第1話 A

 日が高く昇り人々の往来が激しくなる昼前、真東(しんとう)国帝都の街を桐山凜は歩いていた。周囲は商店が並ぶアーケードであちこちの店から掛け声や話し声が聞こえる。ふと腰に付けているポーチの振動に気付き足を止め中から薄型端末を取り出す。

 画面にはメッセージが表示されている。

《今着いたよ♪》

《分かった、こっちもあと少しで着くわ》

返信

 今日は仕事が休みで久々に友人と買い物をする約束をしていて待ち合わせ場所に向かっている途中だ。普段は仕事の制服で街を出歩くことが多いが今は自分なりに調べて準備したオシャレな服を着ている。

《分かった、待ってるね》

 絵文字付のメッセージが返ってくる。その辺はやはり友人は女の子らしくて羨ましいと思いながら端末をしまい再び歩きだす。

 アーケードの出口に近づいたときだ

「あら、凜ちゃん?」

 右側の商店から名を呼ばれた。声のした方を向くとエプロン姿の中年女性が手を振っていた。

「こんにちはー」

「こんにちは、今日はどうしたのオシャレして」

「休みなので友達と出かけるんです」

「そうなの~いいわね~」

 この店は日ごろからよく利用するので店主の女性とも顔馴染みなのだ。

「店主様、そちらの荷物はどうされますか?」

 店の奥からもう一人女性が出てきた。侍女服を着ている若い女性だ。彼女は店先に積まれた段ボールの前で立ち止まる。

「奥に運んでおいてくれるかしら」

「わかりました。あと凜様こんにちは」

「こんにちはクレア、調子はどう?」

 クレアは一つでもかなりの重さがありそうな段ボールを表情一つ変えずに3つ同時に抱え上げた。

「最近は私の方は特に問題ありません、ただ店主様が先日導入した新しい発注システムで悪戦苦闘し商品を誤って大量発注してしまった時はやっちまったなー!とは思いましたが」

「あんた、余計なことは言わないの!」

「おっと、これは失礼しました」

 では、と段ボールを軽々と運んで行くクレア、その見た目からは考えられないパワーと事務的な喋り方は彼女が人間ではないからだ。

 自動人形、人に近い姿をしたからくりでこの国では古くから人間と共に暮らし関係を築いてきた。その活躍の場は多岐にわたり家庭から軍事用と様々でこの帝都でも至るところにいる。

 普通の機械等は基本的に人間の指示や操作によって動作するが、自動人形はさらに自分で判断し最善と思う行動に繋げていきそれを学習し次のステップで反映させていくのだ。

 人間と自動人形の関係は主と従者ではなくパートナーとしてお互いに得意不得意の部分を補うものなのだ。

 だから、クレアのように中には平気で協同者に容赦ない突っ込みを入れるとものもいるがそれは信頼関係があるからであり凜はこの二人の関係はいつも素敵だと思っている。

 そんなことを考えていた凜だが自分の本来の目的を思い出す。

「あ、私行かないと!」

「あら、引き止めちゃってごめんなさいね~楽しんで来てね」

店の奥から再び出てきたクレアが店主の隣に立ち軽く会釈する。

「気をつけて行ってらっしゃいませ」

「うんありがとう、それじゃあ」

 二人に向けて手を振りアーケードを後にした。




 それからさらに少しの距離を歩き、凜は待ち合わせ場所に到着した。

 ビルが建ち並ぶ街の中にポッカリと空いたエリア、花壇や街路樹が整備され中央には小さな噴水とその周りにはベンチが並べられているちょっとした公園になっているこの場所は街の人々が待ち合わせなどに利用している。

