第3話 お風呂で遊ぼっ

「なんだよぉアル姉、先に入ってるんだったら、言ってくれよぉっ!」



 僕は照れ隠しもあって、いきなりアル姉に大きな声で怒鳴ってしまう。



「こらこらー。慶太ぁー。ちゃんと仲良くお風呂入らないとダメでしょぉー」



 またもや、台所から母さんの声だ。



「……だぁってー。アル姉が先に入ってるって、言ってくれないとぉ。アル姉にも悪いじゃーん」



 お風呂の入り口から顔を出して、母さんにまで文句を言ってみるけど、もちろん、のんびり母さんには、そんなクレームは通用しない。



「何マセた事言ってるのぉ。一人でキチンとお風呂に入れないんだから、まだ子供でしょ! ちゃんと洗ってもらいなさいっ!」



 うーん、やばいっ。これ以上ゴネると、母さんがマジ切れするかも。


 いつも優しくて、殆ど怒る事の無い母さんだけど、本気で怒るとめっちゃ怖いからなぁ。


 僕は大体空気が読めるから、そんなに怒られたりしないんだけど、たまに父さんが玄関先で土下座をしているのを何度か目にした事がある。


 まぁ、何をやらかしたのかは聞かないけどね。父さんとは、深く詮索しないと言う男同士の約束があるんだ。


 お風呂場から顔を出して、母さんに文句を言っていても始まらない。って言うか、すっぽんぽんのお尻を、アル姉にガン見されている状態を、一刻も早く何とかする必要があるのさ。


 僕は、タオルで自分の前部分を隠しながら、カランの前にちょこんと座ると、早速シャワーを頭から浴びて、頭をゴシゴシと洗い始めたんだ。



「ふふふっ、けーちゃん、何はずかしがっとんがぁ。いっつも一緒に入っとったねかぁ」

(翻訳:ふふふっ、慶太さん、何を恥ずかしがっているのかしら。いつも一緒に(お風呂に)入っていたじゃないの)



「ザバァ……」



 アル姉は、湯舟の中からゆっくり立ち上がると、お風呂場の角に置いてあった、もう一つの椅子を持って来て、僕の後ろに座ったみたい。



「あぁ、ほらほらっ、やっぱり耳の後ろが洗えとらんがやよぉ」

(翻訳:あらあら、やっぱり耳の後ろ側が洗えてませんよ)



 アル姉はそう言うと、背後から僕の頭をゴシゴシと洗い始めたんだ。


 アル姉の指はとっても細くて繊細なんだけど、爪を立てずに指の腹の方でゆっくり洗ってくれるおかげなのか、とっても気持ちが良いんだ。



「けーちゃん、けーちゃん。シャンプーの泡が耳に入っちゃうから、自分の耳を押さえてっ」



 僕はアル姉に言われるまま固く目をつむり、自分の耳を両手で押さえつける。


 時々アル姉が僕の右手を軽く引っ張って、僕の耳から手を離させると、耳元にアル姉の口を寄せて来て「かゆい所無い?」って聞いてくれるんだよ。



「はうっ。……うっ、うん。……だいじょぶ」



 その時だけは、アル姉の結構な代物が、僕の背中に『ぴとっ』ってくっ付いてくる。



 僕は……その瞬間が大好きです。



 大体頭が洗い終わると、アル姉が僕の肩越しに、鏡の横に引っかけてあるシャワーヘッドを取ろうとするんだ。



「……はうっ」



 その時だけは、僕の肩に、アル姉のもの凄いたわわな代物が、よっこらしょと乗って来るんだ。



 僕は……その瞬間がもっと好きです。



 ――シャァーーー



「……ぷはぁっ」



 一通り頭を洗って、体の汚れも落とした後で、今度は一緒に湯舟に浸かるんだ。



「ふぃぃ……」



 そして、ここから二人で湯舟の中で今日あった事とかをお話ししたり、いっしょにお風呂のおもちゃで遊んだり。



「ねぇ、けーちゃん、どうして今日は私とお風呂入るがん、嫌がったん?」

(翻訳:ねぇ、けーちゃん、どうして今日は私とお風呂に入るのを嫌がったの?)



 アル姉が真面目な顔で僕に話しかけて来るんだけど、ちょっと返事がしずらい。



「えぇぇ……ぷくぷくぷく」



 僕はそのまま返事をせずにお湯の中へ半分顔を沈めて、ぷくぷくと口から泡を出してみる。



「私と一緒にお風呂入るの嫌なん?」



 もう一度、アル姉が聞いて来るんだけど、その表情がちょっと寂しそう。


 僕は意を決して、本当の事を話す事にしたんだ。



「えっとねぇ。今日、辰兄ィと話をしてて、いつもアル姉と一緒にお風呂に入ってるって言ったら笑われたんだぁ。……だから、一緒に入っちゃダメなのかなぁって……」


「それに……他の友達もお姉ちゃんとお風呂入って無いって……」



 僕は俯いてお湯の中で指をモジモジ。



「ふーん。私が一緒にお風呂に入ると、けーちゃん、皆に笑われちゃうんだぁ……。でも誰がそんなひどい事言うん?」



 そう言うアル姉の顔は、とっても悲しそう……。



「えぇっと、辰兄ィと、浩くんと、裕ちゃん……かな」



「……」



「……あっ、アル姉。ごめん。本当にごめんね」


「僕、全然僕恥ずかしくないよ。だから……そのぉ、アル姉さえ良ければ、これからも一緒にお風呂に入ろうねっ」



 僕がそう言うと、アル姉はちょっと嬉しそうに「うんっ」って頷いてくれたんだ。


 その後、お風呂に置いてある僕のおもちゃで遊んだんだけど、今回は新しい遊びを開発っ!


 前にお風呂場でプラモデルを動かす時に使った水中モーターで遊ぶんだけど、最初に水中モータの電池を抜いてお風呂の底に沈めてから手を放すだけ!


 なんと、浮力で水中モータが勝手に浮かび上がろうとするんだよね。


 これを上手く微調整してから手を放すと、水面に浮かび上がる時の速度そのままで、目標に当てる事が出来るんだよ。


 これをアル姉と交互に発射して、お互いのおっぱいに当てたら勝ちなの。


 もちろん、先っちょの色の違う所に当たらないとダメだよ。それに発射された後は動いたら反則っ!



「あーっ!アル姉、今動いたぁぁ」



「いぃえ、動いてませんー。ちょっと揺れただけですぅ。だって、だって、私の方がおっぱいおおきいんだから、仕方無いがんよぉ」



 って途中でアル姉から自分のおっぱいは大きいから当たりやすくてインチキだ!と言う“物言い”があったんだけど、そんな事言うならって、二人で比べっこしてみよって事になって、本当に比べてみたら、色の違う所の大きさって、殆ど変わらないって事が分かったんだよね。


 新しい発見だねっ! と言う事で、アル姉の“物言い”は却下となりました。


 うーん、これは結構盛り上がったなぁ。楽しいお風呂遊びトップ5に新たに加えないとだなっ! 明日は、もう一台持ち込んで、同時に発射する方式にルール変更しよっと。


 ちなみに翌日の夕方、ちょっとモジモジした様子で、辰兄ィと、浩くんと、裕ちゃんが家に遊びに来てくれて、「昨日は笑ってごめんね」って謝りに来てくれたんだよ。


 もちろんその時に、みんなアル姉から「よく出来たねぇ、偉いねぇ」って頭を撫でてもらって、デレデレの顔してたから、力ずくで言わされた訳じゃあ無さそうだし。まぁ、良っかぁ。

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