第5話 リビエート王国

 リビエート王国の王都は、広大な丘を開拓して出来た街で、一番高い場所に城があり、そこから広がるように沢山の家が建っている。

 街の中を大きな川も流れていて、テレビで見たことがあるロンドンの風景とよく似ていた。


 夕刻に着いた僕たちは、いつものように宿で一泊し、朝起きたら拉致されました。


 実行犯は、兵士と、つい最近まで一緒に旅をした、ラミナ姫の教育係をしている『ソランテ』さん。

 旅では、父親役をしていた男性です。


 部屋まで押し掛ける形で、僕とアイザは朝食も取れないまま、王宮に連れてこられました。

 マイジュさんも何故か一緒です。

 そして、通された部屋には、『誰がこんなに食べるんだ?』ってくらいの沢山の料理が並んでいます。

 アイザは、大喜びしています。

 拉致られる時に、『城で朝食のご用意も済んでいますので、是非に。』のセリフで、アイザは素直に付いてきたからね。


「さすがに、この量は作り過ぎですよ。もったいなくないですか?」

 食べ物を粗末しては駄目だと教わっていた僕には、少し引くほどの光景だった。

「大丈夫です。残りは業務員が食べる事になっていますので。」

 『残りはスタッフが美味しく頂きました。』ってテロップが僕の頭に浮かぶ。


「そうですか、なら遠慮なく頂きます。」

 完全にビッフェ形式だと判り、僕はアイザと一緒に、沢山の料理を皿に乗せ、見晴らしの良い窓際のテーブルに座った。

 マイジュさんは気を利かせているのか、少し離れた席に座っている。

 かと思ったけど、よくみたらドリンクと小さなサンドイッチを数個だけだったので、僕達の朝食と合わないから、離れたかもしれない。

 コッチはガッツリ盛ってます。


 朝食に満足した僕達はソランテさんに伝え、次の部屋に向かった。


「ようこそ、お越しくださいました。」

 部屋に入って、声をかけてくれたのはサラティーア王妃だった。

 そこは大きな部屋で、応接室なのだろうか? 高級な家具やソファがあり、絵や陶器などの美術品が飾られている。

 部屋には、4つのソファが四角を作るようにあり、右に王妃と男性と姫さんが座っている。

 左にはルシャーラさんがいて同じように男性と娘さんがいる。

 そして、奥に、白髪の男性と女性が座っていた。

 先代の王だと、僕は直ぐに理解した。


「私は、この者達の親になる『ゴライズ・リビエート』だ。娘と孫を救ってくれたそなた達に、感謝を言いたくてな。このような形で呼びつけてしまって申し訳ない。」

 立ち上がり、僕達に一礼をする先代の王様に僕は返すように頭を下げる。

「いえ、結果的にアイザも僕も、美味しい朝食を頂きましたので問題ないです。」

 発言してから僕は気付く。何言ってるんだ俺?

