バハムート亜種とSSランク
レインの言葉に冒険者達が不審気な目を向けてきている中、レインは説明を始めた。
「急にこんなこと言ったってまあ通らないのはわかってるからちゃんと説明させてもらうと、今回出てきてるバハムートは通常種じゃない、亜種なんだ。通常種だとSランクの魔獣なんだが亜種になると最低S+、最悪SSクラスもありえる。そんな相手にこの人数でかかったってみんな無駄死にするだけなんだ。だから今回は降りてくれ」
レインの説明に冒険者たちは訝しむような態度を取っていた。そこでまたエアルが口を開いた。
「確かに君の意見も理解した。しかし、その亜種というのは本当にそんな強さなのか?」
「ああ、1度戦ったことがあるからな。本気でないとはいえ俺と互角にやりあったんだ。それだけでエアル、いやエアル・テンペストあんたならどういうことがわかるだろう?」
ここでもほとんどの冒険者は困惑するだけだったが、エアルだけはレインの正体に気づいてしまった。
「私の隠し名を知っているということは、君、いやあなたは…」
「しばらく顔出しせずに依頼をこなしていたからな。他のやつがわからないのも無理はないな」
「やはり、そうでしたか。ではこの戦いはあなたに任せるとしましょう」
急に方針転換したエアルに対し、不満が噴出しそうになっていたところで、エアルはレインにある頼み事をした。
「私はもうあなたの正体に気づきましたが他の皆が気づけていないのでこのままでは不満が出てきそうです。なのであなたにお願いがあります」
「なんだ?」
「あなたが前回亜種と戦ったときと同じ強さの威圧を出してほしいのです」
「いいのか?あのとき俺は20%も出したんだ。エアル、君でも耐えきれないかもしれないぞ?」
「大丈夫です」
「まあ、シュヴィもいることだから構わないが。せめて少しでも離れておけ」
「お心遣いありがとう。さすがは世界最強のお人好しと世間で言われるだけありますね」
「その言葉は俺には似合わないけどな」
こうして少しエアルが距離をとったところでレインが動いた。
「君たちはまだ俺の言葉が虚偽だと思っているようだな。それならばこの力を耐えてみせろ。そうすれば俺への意見を許そう」
そう言うとレインは自身の力を溜め始めた。
「リミッター限定解除。圧力20%」
そしてレインが自分にかけていたリミッターの一部を解除した瞬間レインの体から形容できない程の力が溢れ出した。その力の前に集まっていた冒険者たちはほぼ全てが気を失い、エアル以外の3人のSランク冒険者も立ち上がることは愚か指一つ動かせなかった。
「ふう、久々にここまで力を出したが、どうだ?これでも俺の言葉が信じられないか?」
「…皆意識が混濁してますから口に出しますがレインさん、多分誰の耳にも入ってないですよ?」
「今のSランクはこんなに弱いのか…シュヴィ!」
「は〜、全く人使いが荒いな!」
「お前は人じゃないんだから関係ないだろ?」
「…まあそうだけどね。エナジーヒール!」
シュヴィの魔法で倒れていた冒険者たちは気力を回復し立ち上がっていたが、もうレインに意見しようとするものはいなくなっていた。そして、レインは自分の正体を明かした。
「改めて、自己紹介させてもらうと、レインだ。あんたらからしたら『不可視の
レインはそう言うとシュヴィに小声で用件を伝えた。伝えられたシュヴィは驚きながらもギルドのカウンターの奥へと消え、しばらくすると少し大きめの紙を30枚持ってきた。
「これが俺からの補填だ」
そう言ってシュヴィから紙を受け取り集まっていた冒険者たちに渡していく。すると皆驚きを隠せないでいた。
「今回は俺が勝手にしゃしゃり出て行かせてもらうからな。それに今回の討伐、俺にもメリットはある。このくらいは払わせてもらうぞ」
そう、冒険者たちに渡した紙は金額が書かれた小切手だった。しかし、その額にエアルは遠慮が強めの抵抗を示していた。
「いくらなんでもこの額は多過ぎだ!私達が本来もらう予定だったのは200万ゴールド。そこと同額でも高すぎるのに1人あたり300万ゴールドはいくらあなたでも払いきれないのでは?」
確かにその疑問は最もであった。合計金額である9000万ゴールドは小国なら1年の国家予算にも匹敵する額なのだ。それでも涼しい顔をしながらレインは続ける。
「俺を誰だと思ってる?この世界で現在唯一のSSランク冒険者だぞ?それに俺の仕事はこれだけじゃないんだ。最早この程度なら1割にも満たん」
その言葉には冒険者たちはもちろん、シュヴィやアイリスすらも絶句していた。結局皆補填分を受け取ったところで、レインはバハムート攻略へと向かおうとしていた。
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