 凜はそれなりに人がいる周囲を見回しお目当ての人物二人を見つけた。

 中央の噴水の所に彼女達はいた。一人は自分と同じくらいの少女、もう一人は若い女性だ。凜は駆け寄る。

「彩月お待たせー」

 声を掛けられた少女―彩月は凜の姿を見るなり微笑んだ。

「こんにちは凜ちゃん、久しぶりだね」

「うん、前は去年の秋だったもんね、ミヤビも久しぶり」

 彩月の挨拶に返事をしつつ凜はもう一人の方へと声をかける。

「お久しぶりです凜、元気そうで何よりです」

 長身の女性―ミヤビは目を閉じて会釈する。

 凜は二人の服装と自分を見比べる。動きやすさを意識したコーディネートの自分に対して彩月は全体的にゆったりとした組み合わせでミヤビは長身に合うスタイリッシュな格好だ。

「やっぱり彩月は可愛い服が似合うわね」

「そ、そんなことないよ、凜ちゃんもすごく可愛いよ!」

 彩月は顔を赤くしながら両手の平を振る。いちいちかわいいなと思う凜であった。

「そういえばここに来るまで何も無かった?」

 質問を彩月に向ける。これにはちゃんと意味がある。一瞬キョトンとする彩月だったがすぐに和やかな表情になり

「うん、最近は安定しててそんなに発作は無いかな、もしもの時もミヤビがいてくれるから」

 彩月はミヤビを見る。ミヤビは笑みを返す。そう、ミヤビも先程のクレアと同じ自動人形なのだ。その役割は彩月の補助で彼女は小さい頃からある病を患っていて日常生活の中で突然発作が起き意識を失うことがあるのだがその時に適切な処置と対応をするのである。