 もう口に出してしまったし、取り繕う事も出来ない。


「そうか、それは良かった。昼食は是非一緒にと思っているのだが、どうかね。」

「いえ、そこまでお世話になるのは、」

 と、言いいかけて、また間違った事に気付く。

「じゃなくて、はい、こちらこそお願いします。」

 駄目だ、あまりの目上の人との会話のルールが判りません。

 嫌な汗が出ています。

 そんな僕の姿を、アイザもマイジュさんも笑ってみている。

「いつものハルトはどこいったのよ。」

アイザの呆れた声に、

「こんなの経験ないから、仕方がないだろ。自分でもテンパッてるの判ってるから。」

 だから、来たくなかったんだよね。

 こうなるって判っていたから。


「君達は大切な客人だ。気を張らずに過ごしてくれた方が、私としても嬉しい。まずは座ってくれたまえ。」

 先代の王の言葉に、僕は少し救われる。

「はい、すみません。ありがとうございます。」

 ソファに3人並んで座る。

「あっそうだった。『火の竜』の話をしてもいいですか?」

 なんとか、自分のペースを取り戻したいと、思い付いた機転だった。

 そこから、『火トカゲ』の生態を説明し、村の村長と話合って、放置する事になった事まで話した。

 もちろん、喜んでくれた。

 勇者に頼まなくてよくなったし、討伐する危険も無くなったからね。


「ハルトさん達には、本当にお世話になりました。」

 サラティーア王妃の安堵の笑顔が僕に向けられる。

「ついでみたいな物ですから。娘さん達に、また辛い旅をしてほしくないですからね。」


「重ねて礼を言う。ありがとう。」

 そう言ったのは、今の国王『トーラス・リビエート』だった。

「俺からも、礼を言わせてくれ。妻と娘を救ってくれて、ありがとう。」

 国王の弟の『イデス・リビエート』


 先代の王『ゴライズ』さんの子供は、長男のトーラスさんと、次男のイデスさん。

 二人の王子達の話はデバルドさんから聞いていた。

 サラティーアさんとルシャーラさんも実の姉妹で、王子二人との同時結婚を発表した時は、国中が大騒ぎになったと。


「それは、それなんだが…」

 来ました。本題です。

 イデスさんの真剣な視線が突き刺さる。

「はい。助ける時に言ったセリフは勢いで言っただけの言葉ですので、貰うつもりなんて思ってもいないです。はい、ほんとうにただのセリフですので。」

「そうなのか、ならそれで俺は良いのだが…」

 何故か、イデスさんはルシャーラさんと娘のサーリアちゃんを見ている。

 僕も視線を移すと、サーリアちゃんが何故か泣きそうになっている。

「え? え?!」

 僕は意味が分からず、2度も声に出していた。


「サーリアは、ハルトさんと結婚したいと思ってるのよ。」

 サーリアのお母さんのルシャーラさんが答えてくれた。

「いやいやいや、まだ早いですし。」

「なら、16歳になったら、貰って下さるのですか?」

「え?! いえいえ、そうじゃなくて、もっと良い人やサーリアちゃんに相応しい人がいるはずですよ。」

「ハルトさんに、サーリアは不釣合いだと言う事ですか?」

 血の気が引いていくのが自身でも分かる…

「そうじゃなくて、僕18歳ですよ? 年も離れていますし、それに助けてから、そんなに親しくしていた訳でもないですし、生涯を共に生きる人を決める大事な話ですから…」

 ルシャーラさんの目が、僕を攻めている。


「こら、ルシャーラ。あまり意地悪な事はしないでやれ。困っているではないか。」

 先代の王の嗜めが入る。


「ですが、サーリアの気持ちを考えてしまうと…」

「そうよ、ハルト。サーリアちゃんに謝りなさい。」

 アイザの追撃が来た。

 え? どゆこと?


 たぶん、アホ面になっていたんだろう。僕の方を見たアイザがため息をつく。

「いい? 女の子が軽はずみに結婚したいなんて、口には出さないのよ。『パパ大好き結婚して』と同じだと思わないでよ。10歳なら、彼女も一人前のレディとして扱いなさい。」

 アイザはいつも、僕の間違いをちゃんと正してくれる。


「そうですね。すみませんでした。」

 僕は立ち上がり、サーリアちゃんに謝り、ルシャーラさんにも頭を下げる。

「僕はただの冒険者です。この先どう生きていくのかも、自分でもまだ分かりません。あの時、命を貰うと言ったのは、生きて幸せになってほしいと思ったからです。だから…」


 僕は次の言葉が浮かばなかった。

 自分の為に生きてほしい。君を幸せにする人を探して欲しい。僕に縛られないで欲しい。

 全部、僕が彼女を受け止めれない言い訳だった。

 いっその事、好きじゃないと断った方が良いのだろうか?…

 

 無言の時間が過ぎて行く。


「そうだな、冒険者か。いい呼び名だ。これから進む彼に、娘が足枷になっては、サーリアも幸せには成れないだろう。」

 父親のイデスさんが僕の気持ちを察してくれた。


「ハルト君は、サーリアの事を知らないし、サーリアもハルト君と幸せに成れるかどうかも、まだ分からない。だから、これから時間を掛けて知り合って、その後で決めてはどうだろうか?」

「具体的に、どうすればいいのです?」

 ルシャーラさんが、今度は旦那さんを攻める。

 イデス家の上下関係は、判りました。


「冒険者なのだから、一緒に暮らすというのは、難しいか。たまに会いに来てくれるという事で、どうかな?」

「たまにですか?」

 イデスさんの目が僕を見る。僕のターンですね。


「アイザとの旅行はあと2ヶ月以内には終わると思います。その後は、タライアス国の『港町ファルザン』で仮住まいしてみようかと思っていましたので、その前に会いに来ます。その後は、サーリアちゃんの都合に合わせて、3ヶ月に1回くらいのペースでお邪魔させてもらう…っていうのは駄目ですか?」

「3ヶ月ですか?」

 あっ、ルシャーラさんの目が怖いです。


「滞在は一週間って考えてまして、往復に10日ほどかかりそうなので、頻繁には来れないと思いまして…ずっとここにいるのだと、サーリアちゃんの交友関係に影響されますし…」

