用のグラスを指差す。
「あの二人用の飲み物ってどれですか?」
メニュー表を開いて訊ねる。
「えっとですね、単品だとこちらになります。あと、こちらの二人用コース料理にも入っています。」
「じゃあ、二人用コース料理をお願いします。」
「はい、承知いたしました。」
もう、聞くことに慣れました。
日本に居た時は、聞く事が恥ずかしいと思っていた自分がいて、無難で知っている物だけを注文していた。
所変わればなんとやら…だな。
宿に戻ってダラダラと18時まで過ごし、時間どおりに朝と同じ使いの人がやってきました。
そして、用意された馬車に乗って伯爵家に向かいます。
アイザは早速、今日買ったドレスを着ています。
真っ赤のドレスに、黒い薔薇と黒のフリルで、大人感があるけど可愛いらしさもあるドレスです。
だけど、エイルさんはいつものドレス姿です。
どうして着ないのか聞いたら、親しい友人用だと言っていました。
まあ、なんとなくその理由には納得です。
男性の視線を集めすぎるからね…
馬車に揺られて、10分ほどで伯爵邸に着きました。
大きな屋敷の前には数人の使用人達が待っています。
「出迎えまである…」
僕は重すぎる待遇に、早くも挫けそうになっていた。
「ハルトさん、伯爵にとっては普段から行われている日常的な接客ですから、気にしないでいいですよ。」
マイジュさんが僕の落ち込んでいる理由に気付いて励ましてくれました。
「ご飯食べるだけでしょ。気を使う方が失礼になるわよ。」
アイザがもっともらしい事を言ってます。
「そうだよな。アイザありがと。マイジュさんもありがとうです。」
馬車は邸宅の正面で止まり、使用人の一人が馬車の扉を開ける。
「皆様、お待ちしておりました。」
馬車から降りた僕たちは、開かれた大きな扉を通ってサイズン伯爵邸の屋敷に入りました。
神殿の白い石と同じ物を使っているのだろうか? 広い真っ白な玄関ロビーからエントランスまで、沢山のランプで淡く照らされていた。
年配の、執事長らしい男性に案内されて入った部屋には、すでに伯爵家の人達が居ました。
それと、パナティアさんの友人達も十数名ほど居ました。
皆さんは立って僕達を迎えています。
椅子はテラスと、部屋の壁際にあるくらいで、壁際に並んだテーブルには沢山の料理が置かれています。
今日の晩餐会は立食パーティー形式だとすぐに判りました。
「今日はお招きいただき、ありがとうございます。」
マイジュさんとエイルさんから教わった挨拶をイデリアス・サイズン伯爵にしました。
礼儀として、ちゃんと覚えていかないとな。
いつまでも、『異世界人だから』は通用しないからね。
「よく来てくれた。ここに集まった者達は、君達に会いたいと願った者ばかりだ。堅苦しい挨拶はこれで終わりにして、今からは食事を存分に楽しんでいってくれ。」
僕達の紹介を、伯爵自身からしてくれて立食パーティーが始まりました。
僕とアイザは、礼儀的に一番に挨拶をすべきデバルドさん夫妻のところに行きます。
「今日はありがとうございました。明日に出発する予定ですので、こうやって挨拶に来れて良かったです。」
「そうか、またこの街に寄る時は屋敷を訪ねてくれ。俺が居なくても妻や娘、それに親父が喜ぶだろうからな。」
「その時は必ず行きます。」
デバルドさん夫妻との挨拶を終えた僕達は、料理の並んでいるテーブルに向かった。
僕もそうだけど、アイザが食べたそうにしてるからね。
お酒は『カシュラ』を取って、テーブルの料理を口に運ぶ。
スプーンの中に盛り付けられた料理に、金属の爪楊枝を刺したお肉や、フォークに刺さっている果物など、一口で食べれれるようになっている料理をアイザと感想を言い合いながら楽しく食べていく。
マイジュさんとエイルさんも、ワインを飲みながら楽しんでいるようです。
デバルドさんの一人娘のパナティアさんが、友人だと思われる女性二人を連れて来ました。
「ハルトさん、アイザさん。少しよろしいですか?」
僕は「はい。」と挨拶を返す。
パナティアさんが連れて来た女性は、学院の親友でした。
「まさか本人に会えるとは思っていませんでした。」
「ん? ラッツからの時に会っていませんでした?」
あの貴族の女性達ではなかったけど、確か別の馬車の乗客だった覚えがあった。
「いえ、あの時は噂の方だと知らなかったのです。」
「え? うわさ? なんだろ…」
巨大海老? 落選勇者? ファルザ公国の騒動?
思い当たる事が多くてどれか判りません…
「サラティーア王妃様と、アクセサリー店で買い物をしていた人物です。」
あぁー! それかぁああああ!
そりゃ、大事件ですよね!
二人の女性は、リビエート王都で暮らしているとの事で、その噂を聞いていたのでした。
結構な事件として広まっていたようです。
リビエート親子の勇者訪問の事は機密事項なので、僕とリビエート王妃達との関係も、公に出来ない話になっていたから『誰なんだ?』ってことでした。
もちろん、親友二人もその辺りの事は知らないけど『僕がその人物』という事だけをパナティアさんから教えて貰ったそうです。
パナティアさんの小声の謝罪がありました。
ちょっと口を滑らしてしまったのだと…
で、あの貴族達の遠巻きに見る態度にちょっと納得です。
リビエート王妃直々に、相手する人物ですからね!
