第1章「ギフテッド」9

「そんな天使どもの苦肉の策の産物たる『才能ギフト』だが、万能ってわけじゃない。どんな『才能ギフト』にもほぼ必ず制限がつく」

「隼人さんの『才能ギフト』にもですか?」

「当然。俺の『才能ギフト』を正しく説明すると、『自在に爆発を起こす才能。但し、発火する際に身体の一部分を鳴らすこと』」

 蘭が渋い顔をして隼人を見る。まるで何かを非難するかのように。

 裕輝はそんな蘭の表情には気がつかない。隼人が『才能ギフト』を使った場面を思い返すのに必死だったからだ。

 確かに隼人はあの現場に現れた際も戦いの最中もタバコに火をつける時も、必ず指を鳴らしている。あの動作にはそんな意味があったのかと裕輝は納得する。

「どんな『才能ギフト』にも必ず制限や制約、代償が付いて回る。どんなに高位の天使から授かった『才能ギフト』だとしてもそれは変わらない。だが、高位の『才能ギフト』になればなるほど重い代償とより単純な力を手にすることになる」

「つまり、単純な力ほど強いってことだよね。その分簡単には使えないけど」

「そうだ。説明の短い単純な『才能ギフト』ほど強力になる」

「……例えば『火を操る才能』があったとしたら、それは隼人さんの『自在に爆発を起こす才能』よりも高位で強力な『才能ギフト』ってことですね」

「そうだ。それを踏まえて今からお前がどんな『才能ギフト』を持っているか確かめる」

「確かめる? そんなことができるんですか?」

 裕輝がそう言うと蘭が勢いよく手を挙げて立ち上がった。その際、ミニスカートがひらりとめくり上がったが彼女にそれを気にする素振りはない。逆にスカートの奥にある布地を目にしてしまった裕輝の方が赤面したくらいだ。

「はーい、ようやく私の出番だね。待ちくたびれた」

 蘭は背をぐーっと伸ばすとまっすぐに裕輝を見据えた。

「私の『才能ギフト』は『相手の才能を知る才能。但し、直接対象を見ること』。私なら裕輝くんの『才能ギフト』を知ることができるってわけ。じゃ、いくよ〜」

「えっ、いきなりですか!」

 有無を言わさず蘭は自身の『才能ギフト』を行使した。一瞬、彼女の目に青白い光が灯る。裕輝は驚いて彼女の目を凝視する。しかし、既に光は消えいつもの可愛いぱっちりお目々に戻っていた。

「はい、終わったよ〜」

「早い!」

「そりゃ見るだけだもん」

「で、どうだ?」

 隼人が問いかける。蘭は眉間を押さえながら「う〜ん」と唸る。

「ちょっと待ってね〜。今言語化するから」

 蘭はしばらく「う〜ん」と唸った後、突然「できた!」と叫んで顔を上げる。

 裕輝はゴクリと唾を飲む。自分に宿った不思議な力の正体を知るのだ。緊張しないわけがない。これで破格の性能をした『才能ギフト』だったら少しは安心できる。少なくとも身を守るに足る『才能ギフト』であってほしいと願う。もしも使えないハズレくじみたいな『才能ギフト』だったら絶望しかない。これからそんなもののために悪魔に狙われるなんて割りに合わないからだ。

「じゃあ、発表します。裕輝くんの『才能ギフト』は……」

 蘭が一同を見渡す。裕輝のみが緊張した面持ちでいる。

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