「滞在期間を2週間してくだ、いえ、2週間じゃ、ダメですか?」

 今、命令しようとしましたよね? はい、僕に拒否権はないです。言い直してくれただけでも嬉しいです。

「いえ。はい、2週間にします。」

 ルシャーラさんの視線が柔らかくなっていく。


「じゃ、そういうことで、サーリアも我慢してね。」

「はい、お母様。」

 僕は、サーリアちゃんの笑みに応えた。


「お疲れ様。」

 アイザの言葉に僕は小さく「うん。」と答える。

 ほんと、疲れました。生きた心地がしないってこういう事なのかも知れない。


「皆さん、今日から数日を、ここで過ごしてみませんか?」

 サラティーア王妃の言葉だった。

 僕はアイザとマイジュさんを見る。

「アイザは、どうしたい?」

「2・3日くらいなら、居ても良いわよ。」

「じゃあ、僕とアイザは、そうさせて頂きます。マイジュさんは?」

「私は、ファルザ公国で買い物するだけなので、ハルトさん達が居る間だけ、一緒に過ごさせてください。」

「なら、決まりですね。皆さんを客室に、ご案内をお願いします。昼食まで部屋で寛いでくださいね。」

 えっと、なんだろう…王様達の意見って無いのかな?…


 僕達はそれぞれの並んだ部屋に一人ずつ案内された。

 …アイザ大丈夫かな?


 部屋には、ホテルと同じように浴槽付きのお風呂があり、メイドさん一人が、壁で区切られただけの待機場と言っていた場所で、常に待機している。

 落ち着かないです。どう寛いでいいのか、さっぱりです。

 さっきのこともあり、喉がカラカラです。

「ライエさん、すみません。何か冷たい飲み物ありますか?」

 僕の担当のメイドさんの名前は『ライエ』さん。

 世話になる人の名前は、すぐに聞きました。同じ失敗は駄目です。


「はい。今からご用意いたします。なにかご希望は、おありでしょうか?」

「お茶でいいです。」

 この世界のお茶と言えば、紅茶でした。僕が知っているのとは少し味が違ってはいるけど、ほぼ紅茶でした。


「少し、冷たくなってますので、お気をつけてください。」

 ソファで2分くらい待っていると、ライエさんがガラスコップに入ったお茶をテーブルの上に置いた。

 冷たくなりすぎ?


「うわ! ほんとだ。」

 コップを触ると、キンキンに冷えていた。

 中に氷は入っていないから、コップ自体を冷やしてたってことなのかな?

 僕は、一口飲んだ後に、一気に飲む。こんなに冷えた物なんて、久しぶりだった。


「凄く冷たくて、美味しかったです。これってコップを凍らせてたのですか?」

「いえ、私が直接冷やしました。」

 おお~! さすがは王宮のメイドさん。

 魔法で物を冷やす事が出来る人は、氷店や大きなレストランなどで働いていると聞いていたけど、メイドさんとして雇っているのは初めて見ました。


 僕は、ライエさんに、もう一杯頼んで、今度は味わうようにゆっくりと飲んだ。

 時刻はまだ11時前…なにしよう…

 アイザはどうしてるのかな? ちょっと様子見に行こうかな。


 僕は隣のアイザの部屋に行くと、ライエさんに伝えた。


 アイザの入った扉を叩く。

 扉が少しだけ開く。

「はい。ご用件はなんでしょうか?」

 知らない声だった。メイドさんだろうか?

「ハルトです。アイザは今何していますか?」

「ベッドで、寛いでいらっしゃいます。」

「アイザ様、ハルト様がお見えになられました。」


「はい。お通しします。」

 アイザの許可が出たみたいです。

 こういう、やり取りが入ると、ちょっと距離感が離れた気がするのは何故だろう…


「どうしたのよ?」

 ベッドから降りないアイザが寝そべったまま、僕を迎える。

「いや、一人でいると、落ち着かなくて…」

「仕方がないわね。」

 アイザの私生活には使用人が居たと聞いているから、慣れているんだろうけど、今は完全に敗北しています。


 僕はソファに座って、アイザのダラけている姿を見る。

 うん。落ち着く。

 それから、ほとんど言葉を交わす事は無かったけど、昼ご飯の呼び出しまでずっとアイザの部屋にいた。



 昼食も朝と同じ部屋で、今度は長テーブルでのコース料理になっていた。

 先代の王から二人の孫娘まで、全員が揃っての食事だった。

 静かに食事は終わり、ティータイムに変わると、僕に質問攻めが始まった。

 異世界の事や、今年の勇者の事。どうしてアイザと旅行しているのかとか。『ファルザン』に住む理由まで。

 アイザのとの旅行は、

「ずっと屋敷で過ごしていたアイザが家出したのに出会い、一緒に魔王島を見に行こうって話になりました。あ、もちろん親の了解は得ています。僕が護衛すると約束して、ゴールが魔王島の手前の村で、期限も2ヶ月なので。」