「もし、よろしければ友人としてお付き合いさせてくれませんか?」
二人の女性から、突然の言葉でした。
「ん? 友人ですか?」
僕は友人になるという意味が良くわからなかった。
一緒に旅行に行く訳でもないし、次会う事もなさそうなんだけど…
僕はどう返事をすれば判らなかった。
「ハルトさん、彼女達のいう友人とは、結婚相手の候補として指名しても良いですか? って事ですよ。」
少し笑っているパナティアさんに、僕は「は?」っと間抜けな声を出していた。
咄嗟に僕は、アイザを見る。
その表情は変わらずで、不機嫌な様子は無かった。
「えっと、結婚相手の候補の指名って、どういうものなんですか?」
「そうですね、彼女達は貴方と会う為の許可を下さい。ってことです。そして品定めさせてくださいってことですよ。」
パナティアさんの説明でなんとなく理解は出来たので、僕は承諾しました。
「「ありがとうございます。」」
二人は嬉しそうに喜び合っていました。
そして僕とアイザは、彼女達の自己紹介を聞きながら、一緒に食事をしました。
パナティアさん達と入れ替わりに来たのは、ホネットさんとあの貴族でした。
「俺の親友のオルセントです。少し失礼な態度を見せていたようで私からも謝罪します。」
身分的に上な二人の男性が頭を下げています。
「判りましたから、頭を上げてください。」
僕は話をする前に、頭を下げるのを止めて貰った。
「僕の見た目や、僕の言った事に対する態度なので全然気にしてませんから。」
実際に思っていた事だったので頭を下げられる方が辛い。
「ありがとう。彼は良いやつなんだけど、感情を隠すのが下手なのですよ。」
初対面の僕ですら気付く程なんだから、直らない性格なのだろう。
僕の思い出し笑いを、承諾の笑顔と受け取った二人は笑みを浮かべていた。
それから、オルセントさんの恋人達の紹介になって、魔物になった男性の話になる。
元恋人だったその男性は、同じ学院にも通っていて、皆さんとの面識もあったけど…
剣術は上位10位前後。学力は中の上。性格も温厚で真面目な青年としてで、数日前からの言動をする人では無かったとのことです。
結婚式に乱入した理由は、ホネットさんを倒して強さを見せようとしたらしく、実際に以前とは比べられないほど強くなっていて、均衡した強さを見せてはいたけど、不満を叫んで、小瓶の液体を飲んだら魔物になってしまった。
話を聞いて僕が思い付いた事は、『ドーピング的な薬物を追加で服用して、許容範囲を超えて魔物化した。』だった。
「その男性って、薬物とかの研究とかしてたりしますか? 家族とかでも。」
僕の質問に答えたのは恋人だった女性でした。
「いえ、幼馴染だったから判りますが、彼も彼の家族も、そういう研究などに係わっていませんでした。」
「第三者が係わっている。という事ですね。」
「まあ、その話は俺達が調べている。何か判ればリビエート王に報告するから、今は楽しい話をしてくれ。主賓がそんな難しい顔してると、親父や妻が心配するからな。」
背後から来たデバルドさんの指摘に、僕は謝罪の為に頭を下げてから、笑みを作って見せた。
「そうですね。楽しい話をしましょう。」
「マイジュと彼女は、結構出来上がってるぞ。」
デバルドさんが笑いそうになっていた。
「マイジュの気が抜けた姿は、見たこと無かったからな、彼女の影響なのだろう。」
マイジュさんとエイルさんは、パナティアさん達と食事を楽しんでいました。
「やっぱりエイルさんの影響だったのですね。お似合いですよね。」
「あぁ、…そうだな。気心が知れた仲ってのは、大事にしないとな。」
僕とアイザはマイジュさん達と合流して、イデリアス伯爵やリープラさんから、歴代の勇者の噂話や逸話とか、デバルドさんの若い頃の話とか、色々な話題で楽しい晩餐会を過ごしました。
時刻は21時を回っていた。
2時間くらいだと思っていた晩餐会は3時間近くになっていた。
「名残惜しいが、夜も遅くなってしまった。今日は久しぶりに楽しい時間だった。」
イデリアス伯爵の挨拶で晩餐際はお開きになり、僕の最後の挨拶は、改めて伯爵に明日発つ事と部屋の感謝を述べました。
宿に戻ると22時前になっていた。
「明日は9時くらいに出発ですからね。」
僕は、ほろ酔い状態のエイルさんに念を押します。
国境を守る砦の街『カロライ』を越えて、バラージュ国に入って最初の街『シュラブ』まで6時間。
久しぶりの長時間移動です。
「判ってるから大丈夫よ。なので、私は今から寝ます。おやすみハルト。」
そう言いながらエイルさんは僕を捕まえて、頬と頬を合わせる挨拶をしました。
エイルさんの挨拶に戸惑いながらも、「おやすみなさい。」と返事を返し、部屋に入っていくエイルさんを見送る。
もう完全に弟扱いじゃないか?
「僕たちも寝ますね。」
ちょっと笑っていたマイジュさんに照れ笑いを返し、僕とアイザも部屋に戻って寝たのでした。
もちろんアイザを腕枕して、その暖かさを感じながら。
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