「もうミヤビとはずっと一緒だから私のお姉ちゃんだよね」

「私が彩月のお姉ちゃんですか…」

 少し困ったような顔をするミヤビ、だが嬉しそうだ。

「そうかも…しれませんね」

 優しい目でミヤビは肯定した。

「ところでこれからどうする、先に何か食べに行く?」

「そうだね、少しお腹空いたかも」

 それじゃ行きましょう、凜を先頭に歩き出そうとしたときだ

「ねえねえ?君たち~」

 男から声を掛けられた。見ると凜達より少し年上だろう3人の若い男達が近づいて来る。

「どこ行くのー?良かったら俺達と遊び行かない?」

 そう切り出してきたのは真ん中の男だ。これは完全にナンパである。

 男達は凜達を囲むように立つ、えっ?えっ?と目を点にして戸惑う彩月、ミヤビも警戒の表情を見せる。

「そんな怖がらなくていいいって、別に何もしないからさ~」

「そういうお前が怖いんだよ!ごめんね~」

「そうだ!怖がらせちゃったお詫びに何かご馳走するよ」

 そんな3人のやり取りを見つつ凜はこの状況を打破すらための策を考える。その間にもナンパ達の誘いは止まらない。

 凜は一言

「いいえ、結構です!」

 拒絶の言葉を口にするが

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって」

 こういう連中に言葉は無意味だ。自分一人だけなら簡単にどうにかできるのだが今は彩月達の前なので物騒なことは避けたい。

 あれを使うしかないかな…、一つの解が出た。正直プライベートではあまり使いたくはない。あれを彼らに見せればさっさと行ってくれるだろう確実に

 仕方ないよね…今回だけ、と自分に言い聞かせポーチに入っているあれを取り出そうと手を伸ばした時だ

「あー、ゴメンゴメン!待ったー?」

 若い男の声、それは凜達に向けられたものだった。声がしたほうを見るとその主であろうサングラスの男が駆け寄って来た。

「ちょっと駅の中で迷っちゃってさ、あれ、他のみんなは?この人達は?知り合い?」

 サングラスの男は凜達に問いかける。

 この人もしかして、と凜はこの男の言葉をすぐに理解した。そして

「ううん、知らない人、急に話し掛けられたの」

 首を左右に振りサングラスに合わせる。その後ろで彩月もそうそうと頷く。

「ふーん、そうなんだ」

 それを聞いたサングラスは男達を見る。男達は一瞬怯み

「あーなるほど、知り合い待ってたんだ…」

「もう俺達行かないとなー!」

「く…」

 口々に言いながらどこかへ去って行った。

 その姿が見えなくなるとサングラスが再び凜達の方を見る。

「大丈夫だった、変なことされてない?」

 優しい口調で尋ねてきた。

「特には何も、ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」

「助力感謝します」

 良かった、とサングラスは笑みをを作る。

「何か困っているような声がしたからさ、何も無くて良かった。都会ってすぐ声掛けられるんだね」

 凜はサングラスの言葉が何か引っ掛かった。そしてそれが何かを確認するために聞いた。

「あの、私達の会話が聞こえたんですか?」

「うん、そしたらあの人達に囲まれてるのが見えたから」

 ふむ、と凜少し考えてから手を伸ばす。

「へ?」

「えっ?」

「!?」

 あとの3人が驚きの反応を見せる。凜が急にサングラスの顔を両手でぺたぺたと触り出したからからだ。

「ちょっと君?これはどういう…」

「動かないで下さい」

 当の凜は真剣な表情だ。若干怯みながらもサングラスは抵抗はしない。

「都会の女の子って大胆なんだね」

「これは違います!」

 顔の他にも何ヵ所かボディチェックのようなことをすると凜はサングラスを見上げる。「あなた、自動人形ね?」

 彩月とミヤビがまた驚く、そう言われたサングラスは

「そうだけど」

 特に狼狽えるような素振りはなく、普通に答えた。

「それじゃあコードはどこ?」

「コード?」

「自動人形なら管理用のコードがあるでしょ」

「いや、知らない」

「嘘でしょ!?」

 ここまで冷静だった凜が少し取り乱した。

「ええと、ごめんミヤビ、コードを見せてもらっていいかしら?」

 構いませんが、とミヤビは前髪をかきあげる。すると額の隅に小さくバーコードの様な ものが刻印されているのが見える。

「ありがとう、普通はこういうやつが自動人形にはあるんだけど」

 説明しながらサングラスを再度見るがサングラスは何ソレ?みたいな顔をしている。これはつまり