 アイザの事だけは、作り話になったけど、他は言える事は正直に話した。


「世界を知るのは、大事な事だ。良き旅になると願おう。」

 先代の王の言葉は優しさと激励がこもっていた。

「だとしても、娘の願いを聞きいれ、旅に出すなんて私には出来ない。」

 現国王のゴライズさんの言葉はもっともです。


「護衛役がハルトさんだから、認めたのでしょうね。」

 サラティーアさんの言葉に、ルシャーラさんと、先代の王夫妻も頷いている。


「マイジュさんはファルザ公国に買い物ってことは、魔法付与品ですか?」

「はい。最近知りました、アクセサリーを買いに行きます。」

 あれですね。消臭剤ですね。

 たぶん、あの汗の臭いを消すための物なのだろうと思う。


 アクセサリーの話題になったので僕も気になっていた事を聞いてみた。

「この街に、魔法付与されたアクセサリーが売ってる店とかありますか?」

「ハルトさんも、何か欲しい物があるのですか?」

 サラティーアさんの質問に、

「いえ、何でもいいのですが、魔法付与された物を見てみたくて、良いのがあれば買ってみようかとも、思ってはいますが。」

 この場で、アイザにプレゼントするつもりなんて事は、言えないです。


「そうですね。数軒あったと思います。」

「じゃあ、この後に見に行ってもいいですか? アイザも一緒にどう? 観光ついでに。」



 サラティーアさんの承諾を得たので、僕とアイザはリビエート王都の街に出かけた。

 やっぱり、二人だけで観光は出来なくて、馬車付き、ガイド付きの、豪華な観光になりました。

 そして、観光ガイド役はサラティーア王妃!

 ハッキリいって、思考がパンクしています。想定外どころの話ではないです。


「えっと…これは、どういう状況なのでしょうか…」

 アイザと並んで座っている馬車の対面には、王妃様がガイド役で座っています。

「この街を熟知していますし、ハルトさんとアイザさんに、お礼をする機会だと思いまして。」

 いやいや、おかしいでしょ!


「それと、姪の事も少し聞きたいのもありますからね。」

 王妃様の心配する表情に僕は気付く。

「はい。なんでしょうか?」

「サーリアを、妻に迎えるという可能性を、ハルトさんは持っていますか?」

 直球きました。


「正直、判らないです。サーリアちゃんの心変わりが無くて、僕が彼女を女性として見れるようになれば、可能性はあります。ですが、それまでに僕が誰かを好きなってしまったら…」

「そうですね。でも安心しました。サーリアの事をちゃんと考えてくれていて。」

 …何が安心なんだろう?


「ハルトさん。」

「はい。」

「ハルトさんの世界とこっちの世界の結婚は少し違うようですね。」

「え?」

 もしかして、王道テンプレの一夫多妻制とか?

 いやそれなら、王様とかに第二婦人とかいるはずだし、そういう話は聞いてないし…


「結婚相手は、女性が決めるのです。」

 ん? 決定権が女性って事なのかな?


「もしかして、男性に拒否権はないのですか?」

「いえ、ちゃんと拒否権はありますよ。あと、妻の許可も要ります。」

 ん? 妻?


「つまりですね、未婚女性は結婚している男性に求婚出来るという話です。その場合は、すべての妻の同意が要りますが。ちなみに、男性から結婚している女性には求婚出来ません。あくまで、女性だけの権利なのです。」

「はぁい? …えっ? それって結局、一夫多妻制って事ですよね?」

「いえ、多妻一夫制です。女性が男性を独り占めしない制度です。」

 ああぁ、なるほど。

 それと、サーリアちゃんの話を合わせると…

 どうなるんだ?


 僕が首を傾げていると、

「将来、サーリアからの求婚をハルトさんが受けてくれるのなら、結婚していても何も問題ないってことです。」

「あぁ~そういう事ですか。でも、その時の妻が許可しなかったら?」

「大丈夫です。」

 そう言い放った王妃様の笑顔で、僕の背筋が一瞬、ゾアァってなりました。


「よかったじゃない、ハルト。」

 アイザの視線は、どうみても称えるような感じには、見えなかった。

 まだ、何もしていないんですが…


 馬車はアクセサリー店に到着する。

 王妃様直々に来店されているのです、それはもう大慌てですよね。

 王族の馬車が着いたのを見た店員さんが驚きながらも、丁寧に挨拶をしたまでは良かったのだけど、降りた人物が王妃様だと判ると否や、硬直からの、言葉を詰らせからの、扉に足を強打して、涙目で扉を開けている。

