第1章「ギフテッド」8

「お次は『才能ギフト』について。お前も既に目にしたことがある、これだ」

 そう言って隼人は右手でパチンと指を鳴らす。すると彼の右手の上で炎が舞い上がった。

「天使から祝福を受けると加護を授かる。その加護は『才能ギフト』として現れる。俺の場合は『自在に爆発を起こす才能』」

「スゴイ! まるで漫画みたいだ」

 裕輝はそう言って目を輝かせた。それを見た隼人はふっと鼻で笑う。

「俺みたいなのよりえげつない『才能ギフト』を持った奴はこの世にごまんといる。俺のは中堅もいいところだ」

「そうなんですか?」

 裕輝の目には隼人の『才能ギフト』も十分えげつないように見えるのだが、上には上がいるらしい。彼らが一体どんな『才能ギフト』を持っているのか裕輝には見当もつかない。

「実際、俺に『才能ギフト』を授けた天使の階級も力天使。九つある階級の丁度真ん中だ」

「天使の階級? 貴族の爵位みたいな感じですか」

「そうだ。天使の社会はガチガチの階級社会らしい。下の者は上の者に逆らうことはできず、逆に上の者は下の者に絶対の命令権を持つ」

「……天使って体育会系だったんですね」

 ここでふと裕輝は疑問に思うことがあった。

「九つも階級があるってことは、天使ってたくさんいるんですか?」

「ああ、かなりの数がいることは確かだ」

「だったら人間に悪魔を追い返してもらうなんてまどろっこしいことは止めて、彼らが直接戦えばいいんじゃないですか。現に悪魔は自分で戦っているわけだし」

 裕輝の言葉にマスターが首を横に振って答えた。

「それは無理な話じゃ。地上に降臨できる天使は限られておる。それこそ「受胎告知」の際の四大天使・ガブリエルのように相当高位の天使でなければな。低い位の天使が地上に降りる際は人の身体を借り受けねばならぬ」

「だったら人と協力して一時的に借り受けたりすれば……」

「人の身体に乗り移り天使が下界に降りることを即ち『堕天』と言うのじゃ」

「堕天使ってのは悪魔と同じ。ほとんどの天使は天使のまま地上に来ることはできない。だから、奴らもこんな方法を取らざるを得ないってわけだ」

 二人の説明を受けて裕輝は黙った。悪魔を葬り去るために天使が悪魔になってしまっては本末転倒だ。延々と悪魔が量産されるのみ。世に悪魔が蔓延り、今日みたいな事件が頻発するような世界は御免だ。それを防ぐために自分に『才能ギフト』が授けられた。

 しかし、と裕輝は思う。それ故に危険なことに巻き込まれるのはそれこそ本末転倒な気がしてならない。自分に『才能ギフト』なんてものが宿らず、こんな世界があるなんて知らずにいた方が幸せだったのではないかと。

 そんな裕輝の悶々とした思いを余所に、隼人は裕輝に授けられた『才能ギフト』について説明を始める。

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