幕間 ~満天の星空の下で~


 私とバーグさんはリクライニングチェアに並んで座り、満天の星空を眺めていた。

 頭上に広がるのは天の川。

 真っ黒い画用紙に銀色の砂粒をサッと蒔いたような、数えきれないほどの星々が見える。それらの小さな光が集まり、漆黒の夜空を大河のように流れている。


「都会にもこんなにたくさんの星が見える場所があるんですね」

「ああ。プラネタリウムだけどね」


 立ちこめるような人工の暗闇、ひんやりと冷房の効いた館内。

 ボリュームを絞ったスピーカーから静かに流れるのは星々の解説ストーリー

 プラネタリウムはいつだって最高だ。


「へぇ、織姫と彦星かぁ……なんかロマンチックですね」


 まるで私とバーグさんのようだ。

 永遠に触れ合うことのできない恋人たち。

 近くに見えても二人の間には悠久の時間と距離が横たわっている。


「いよいよ今日で最後ですね」

「ああ。最後のお題を決める日だね。この仕事は楽しかったかい?」


 わたしたちはお互いに星を見上げたまま会話を続ける。

 時折、流れ星がスクリーンを横切っては消えてゆく。

 人工の光では願い事もかなうかどうか。

 それでもちょっと祈りを捧げたくなる。


「ええ、すっごく楽しかったです! あたしの考えた一言で無数の物語が生まれていくんです。物語だけじゃなくてキャラクターも、作家さん同士の交流もがたくさん生まれているのを見ました」

「まるでこの星々みたいだよね」

「そうですね。小さな光が集まって大きな川になっていくんですよね」

「その小さな光の一つ一つに作家さんたちの『願い』や『夢』がこもっている」


「そうなんです! だからどの光もキラキラとして美しいんですよね」

「そんな光がたくさん集まるから、カクヨムってのはきれいで美しい場所なんだよね。そんな場所を作ってくれたのが編集長やバーグさんなんだよね」

「あたし、ほんとうにこのお仕事が大好きでした!」

「オレもこの空間が大好きなんだ、バーグさんたちが作ってくれたこの場所が」

「でもそれだけじゃダメなんです。たくさんの作家さんたちが集まってくれたからこそ、こんなに輝いているんです。改めてそれがよく分かりました」


 まったくもってその通りだと思う。

 なんかカクヨム最後の日みたいな話になってるけど。


「ところで最後のお題はもう決めたのかい?」

「ハイ。最後のお題は……【日記】にしようと思ってます」

「日記か……最後だからね、今はまだ考えつかないけど、きっといい作品を書くよ」


「はい! 頑張ってくださいなっ!」


 その言い方がなんとも懐かしかった。

 ちらりとバーグさんを見ると、頬が濡れていた。


 うん。これが最後なんて悲しいよね。


 そして私はすでに心を決めていた。

 


 だがまぁそれはさておき、先にやることがある。


 ということで書き上げたのが最終話『北乃家交換日記』である。

 これをアップすればカクヨムリワードが3000に到達する。


 あとはバーバラ編集長に私の望みを伝えるだけだった……

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る