 ここで、声をかけるのは更に可愛そうになる気がして、僕は見なかった事にして王妃様の後をついていった。


 店員総出で、お迎えです。

 この短時間でこの対応は凄いと思ったけど、扉で強打した彼が、時間稼ぎになったようで、結果的に、好プレイでした。


「いらっしゃいませ。」

 一同が声を揃えて王妃様を迎える。

 僕は、場違いな気分で眺めていたが、アイザは何も気にもしていないようだった。

「彼に、魔法付与アクセサリーを色々と見せてあげてください。」

 店員の視線が僕に移る。

 すっごい、見られているんですが…まあ、そうですよね。王妃直々に世話をする人物ですからね。そりゃ、そんな視線になりますよね。


「どういう効果をお望みですか?」

 年配の男性、たぶん店長か支配人クラスの人が僕に訊ねる。

 

 魔法付与品に関しての知識は、当然教えて貰っている。

 付与効果は、大まかに分けると、『保護系』『魔力上量系』『魔法付加系』に分かれ、ランクが上がると、もちろん効果が上がる。

 アクセサリーの種類である程度の基本があり、指輪はアクティブ発動(魔力を流した時に発動)で、ネックレスはバッシブ発動(身に付けると発動)、アクティブ発動は魔力が必要だけど、バッシブ発動は魔力を持たない人でも効果がある。