「あなた、管理不明の野良人形なのね」

 肩を落としながらつぶやく、

「野良人形?」

 サングラスはいまいち分かっていないようだ。はあ、とため息をつく凜

「自動人形は基本的にどこかに所属もしくは誰が管理しているのか登録しないといけないの、その情報の確認と登録済みであることの証明のためにあるのがあのコードなのよ」

「万が一、私達自動人形が問題を起こしたり所在不明となった場合はそのコードが解決への決め手となります。コードが無い自動人形は野良人形と呼称されます。」

 補足でミヤビが説明を入れる。

「それに野良人形は法的にも厄介な存在なのよ、正確なデータが無い分対応が面倒だし違法改造や犯罪に利用されるケースがすごく多いの」

 だから、と凜はサングラスの腕を掴み

「助けてくれたことには感謝するわ、でも危険の可能性がゼロじゃない野良人形を放っては置けないの」

「え?これってどういう状況なの?」

 ようやくサングラスが慌てだす。周囲をキョロキョロ見回し

「いや、俺ちょっと人に会わないといけないんどけど?」

「悪いけど、そこの交番まで来て貰えるかしら、一応野良人形は発見次第保護する事になってるから」

「ていうか、さっきの説明といい、この対応といい君は一体?」

 サングラスの質問に対して、凜は先程出し損ねたポーチの中のあれを手に取りサングラスに見せた。それは黒地に金で盾をあしらった手帳でサングラスの視線がそれに向く

「帝都治安局特殊機動課  桐山凜…」

 開いて見せられた部分をを声に出して読むサングラス、そして再度凜を見る。凜は自信ありげに胸を張り

「そういうことよ、いくら助けてくれた人とはいえ野良人形放って置くなんて私には出来ないわ」

というわけで、と凜は彩月達の方を向き

「ごめんなさい!ちょっとこの人を交番まで連れていくから少しだけ待っててくれない?」

謝った。二人は互いに顔を見合せるがすぐに凜を見て

「凜ちゃん仕事熱心だもんね、いいよ待ってるから」

「私は彩月に従うだけですので問題はありません」

「ホントにごめんね、後で何か奢るから」

 それじゃあ行くわよ、とサングラスの腕を引っ張って行く、そのとき

「あ、ちょっと待って下さい!」

 彩月が二人を呼び止めた。振り向く二人

「えーと、すいません名前だけでも教えてくれませんか?」

 そういえば、と凛はサングラスを見る。サングラスは捕まれていない方の手で頭を掻きながら答えた。

「鬼道 龍司」

 それを聞いた彩月は頭を下げ

「龍司さん、本当にありがとう御座いました」

 ミヤビも後に続いた。



 街中の公園、休憩する営業マン、ベンチに座りのんびり日向ぼっこをする老人に世間話に花を咲かせる主婦達など様々な層の人々がそれぞれの時間を過ごす。そんな中この場には不釣合いな白衣を着た男がいた。男は獲物を探すケモノのような目で辺りを見回す。

 ふと目に入ったのは若い男女4人組だった。サングラスの男と一人の少女が何かを話したいたが少女がサングラスの手を引き公園を出て行った。残った二人を見て男は口元に笑みを作った。

「あれでいこう」



 公園から出た後、龍司と凛は交番を目指し歩いていた。

「えーと龍司君、何で笑顔なの?」

 凛は振り返り、先ほどからニコニコと笑みを浮かべている龍司に問いかける。

「いやあ、女の子と手を繋いでるのってなんかうれしくてっさ」

「いや、これ繋いでるんじゃなくて腕をつかんでるんだけど」

 公園では何かと不服そうであった龍司だがここに至るまで今のところ逃げ出すような素振りは見せない。まあ逃げてもすぐに捕まえるのだが

「そういえば、人に会うって言ってたけど、誰に会いに行くつもりだったの?」

「うーん、俺自身は初めて会いに行くからその人のことはよく知らないんだよな」

「え?初対面なの!?」

 驚く凛、龍司は空を見上げて

「父さんが会いに行けって言ったからさ」

「父さん?」

「そ、俺の父さんが帝都に行けって」

 龍司の言葉に不思議な感覚を覚えた凛、自動人形と人は様々な形の関係を持つが人間のことを‘父さん‘と呼ぶ自動人形に出会ったのは初めてだ。

「その龍司君のお父さんってどんな人なの?」

「どんな人かって言われてもなぁ・・・そんなことより俺どうなるの?」

 言葉を濁し逸らす龍司、この反応はもしかして言動制限では、と凛は思った。管理者が重要な情報を自動人形を介しての漏洩を防ぐために一部の発言や行動を制限するのだ。彼は自身が知らないうちにそれを設定されている可能性が高い。これは凛の力では聞き出す事は難しい。

