魔導士 変身する
「さあ、これからどうしよう」
僕、ミツルギ・レンは王都の魔導士連盟本部を出ると、これからの行動について悩んでいた。先程、本部長であるアルベルト・エヴァンスに前線から退く旨を伝え了承を得たのはいいのだが、学園が始まるのはまだ3週間ほど先のことだからである。そんな時だった。
「レン!私を捨てる気ですか?私になんの断りもなく前線を退くだなんて」
「あ、アイリス様!?」
「私がここにいてはおかしい?」
「いえ、おかしくはないけど…ここじゃ何があるかわからないしとりあえず詳しい話はうちでさせてよ」
「わかったわ」
まさかのことだった。僕に声をかけてきたのはこれから1番最初に伝えに行こうと思っていた僕の守るべき存在、このクレセリア王国第一王女であるアイリス・シルヴィ・クレセリアその人だったのだから。
そうして本部からほど近くにある僕の家に着くと早速アイリス様からの質問攻めが始まった。
「レン、まず始めになぜなんの断りもなくこんなことをしたのです?」
「それは、まだ確定事項では無かったからです」
「?」
「アルベルトがぼくの離脱を認めるかどうかは会って話さないとわからなかったもので…そこが確定してからすぐに行こうと思っていたのですが、まさかアイリス様から来られるとは」
「そう、でも私の情報網をなめないことね」
「そうですね」
「それと2人なんだから敬語はやめて?なんだか他人行儀に聞こえるから悲しいわ?」
「ごめんアイリス。それで他になにか聞きたいことはある?」
「そうね。色々あるけれど、大きくは2つね。1つはなぜやめたのか。そしてもう1つはこれからの事よ?」
多分そうなんだろうなとわかっていた僕は、アイリスへ説明を始めた。
「僕は10歳の時にみんな受ける適性試験の結果ランク1位になりました。それから僕はずっとこの国、いやこの世界を守るために戦い続けてきたんです。そこから6年経った今、僕はそろそろ自分の気持ちに正直に生きようと思ったんです」
「その結果がこれなのね?」
「そうだよ」
「そう、でもそれなら私を守る任務も終わりってことね…」
「その結論は早いよ!」
思わず叫んでしまったけど、気を取り直し説明を続けた。
「僕がこれからどこに向かうかは知ってますか?」
「知らないけど…」
「僕がこれから行くのはレーヴェだよ」
「レーヴェ?何しに行くの?」
「レーヴェといったら一つしかないでしょう?僕も編入するんですよ王立魔導学園に」
「ということは…教師として赴任してくるのね?」
「そんなわけないじゃないですか。アイリス様と同級生として編入させてもらうんです」
「それって大丈夫なの?レンの能力値もそうだし、顔も知られてるから大変なことにならない?」
「大丈夫ですよ。僕はこの姿では編入しないので」
「?どういうこと?」
アイリスはレンの言葉の意味を理解できず聞き返した。そしてレンは返答の代わりに行動で答えを示した。
「見ててくださいね。『
レンがそう唱えるとレンを光が包んだ。そしてその光が消えた時そこにいたのは明らかに別の人間だったのだ。アイリスは驚きで言葉が出なかった。
「これが僕の
「そんな能力があったのね…」
「はい」
「でもすごいね。私が見ても誰だかわからないもの」
「この能力は基本的に誰が見てもわからないですからね」
「でも名前バレは?」
「そこも大丈夫です。この体にも名前がちゃんとあるので」
「名前?」
「はい、この体の名前は『第三人格 セレン』と言うんです」
「そこまでしっかりしてるのね」
「そうなんです。まあ名前だけだとあれなのでこの状態のときの名前はセレン・クロイスでお願いします」
「わかったわ」
「じゃあこれでひとまずこれからの話は終わりですね。でもせっかく来ていただいたことですしもう少し色々話しましょうか」
「そうね」
こうしてレンとアイリスはこれからの事に思いを馳せながら世間話に花を咲かせるのであった。
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