 魔法付与技術は、ファルザ公国だけの機密産業で、最高品質のAランク品の相場は金貨20枚から50枚。

 そして、Sランクと呼ばれる品は金貨100枚以上の値段で、直接買いに行かなければならない。


「アイザ、欲しい効果ってある?」

「えっ? 私?」

「そう、旅の記念になる物って思ってね。アイザの欲しい物がなければ『保護系』でもいいかな?」

「そうね。それでいいわよ。」


 男性が、Aランク品の『保護系』アクセサリーを、全て僕たちの前に並べる。

「アイザ、見た目で欲しいのは、どれ? いくつか選んでみてよ。」

 付与効果よりも、まずは好きなアクセサリーを選んで欲しかった。


「えっとね。これと、これと…」

 指輪が3つに、ネックレスが4つ。僕はそれぞれの効果を聞く。

 アクティブ発動の方が効果が高いと知り、魔法攻撃も物理攻撃も弾く盾を具現する指輪、『エイラの盾』を選んだ。

 理由は、アイザの魔法は、全て詠唱時間がいる魔法なので、即時に身を守るのに適しているから。

 見た目は幅広で、12角の銀の指輪には、模様のような柄があり、これが、銀の内部まで続き、ひとつの魔法紋章になっていると説明を受けた。


 金貨35枚を支払い、僕はアイザに差し出す。

「付けてくれるんでしょ。」

「もちろん。」

 そう言ってから、サイズの事を、まったく考慮していないことに気付く。

「どの指に合うかな?」

 盾は付けている手に発現するので、必然的に左手になる。

 で、薬指になってしまった。

 この世界にも、指輪の付ける場所に意味はあるのだろうか…

 よし、ここは、何も言わずに付けます。


「どう?」

「うん。ありがと。」

 うつむいたまま、静かに笑顔を見せるアイザでした。

 なにも言わないし、店員さん達の態度も普通だし、意味は無さそうかな。


「付与の効果を、お試しください。」

 男性店員の言葉にアイザは頷く。

 すっと、掌を前に出すと、半透明なガラスのような盾がアイザの前に現れている。

 アイザを全て隠すほどの大きな盾だった。


「素晴らしいです。魔力が少ない方だと、盾が小さくなってしまうのですが、完璧です。問題ありません。」

「まあ、当然よね。」

 僕に見せたアイザのドヤ顔も、可愛いです。


「ハルトさんは、アイザさんの事が、本当に大切なのですね。」

 サラティーアさんの優しい笑みに、僕は素直に、

「この世界に来て、独りになると思っていた不安を、消してくれましたからね。毎日楽しいと思えているのは、アイザのおかげです。」


 それを聞いていたアイザが、指輪を眺めなら、

「私もハルトで良かったって思ってるから。」

 アイザの不意打ちに、僕は嬉しさと恥ずかしさから、耳が熱くなっているのが判った。



 王宮に戻った僕達は、来賓者が寛ぐための部屋に案内される。

 部屋には、僕達の戻りを待っていたマイジュさんが一人、テラスでお茶を飲んでいた。

「ただいまです、マイジュさん。」

「おかえりなさい。良い物ありましたか?」

 僕はアイザの手を見せて、効果も伝えた。

「なるほど、ハルトさんらしい選択ですね。」

 マイジュさんの笑みがアイザに向けられている。


「マイジュさんのは、Sランク品なのですよね? ファルザ公国かぁ~見に行ってみたいけど、寄り道になるしなぁあ。」

「ファルザ公国経由でも、目的地への日数はさほど変わらないと思いますよ。」

 サラティーアさんからの回答で、僕は少し行ってみたくなる。

「ですが、今の内政があまり良くないと聞いていますので、観光には不向きだと思われます。」

 これには、僕だけじゃなくマイジュさんも驚いたようで、

「そうなのですか?」

「はい。ですが、アクセサリーの買い付けだけでしたら、係わりになる事もないでしょうし、大丈夫だと思います。」


 僕は、『ファルザ公国』の内政が気になっていた。

 たしか、戦争中はリビエート王国と同盟していて、友好的な相手だと聞いていたのに、サラティーアさんの寂しそうな表情が、僕の心を締め付ける。

「ファルザ公国になにかあったのですか?」


「そうですね…」

 少し、躊躇いを見せたサラティーアさんは、ゆっくりと口を開いた。


「1年ほど前でしょうか、それまで公国の君主だった『アムド・アラガル公爵』が、他国に機密産業の魔法付与の製法を教えたという罪で、その地位を剥奪され、新しい君主に変わりました。その君主の政策が、『魔術産業の拡大で国を豊かにする。』なのですが、実際の中身は、倫理的に禁術とされていた製法を使って、新しい兵器を作り出し、他国に売っている。という話です。」

「そして、その政策に反対している人達を反逆者扱いで排除しているとも、聞いています。アラガル家の人達は、今は無事みたいですが、いずれは…」


「サラティーアさんは、その方は無実だと思っているのですよね?」

「はい。そういう事をする人ではないと、確信していますから。」

 今の君主の策略で、失脚させられたと、思っていいのだろうか?…

 片方の情報だけで判断してはダメだから、実際に見てみないとだなぁ…

 でも、実際に行ったところで、何が出来るわけでもないし…

 アイザも居るからなぁ…


「実は、密書のやりとりをしていた者が、期日になっても戻って来てないのです。アラガル家の夫人と子供3人を、内密に移住させる段取りをしていたのですが。」


 数秒の沈黙だったのだろうか?数分経っていたのかもしれない。

 僕の思考を一番に理解していたアイザが、

「私は、ここで待っていても良いわよ。」

 僕は思考を止め、アイザを見る。

 強がっているけど、不安と寂しさが滲み出ている顔に僕は、どう答えたら良いのか迷っていた。


「助けたいと思ってるんでしょ? 私の事で、後悔するのは嫌よ。」

「だけど…」

「絶対に、私との約束は守ってよ。」

 アイザの目が、うっすらと潤んでいるのが判った。

「ごめん、ありがとう。ちゃんと、戻ってくるから。」


 それからすぐに、ラミナ姫とサーリアちゃん以外のリビエート家の人達と、朝の応接室で詳しい話と、すべき事を話し合った。

 

 ファルザ公国は、鎖国制度の名残から、国境に高い壁が建てられていて、入国するには、ゲートのある街で入国審査を受けなければならない。


 公国内には、傭兵組合も存在しないので、入国の許可が下りるのは、買い付け人かマイジュさんのように直に買いに来る人なので、僕の入国理由もそれにする。


 商業区画以外への立ち入りも禁止されているので、密書の受け渡しは、一軒のアクセサリー店で行われているので、今回もその店に行って、戻らない買い付け人を探す事から始める。


 その店自体が、もう使えない状態になっている可能性も十分あり、その時の対応も色々と話し合い、出た答えが、『僕が直接アムド・アラガル家に潜入し、国外に家族を連れ出す。』になった。


 魔術産業の国内秘事を守る為、国民のほとんどは国から出ることが出来ないので、脱出用に改造した馬車で今回は入国する。


 入国ゲートの街までは2日かかり、3日目の朝に審査と入国をして、同日の夕刻までにリビエート国に戻る。


 そして、今回の作戦は、リビエート国の人間が係わると今後の情勢にも影響するので、僕とマイジュさんの二人だけでの任務になる。


 

 応接室を出た僕は、夕食までの時間をアイザの部屋で過ごす事にした。

 二人でゆっくりと、話し合う為に。

「そうだ。Sランクのアクセサリーを買ってくるから、指のサイズを教えてくれる?」

「どの指?」

「今付けている指以外全部かな。どこかに合えば買えるからね。」

「判った。」

 僕は、急いで自分の部屋にあるリュックを取りに走る。


 アイザの指に紐を巻き、ペンケースに入っていた定規で長さを測る。

 それを、メモ帳にすべて書き込んでいった。


 ゆっくりと測ったので、それだけするのに20分近くかかってしまった。

 僕は、最後の指のサイズを書き込み、メモ帳から剥がす。

「このリュック、アイザが預かってくれる?」

「うん。預かっておく。」

「ありがとう。5日後には戻ってくるからね。」


 それから、色々と話そうと思ったけど、結局、何かをすることもなく、話すこともないまま、夕食までの時間を過ごした。


 夕食後は、サーリアちゃんと少し話す事にした。

 明日の1日は、サーリアちゃんと街の観光をする予定を取り消した理由と、次の約束をする為に。

「サーリアちゃんはアラガル家の子供達と友達なんだよね。」

「はい。数回しか会っていませんが、友達です。」


 アラガル家の子供は、17歳の長女、15歳の長男、8歳の次男の3人で、君主時代の交友で仲良くなり、特に次男のサイラ君がサーリアちゃんにベッタリしていたと、ルシャーラさんから聞いていた。


