第3話 この名前は内緒
「私は妖精でなく、一種のホムンクルスです。それでも『主人』でいて頂けますか」
「勿論だわ。ソゴスは 私の『使い魔』なのよ。何者であれ、貴女と言う存在が変わる事はないわ」
「ありがとう、エミ。これからも宜しく」
黒猫が頭を摺り寄せる。
それを撫でながら、少女は深刻気に言葉を紡ぐ。
「エミという名前は、とても大切な頂きモノなの。悪いけど、他の人達には内緒にしててね」
「分かりました。出来れば私の素性も ご内密に願います」
エミーリアは大きな勘違いをしている。
エミと言う名前は 侍女達全員が知っている。勿論、義父であるソーン侯爵も。
■■■
「これは?」
「読んでみて下さい」
エミーリアは渡された紙に記された文章を読んだ。
「えっと――
『薬は外用。アザトス、ヨグソトス、スブニグラ、ナルラト。
劇薬は内泌。クトル、ハスタ、タトガ、ウボスラ。
毒は抗体。ノデンス、バステト、ソムナス。
その他は、イス、ミーゴ、ソゴス』――あ、これが読み方なのね」
「はい、一番近い音を文字にしてみました」
猫が語る宇宙論と地球の創成期 芦苫うたり @Yutarey
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