独りの24話

 前回のイベントクエストを終え、翌日。


 今日もカナリアちゃん達と共にクエストをするかと思いきや、


【ごめん、用事が出来ちゃって行けそうにない。

 今度埋め合わせするから!】


 というチャットでの連絡が来た。


 ジカさんの所によって話を聞くと、なんと単純に宿題が終わるまでゲームを禁止されているらしい。


 いきなり手持ち無沙汰になった俺は、ジカさんの所で、壊れた武器について話す。


「直りそうですか?」


 普通に壊れているだけだったらいざ知らず、【ERRORCode:0003】を出してしまったので、心配していたが、


「ERRORに関してはちょいと操作するだけで直るんだ」


 そう言って差し出されたのは、直ったショットガン。


「しかし、拳銃の方が難儀でな。

 ショットガンは部品の損傷が銃身のみだったからよかった。

 だけど拳銃の方は簡単な分、直す手間が大きい」


 買い替えた方がいい、と遠回しに言われているのは分かる。


 今の装備は、ショットガン、アサルトライフル、ナイフガン。


 それと使わないけど返しそびれた盾と槍。


「確かに、拳銃は欲しいな……」


 けど、と俺は付け足し、


「スキル着いたんだ」


「おぉ?!

 どんな感じだった?」


 俺は昨日の修練場での出来事を思い出し、


「詰まらなかった」


「…………どういうことだ?」


「うーん……。

 まぁ、もう使わないと思うから、いいでょ」


「かなり気になる言い方するな。

 隠さないで教えてくれよ……」


 厳つい顔で仏頂面をするものだから、なんだか笑ってしまいそうになったが、俺は真面目な顔で、


「さ、武器の話をしましょう」


 無理矢理に話を変えた。











『厄という名前は好きじゃない』











 クエストに入った時の地面の感触は、やはり慣れないものだ。


 今回は、俺はイベントクエストに来ている。


  ジカさんの所で、昨日の儲けで一丁買った。


 特に新しい要素はなく、前回貰ったリボルバー式を買い直した形だ。


「中級で一人だとどうなるんだか」


 俺が今回イベントクエストに来たのにはいくつかの理由がある。


 まず一つ、金がない。


 このゲーム、どんなやり取りにもゲーム内通貨が使われる。


 そしてこのゲーム内通貨、クエストか物を売ることでしか稼ぐことが出来ない。


 街にあるミニゲームはまだやっていないが、あのミニゲームをすることによって、ボーナスアイテム的なものが貰えるらしい。


 思わず、クエスター 金策、なんて調べたが、どう足掻いてもクエストをやりまくるのが正解らしい。


 そして、クエストの中でも効率がいいのが、イベントクエスト。


 みんなが興味のないような、旨みのないようなクエストでも、普通にするよりは貰えるらしい。


 次に、武器の強さを調べるためだ。


 今回のイベントクエスト、人数によって野菜のHPが変わるという。


 プレイヤーによって大人数がいいか少人数がいいかは変わってくるらしい。


 それと、俺が今持っている手持ちの武器の強さは、


 【AK47】……六

 【ショットガン(虚式)】……六

 【ショットガン(実式)】……五

 【ナイフガン】……六

 【リボルバー】……四

 【初心者用の拳銃】……一


 という様に、中級のクエストを受けるには丁度いいのだが、如何せん防具は初心者の頃から変わっていない。


 さらに、実式は実際の強さとぶれる点が見られる。


 現にナイフガンよりショットガンが弱いのが信じられない。


 そこで、中級に潜ってみて威力を確かめてみようという魂胆だ。


 他にもいくつか些細な理由で、イベントクエストに来た。


「【キラー人参】……」


 ちなみに、出やすい野菜、出にくい野菜がこのイベントクエストにある。


 更に言うと、野菜ごとに行動パターンがあったりする。


 人参は近場の敵に近づいて踏みつけてくる。


 じゃがいもとかは殴ったりするのがよく見られる。


 キィィィャャャ!!!


 人参だけ叫び方がスタンダードな悪役みたいでほっとする。


 人参はチュートリアルにも使われているせいか、普通に叫ぶ。


 これがほかの野菜だと、露骨に自分の名前の捩りを叫びたがる。


「三発!」


 ショットガンの連射。

 人参の顔面に全弾当たった。


 虚式よりも重い感触にちょっと感動しながら、人参の右手に回る。


 人参のHPバーは、五分の一減ったという所か。


 踏みつけにかかる足に向けてまたも三発。


 一発外す。


 HPはさっきより格段に減りが少ない。


「場所によって減少に差が?」


 呟いて、胴体に三発。


 さっきと同じように減った。


 やっぱり、と思いながら俺は走り続け、人参の背後に回ろうと努力する。


 しかし流石は中級の人参と言ったところか…………。


 ちょっと自分で思ったことに笑って集中を欠く。


 ショットガンを撃とうとフォアハンドを手前にスライドして、


「あ、リロード」


 俺は即座に空撃ちして、


「やっぱりこれ強いよなぁ」


 マガジンを取り出し、メニューを開かずに弾を込めていく。


 アイテムを特定動作だけでメニューから呼び寄せられる【テイクファスト】。

 俺は四つという限られたアイテムの呼び出しを、【ショットガン】、【AK47】、【リボルバー】、【支給品の弾】にしている。


 本来ならばそれぞれに必要な弾の大きさは違うが、支給品の弾にしていれば、リロードの時に簡単に手元に出し、その時に必要な弾の大きさに変わる。


 俺は以前より半分くらいになったリロード速度に感心しながらも、


「まだまだ!」


 顔面に四発。


 人参はガードによってその弾を防ぐ。


 HPの減少は……十分の一……くらいか?


 もはや視認では分かりづらいくらいしか下がらないHPに俺はやきもきする。


 残りのHPは四分の三程だ。


 俺は急遽進行方向を変え、人参の足元に走る。


 人一人がくぐれるほどの股下に潜り込み、ショットガンを下から御見舞する。


「股間補正は?!」


 六発中五発。


 その成果は、HPが残り半分になったという事実で証明される。


「理由が分からない!」


 俺は半分を切って苛烈になった人参の足踏みを、距離を取って躱す。


 俺は【テイクファスト】によってショットガンを【AK47】に変更。


 人参を中心に円書くように走りながら全弾撃っていく。


「結構当たったな」


 人参が防御に徹したお陰で、二十五発ほど当たった。


 俺の持っている武器の中でも最大の攻撃力を持っているだけに、残りのHPは四分の一を切る。


「これでっ!」


 腰に下げていた【ナイフガン】を取り出し、即座に発射。


 以外にも強い威力のナイフガンに人参のHPは残りわずかとなる。


 その瞬間。


「?!」


 俺の体が光った。


 鈍色だ。


 しかし気にしている暇はない。

 俺は拳銃を取り出し、人参に詰め寄りながら発射。


 人参の踏みつけを真上に控えながら、HPが全て減ったのを確認する。


 今。


 俺は腰から【草刈り鎌】を取り出し、踏みつけてくる足に向かって攻撃する。


 その【草刈り鎌】で攻撃した瞬間、人参は倒された。






 そうして、俺の体は赤錆色に光った。






「どういうことだ?」


 俺は自身のスキルを確認しながら、次の相手を探す。


 【ナイフガン】で【至】は発動条件を満たし、


 【草刈り鎌】の攻撃で、【頂】は発動した。


 俺はこれが終わったら、調べないといけないな、と溜息をつき、


「【厄】」


 速攻でクエストを消化するために、使った。

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