第4話寝ながらおにぎり食べたことないくせに
先日のだるくて動けないといったエピソードをその時の師長に相談し、5月にしか予約できなかった再診予約をその師長のコネで繰り上げてもらって、再度4月末に受診。採血結果は前回とあまり変化なかった。大幅に悪いわけでもなく、薬を飲むほどでもないと言われただけだった。でも私のだるさは日に日に増していた。起きているのも、何をするのもだるかった。
仕事を休むわけにはいかなかった。仕事の性質上、私が休めば他のスタッフに迷惑がかかるし、気軽に休むわけにはいかない。同僚は私の病気を知ってはいた。働く上でどうしてもカミングアウトせざるを得なかったからだ。でも病名を告白しても手を抜くことは許されなかった。唯一の同期はその時にはすでに退職していたから、気を許せる相手はいなかった。先輩も後輩も自分たちの仕事にいっぱいいっぱいで私の体調に気を配る余裕なんてなかったように見えた。弱音を吐ける相手は職場にはいなかった。ただこらえてひたすら自分の仕事をこなすことを考えた。自分が動けないからと言って妥協するのは自分的にも嫌だった。だから以前にも増して完璧にこなさなければならないという気持ちもあったと思う。
時々「だるくて全然動けないんだよね」と先輩や後輩にこぼすと、「私も疲れちゃってだるいんですよねー」とか心ないことを言われることも多くなった。何気なく言われた一言で傷つくことが多くなった。無理解に悩むことも多くなった。あの人たちは看護師のくせに同僚の病気には無関心だった。だるいと言っても大抵の人は真剣に聞いてくれない。仕事すれば誰でも疲れるしだるいのが当たり前だからだ。それが病気からくるものだなんて考えもしない。
その頃から私は急速に食事が食べられなくなっていく。だるすぎで起きて食事を摂ることができなかった。仕事が終われば真っ先に帰宅し、買ってきたパンやおにぎりを少し、横になってなんとか食べてただひたすらに寝た。同僚の言葉が悔しくて泣きながらおにぎりをかじった夜もある。その時の悔しさ、惨めさは今でも忘れられない。お前らは横になって泣きながらおにぎりをかじったことあんのかと何度思ったことか。自分のことしか考えていない人たちのほうがよっぽど自由な発言をして、無知・無理解で容易く人を傷つける。私は徐々に自分の気持ちを押し殺していくようになっていった。
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