幕間 ~キタコレ!~
「関川さん、麻雀出来るんですか?」
「いや、ほとんどできないけど?」
「でも書いてましたよね? 焼き鳥の意味とか知りませんでした」
「まぁ役を作るくらいはできるけどね。でも上手じゃなかったし、点数計算もいまだにできないよ」
今日は平日だが、私の働く『鮨道楽』は定休日、バーグさんも有給休暇を取っていた。ということで日当たりのいいリビングで、今日はのんびりと会話をしている。
「麻雀って面白いんですか?」
「うーん、ギャンブル全般だけどなんか独特の高揚感があるんだよね。読みが当たったときなんかは妙な興奮があるし、勝てばテンションも上がるし」
「あたし、ギャンブルはよく分からないんです」
「まぁ知らなくていいこともあるよ。ギャンブルもそう。それでなくても人生なんてギャンブルみたいなもんだからね。まぁオレものめりこむタチだから、ギャンブル全般には近づかないことにしてるんだよね」
と、窓のすぐ向こう側で鳥の鳴く声がした。
チチチと可愛い声で鳴いている。
「そういえば最近、近くに鳥が来るみたいだね?」
「たぶん向かいの家ですね。庭木のところによく集まってくるみたいです」
ほんと
こんな風にバーグさんと暮らす日が来るなんて思いもしなかった。ラブもコメもなくても、こんな風に平穏な日々があれば他には何もいらないな。
と、思った矢先だった。
「関川さん、このままでいいんですか?」
バーグさんが不意にそんなことを言った。
「なにが?」
「このまま、ブラックペッパー君の体にいていいんですか?」
「うーん、悪くはないと思っているよ。バーグさんとこうして暮らしているのはすごく幸せだしね」
「関川さん、思い出してください。私も元々は執筆支援AIだったんです。でもいまはこうして人間として生活できるようになったんです」
「そういえば……そうだよね」
「関川さんも同じ執筆AIです。ということは、あたしみたいに人の姿になれるって考えたことありませんか?」
あった。その可能性は考えていたのだ。
だがリスクがあまりに大きすぎた。
何のリスクか?
そんなもん、バーグちゃんと暮らせなくなるリスクに決まっている!
こんな可愛い子と一つ屋根の下だよ?
そんな奇跡ある?
ないよ。普通に考えたってありえない。
たとえそれがVRみたいなもんだって、自分が現実と考えるなら、それはもう現実と言っていい。それを失うくらいならこの姿のままでいい!
「ないね。オレはこのままで、この生活があれは満足だよ」
「関川さんならそう言うと思ってました。でも、実はもう準備はできてるんです」
「え?」
「だからKACですよ。すべてのお題を書き上げた時、なんとカクヨムリワードが800も入るんです!」
「なんか微妙に現実的な話になってきたな」
「現実です。そしてリワードを『3000』集めれば、バーバラ編集長が何でも望みをかなえてくれるんです!」
いやいやいや、そんな甘い話あるわけないでしょう?
ドラ○ンボールじゃあるまいしさ。
しかも相手はあのバーバラ編集長だよ?
「KACもじきに終わります。だから絶対完走してください! そして人間の体を手に入れてください! そうしたら……」
「そうしたら?」
「……あたしを迎えに来てください……」
バーグさんはそう言ってポッと頬を赤らめた。
キタコレ! 来たよコレ!
これぞまさにラブコメのゴールじゃないか!
にわかには信じがたい話ではあるが、なに、完走するくらいできるだろう。
「分かったよ、バーグちゃん」
わたしはちょっとカッコつけてクールに答える。
「……お題はキミが決めている。次こそは書きやすいものを頼むよ」
「ハイ! 実はもう考えてあるんです。次のお題は【出会いと別れ】です、これなら書きやすいと思うんです! だから、頑張ってくださいなっ!」
「お、おう」
「じゃ、これから接待に行ってきます! 今日は奥森先生の接待なんです!」
「え? 接待? それもバーグさんの仕事なの?」
「ハイ。奥森先生、美味しいものをごちそうするとなんでも書いてくれるんです! ま、あたしも先生に会うの楽しみなんですけどね」
「まぁ気を付けていっておいで。オレはまぁ、次の作品書いて待ってるよ」
ということで書き上げたのが続く『軒先の出会いと別れ』である。
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