「大まかな流れは必要書類に記入してもらってから簡単に検査して本局に移送して保護、そして関係者とかに連絡とって身元が証明されれば登録して開放かしらね」

 なるほど、と返事をする龍司。そういうやり取りをしているうちに交番の前に到着した。

 白を基調とした2階建て建物、入り口の屋根には治安局のシンボルである盾のマークが付いている。

「こんにちはー」

 凛は挨拶をして中に入る。するとカウンター奥の机で作業していた治安局の制服を着た男が気付き席を立った。

「はい!どうかされましたか?って桐山凛じゃないか」

「あ、先輩お疲れ様です」

 凛の知り合いらしき交番の局員は凛と龍司二人を見比べるとにやっと笑い

「何だ桐山凛、横のにーちゃんは彼氏か?わざわざ紹介に来るとはな」

 茶化した。それに対し凛の顔が一瞬赤くなるのを龍司は見逃さなかった。

「ち、違います!彼はそこの公園で見つけた野良人形なんです!」

「凛がお世話になってます」

 局員の冗談に便乗する龍司、凛の顔がさらに赤くなる。

「ちょっと!何でそういうこと平気で言える訳!」

 まあまあ、と龍司がなだめると一息ついて

「先輩、野良人形保護の書類ありますか?」

 あるよ、局員が棚から数枚の紙を取り出すと凛は受け取りカウンターに置き備え付けのペンを手にする。そして龍司に近くの椅子に腰掛けるよう促す。

「それじゃあ、改めてだけど名前は?」

「鬼道 龍司」

「どこに所属してるの」

「何ていえばいいのかな」

「管理者は?」

「管理者は…父さんになるのかな」

「動き始めてどれくらい?」

「んー、5年位だと思う」

 いくつか不明瞭な点があるが、質問に対して返ってきた答えを書類に記入していく、これを書いてここの局員に引き渡せばひとまず自分のやることは終わりだ。さっさと済ませて彩月たちのところへ戻らなければならない。

 最後の項目について記入しようとした時だ。外が騒がしいことに気付く、叫び声や悲鳴と共に騒音と取れる音を発生させている何かがこの場所に近づいてくる。

 凛は手を止めペンを置きすぐに表へ出る。そこにはちょうどこの騒ぎの原因となるものが迫っていた。

 それは、履帯を履いた車両の上に人型の両手が爪になっている上半身が乗り背後からクレーンが生えてる高さが10メートル近い大型の建設機械だった。舗装された道路を砕きながら進み交番の前を通過していく。その振動により周囲の建物のガラスに亀裂が入る。

「建設作業用の鎧人(ガイト)!?」

 徐々に遠ざかる後ろ姿を見ながら凛は叫んだ。確か公園の近くに建設途中のビルがあったがそこで使用していたものが暴走したのだろうか、すぐに事態を把握するため追いかけようとするが鎧人が来た方向から声がした。

「り、凛ちゃあん!」

 見ると彩月がふらつきながらも走ってきていた。

「ちょっと、彩月どうしたの!?」

「えと、その、あっ・・・」

 凛の前に着くと何かを伝えようとしていたが膝から崩れ落ちる。それを凛はすぐに手を伸ばし支える。

「あの、ミヤビが・・・ミヤビが・・・」

 彩月の目を見る。先ほどまでとは違い余裕が全くなく焦点が合っていない。体も震えていた。そして彼女の近くにいるはずのミヤビの姿がない事に気付いた。

「ミヤビはどうしたの?」

「あ・・・、あ・・・」

 彩月は答えられる状態では無かった。あの作業用鎧人も気になるが友人を放っても置けない。次にどう動けばいいか考えを廻らしていると薄型端末に着信があった。すぐに取り出し通話ボタンを押す。

「もしもし?」

『凛?オレだ、今どこにいる?』

 相手は自分が良く知る人物で同じ治安局の人間だ。

「蒼(ブラウ)!ええと今は駅前公園の交番よ何が起きてるの?」

『そこの近くの建設現場で突然作業用の鎧人が暴走し市街地を移動している』

「他のチームは?」

『30分前に別の通報がありそちらの対処に向かっている。我々チーム[牙]は皆、各々の理由で外出いていたが緊急召集が掛かった。少々時間が掛かるかもしれないが合流予定だ』

 今日は自分達のチームが休みで事件等が起きた場合は他のチームが対応するはずなのだがそのチームが別件で行動中であり、急遽自分達で対処しなくてはならなくなったということだ。

『オレもすでにそこの通りに向かっている、合流するぞ』

「了解!」

 通話を切り、彩月を見る。不安そうな目でこちらを見ているが先ほどよりは少し落ち着いてきたようだ。

「凛ちゃん・・・」

「彩月ごめん、私行かないと」

 立ち上がり、交番の中を覗くと局員が通信機を片手に叫んでいた。

「だからっ!鎧人が目の前を通って・・・てどうした桐山凛!?」

「先輩!この子とそこ人のこと頼みます!」

 言い残し暴走鎧人の後を追う。

「今日は何て日だよ・・・」

 局員は不満を漏らしながら彩月に傍に歩み寄る。しかし途中、あることに気がついた。

「あれ?さっきの人形の兄ちゃんどこ行った?」

 龍司の姿が交番内から消えていた。

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