「一日でも早く助けたいと思ったから、僕は明日、ファルザに向かうことにしたんだ。その後は、遅れた日程を考えて、すぐにアイザと次の街に行くと思う。なので、サーリアちゃんとの観光は、アイザを送り届けてからでいいかな?」

 素直に頷くサーリアちゃんに、小指を見せる。

「じゃあ、僕の世界の約束の儀式をするね。小指を出してくれる。」

「ゆびきりげんまん。うそついたら、はりせんぼん、のぉうます。」

 最初恥ずかしそうに指を出していたサーリアちゃんは、キョトンとした目で僕を見る。

「じゃ、指離すね。」

 絡めた小指を離すと、いつも見せる少し俯いて僕を見る仕草になり、今は少し寂しそうに見えた。


 僕を好きになったのは、僕が貰うと言ったからなのだろうか…

 助けただけなら好意だけで、終わっていたのかもしれない。

 助けた後、あまり話す事が無かったのは、サーリアちゃんの性格で、恥ずかしかったのだと聞いた時は、愛らしく見えて、そして、罪悪感も少し出た。


「それじゃあ、行くね。」

「はい。お気をつけて下さい。」



 部屋に戻り、お風呂に入る事にしたのだけど、ライエさんが居ます。

「今からお風呂に入ります。」と言ったら、「はい。」と言って、脱衣所に一緒に居ます。

 さて・・・これ、どこまで手伝って貰うのが正解なんだろう?

 客人にどこまでの接客をしているのか、僕に判るはずもない。


「あの…着替えは一人でも出来ますので、ライエさんは外で待っていてくれますか?」

「そうですか。では、お召し物をこちらに置いてください。着替えを準備しますので。」

 良かった。こっちの意思が通りました。

 そうだよね。お客さんが嫌がることをするはずなんて無いよね。

 なに変な展開を期待してたんだ俺。


 お風呂に入って、僕は明日からの事を考えていた。

 旅のガイド本には商業区しか地図がなく、アラガル家が住む場所までの地図は明日までに準備すると言っていた。

 アラガル家の家族を、住まいから商業区まで誰にも見つからずに連れ出すなんて事、出来るのだろうか? 夜ならまだしも、昼間からだし…

 変装する段取りだと聞いたけど、いまいち不安なんだよなぁあ。

 入国審査で、傭兵の身分証明カードを見せるから、見つかると今後の事が面倒になりそうだし、係わるの、ミスったのかなぁあ…

 まあ、僕はそれでもいいけど、マイジュさんを巻き込まないようにしないとか。


「んぅう~ん。細かい段取りは、明日から考えるかぁあ。」

 湯船に深く沈み、腕を伸ばす。


「お背中を流させて貰いますね。」

 ライエさんが、メイド服のまま浴室に入って来た。

「えっ! いや、そこまでしなくて結構ですよ。さすがに恥ずかしいですから。」

 定番のイベント発生したよ。と思いながら、なんでメイド服のままなの?

 と、少し残念になっている自分がいた。

 

「ですが、何もしないとなると、私の立場が…」

 いや、そんな事を言われても、恥ずかしいのです。


「じゃあ別の事で、お願いします。そうだ、お風呂上りに冷たいお茶を貰えますか? 

 残念そうに「はい。」と、答えたライエさんが浴室を出て行く。

 いったい、メイドの仕事ってどこまでするんだろう?

 駄目だ。そっち系のイメージは童貞の僕には、無理だ。妄想が貧弱すぎる。

 

 僕は、膨らむ妄想を祓うため、浴室が出て、急いで着替えを済ませる。

 下着は自分のだったけど、服はバスローブ的な部屋着になっていた。


「お待たせしました。」

 部屋に戻った僕に合わせるように、ライエさんがお茶と…

「あっ! これってシャーベットですか?」

「はい。湯上りにと、ご用意致しました。」

「ありがとうございます。」

 それはオレンジシャーベットで、僕の火照った熱を清涼感と共に冷やす。

 冷たさで、僕の意識も冷静になり、落ち着きを取り戻した。


 時刻は21時過ぎた頃か。

 時計を見る余裕も戻り、僕はライエさんに早めに寝る事を伝える。

 

「はい。ベッドの準備をしますので、少しお待ちください。」

 ライエさんが空になったコップを下げに待機場に戻る。


 ベッドの準備ってなんだろう?

