幕間 ~編集長からのお中元~

 やっと投稿を終えたのが金曜日の深夜。

 肩はバキバキだし、脳も痺れたように疲れ切っていた。

 だが今週末は久しぶりの連休だった。

 仕事の予定も、もちろん執筆の予定もない、久しぶりのオフだった。


 後は眠るだけ、というところで玄関のチャイムが鳴らされた。


「だれだろう? こんな時間に」


 だが私の部屋を訪れるような人間は誰もいないはずだった。

 いるとすれば黒猫になった『ミドリさん』くらいのはずだ。


 ひょっとしてミドリさん、黒猫から人間に戻ったんじゃ?


「こんばんはー、お届け物でーす」


 残念。

 だった。


「こちらにサインか印鑑をお願いします」


 届いたのはクール便。発泡スチロールに入っている。

 しかも時間指定までちゃんとしてあった。夜中だけど。

  

 部屋に戻って荷物を確認すると、差出人はバーバラ編集長。

 中身は『プレミアモルツご当地バラエティーセット』となっている。

 しかもクール便で送ってくれたから中身は冷え冷えだ。


 箱を開けると一枚のメッセージカード。


「関川先生、執筆おつかれさまです! 冷えたビールでも飲んでゆっくり休んでくださいね byバーバラ」


 バーバラ編集長、すごくいい人じゃないか!

 わたしはどうやら誤解してたようだった。

 きれいな字で書かれたメモからは誠意がじかに伝わってくる。

 その細やかな心づかいの数々には感動すら覚える。


 さらにもう一枚のカードがひらりと落ちた。


『直観』


 この展開にも慣れてきた。

 どうやらこれが次のお題らしい。


「あれ? 誤字かな?」


 普通なら『』だろう。勘とかそういう意味の。

 そもそもこの『』なんて言葉あるのだろうか?


 ……調べてみたら、あった。ちゃんと意味もある。


 これは参加者のみんなも悩まされてるだろうなぁ。


「というか、なにをテーマにすればいいか、なにを書いていいのか、さっっっぱり分からんな」


 私はビールの一本を取り出し、プシュッと栓を空けた。 


「まぁ時間はあるか……」



 余裕ってやっぱり大事。

 正直やたら難易度の高いお題だった。

 だが、自分でも意外なことに、ちょっとヒネッたいい作品が書けたのである。


 それが続く『女の直感? 北乃家崩壊の危機!』である。


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