第2話専門医を訪ねて

 後日私は仕事場である大学病院の内分泌科というところを受診した。甲状腺というのは内分泌科なのである。多くの病院がそうであるが、糖尿病・内分泌・代謝内科という科に分類することが多く、受診する時には糖尿病などと同じ窓口となる。後に知ることになるのだが、甲状腺の専門病院は多くない。とても有名なのは原宿にある病院である。糖尿病の専門医が甲状腺専門医という看板も同時に掲げていることが多い。甲状腺というのは実にマニアックな分野なのである。今でこそいろんなところでちらほらと甲状腺専門病院という名前を目にするようになったが、本当に甲状腺を専門にしている病院、医師というのは限られるのだ。それに後々頭を抱えることになるのだが、それはまた別に述べることにする。

 受診した日は採血をして、結果を説明されて、次回の受診予約を取り、超音波の予約をするという淡々としたものだった。細々とした説明は省略するが、やはり甲状腺を扱う科の医師が診ても甲状腺が腫れているということだった。また、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、自己抗体の値から「橋本病」であるという結果だった。

 看護師でああった私はその病名だけは耳にしたことがあった。だが、実際にどんな症状が出るのかは知らなかった。私は専門書で、またはインターネットで橋本病について調べた。寒がり、汗をかかない、意欲減退、太る…などなど色々な症状はあるものの、その時の私は特に深刻には考えていなかった。また、本にもインターネットにも深刻なことは何一つ書かれていなかった。まさかこんな深刻なことになって、人生をこれに振り回されることになるなんてこの時の私は考えもしなかった。深刻なことになっていくのはもう少したってからだった。

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