 もしかして、添い寝の事だったり…駄目だ。さっきの妄想がまた始まった。

 それじゃあ、ただの娼婦じゃないか。失礼だろ俺!

 自分を戒め、冷静な気持ちに仕切り直す。


「お待たせしました。」

 うわぁあああああ!


 僕が着ている部屋着とほぼ同じ格好で戻って来たライエさんに僕は、声が出ない声を出していた。

 ここで声を出したら、隣の部屋からアイザが飛んで来るだろうし、咄嗟の反応だったけど、『よくやった。』と、自分を褒める。


「ライエさん、その格好は?」

 冷静な振りで、対応する。

「ハルトさんのお相手をするので、服を脱いできました。」

 これ、良いのか?

 ここまでしてる人に、僕はどうしたら良いのですか?

 この世界のメイドさんって、こういうものなのですか?


「えっと、お相手というのは?」

 ここで、僕の予想を裏切ってくれる回答がくることを、少し期待する。

 よくある、期待させといてからの、空かしってやつを。


「もちろん。性的なお勤めを。」

 そう言ったライエさんの恥らう姿に、僕の心臓が一段、加速する。

 あ…これマジのやつだ。

 どうするんだ俺!?

 お風呂場での『私の立場』って単語を思い出す。

 していいのか? しないと駄目なのか?

 メイドを付けたって事はそういう事なのか?

 僕は、王妃さんとルシャーラさんの顔が浮かんだ。そして、ある仮説が閃いた。


「もしかして、王妃様達の命令ですか? それとも、メイドの業務として普段からしている事なのですか?」

「あっ、えぇっと。それはその…」

 戸惑いを見せるライエさんは、小さく答えた。

「私個人の意思です。メイド業務にそんなものは無いですし、王妃様達も関係ないです。」

 はい? えっ? 完全に僕の仮説は消えました。

 ライエさんとの既成事実で、ライエさんと結婚させられてかの、6年後のサーリアちゃんの求婚まで他の人と結婚させない作戦だったのかと、思ったけど違いました。


 呆気に取られ中の僕に、

「ハルトさんなら、将来を約束された生活を送れそうだと思いまして、それに私の好みでもあるし、女性を大切にしている方なので、妻にしてくれるかなって。もちろん、こんな事するのは初めてですよ。私も勇気だしているのですから。…あの、それと、この事は王妃様には内緒でお願いします。」

 ちょっ…怖いよ。

 ライエさんの頑張りが怖いです。

 もし、聞かずに受け入れてたら、ライエさんの思惑通りに結婚していただろう。

 そして、そうなったら、王妃さん達は僕が思った作戦をライエさんに命令するだろう。

 絶対に…

 じゃあ、思惑に乗らずに、するだけする。なんて事をしたら…

 アイザに殺されそうな気がする。

 確実に…

 アイザとは、そういう関係では無いけど、確実に殺されるのは判る。


「ごめんなさい。ライエさんは魅力的で僕の好みでもありますが、今は無理です。」

 あぁああ…この状況を断る人生なんて! 人生なんて!!

 アニメなら血の涙を流している場面です。

 くっそぉおおおおおおお!


「そうですか…残念です。」

 僕もです。


「じゃあ、いつなら良いですか?」

 ライエさんは、諦めるつもりはまだ無いようです。


「えっと、アイザを送り届けてからなら?」

 僕は釣られて、本音を口に出してしまった。

 俺も諦めてなかったぁあ!!


「あっいや! 結婚とかじゃなくて、恋人として? お試しみたいな感じの付き合いみたいな? 」

 駄目だ。これじゃあ、肉体関係だけを求めてるのと同じじゃないか…

 理性が欲望に負けそうです。


「そうですか、判りました。約束ですよ。」

 この約束に、『ゆびきり』は出来ないです。


「あっはい。よろしくお願いします。」

 ライエさんの見せた笑みを、僕は直視出来なかった。


「では、今日は部屋に戻ります。」

 待機場に戻ってメイド服に着替えたライエさんが、部屋の出口で僕に頭を下げる。

「それでは、また朝にお伺いします。おやすみなさい。」


 

 そして次の朝、僕は寝不足の状態で、ライエさんに起こされる。

 僕を見つめるライエさんの笑顔を、また僕は直視することが出来なかった。



 朝食を済ませた僕は、アイザと皆に見送られながら、ファルザ公国に出発する。

 馬車の騎手をマイジュさんが務めているので、僕は独り、車内の窓からアイザを見えなくなるまでずっと目を離さなかった。

 そして、アイザの姿が消えた後、「いってきます。」と心の中で、呟いた。

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