第3話だるくて泣いたことがあるか
その年のことはよく覚えている。なぜなら私が発病した少し後に東日本大震災があったからだ。病名が分かったが、症状はなかったと言っていい。気づいたら微熱もおさまっていた。私はその時都内で一人暮らしをしていた。私の地元は東北。病気が発覚したことによってこれからどうなるのかという不安はもちろんあった。でも、地震によって不自由な暮らしをしている親に自分の病気のことなど言えるはずがなかった。誰かに聞いて欲しい、でも誰にも言えない。その時の不安な気持ちは今でもよく覚えている。
それから状況が急変したのはその年の4月のことだったと思う。ある日突然とてつもない倦怠感に襲われた。その日は夜勤で、夜中から自分の体の異変は感じていた。なんとも言えないのだが、とてつもなくだるくて動けないのだ。なんとか仕事を終えたのはいいのだが、だるくて動けなくなってしまった。その時同じく夜勤をしていた先輩にとてつもなくだるくてしんどいことを伝えたのだが、先輩から「夜勤明けでだるいのなんていつものことだよ」と言われたのを覚えている。心の中では違うんだ、そういう次元じゃないだるさなんだと思いながら、言っても無駄だと思ってその気持ちは飲み込んだ。職場から自宅が近かったため、徒歩で帰宅してベッドに飛び込んで、だるすぎて泣いたことを覚えている。ただひたすらにだるかった。それは疲労とかいう種類のものではなく、病的なだるさだった。このしんどさが伝わらないもどかしさに私は泣いた。
しんどくて、どうしようもなくて、頭の中ではああこれがついに橋本病の症状ってやつなのかもしれないと思って不安で仕方がなかった。頼れる人はいなかった。自分が耐えるしかなかった。その日を境に私の症状は悪化していく。ここからが恐ろしい日々の始まりだった。
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