幕間 ~もう後には引けないよなぁ~


「またコメディーに走りましたね、関川サン」

 画面に映るバーグさんは完璧なCGへと変化していた!

 まつ毛の一本一本、あるかなきかの風にそよぐ髪の再現も完璧。

 写実的でありながら、しっかりとアニメっぽさが残っているのもすごい。


「……ん? どうかしましたか?」

 くりっとした上目遣いでじっと見つめてくる。


「いや、ついにここまで来たなぁとおもって」

「あ! この姿ですね! かわいいでしょう?」


「ん。うん、なんかいい感じみたい」

 なんだか照れてしまう。

 いや、単純にこういうシチュエーションは苦手なのだ。

 それにCG化したバーグさんは実際すごく可愛かったのだ。


「そうそう、今回はコメディーで通してみたんだよね」

「最初は熱血スポーツものかと思ってたんですよ」

「うん、そこはミスリードを意識して書いてみたんだよね、難しかったけれど」

「すっかり騙されましたよ、オチの脱力感がすごかったです」


 珍しくバーグさんに褒められている気がする。

「バーグさんはコメディが好きなの?」

「あたしですか? あたしは物語は何でも好きですよ。ということで次のお題の時間です」

「そうだったね。で、次のテーマは?」

「ずばり【最高の目覚め】です」


 また微妙なお題を出してきたなぁ……


「しかも、そこにカタルシスがあることです!」

 ニッコリ笑って、無理難題を追加するバーグさん。


 ああ、分かってる。

 バーグさんが問題を出しているわけではない。

 彼女は伝えているだけなのだ……


 だがなんだってまたそんなお題……カタルシスってまた無茶な。

 もう、アレでしょう?

 中二の主人公が教室の居眠りから目覚めて「良かった、世界は滅んでいなかった……」的な。


 だが『ムリ』というのは、もうやめだ。

 ここまで来たんだから最後までやらねばならない。


 でもちょっと今日は考えがまとまらない。

「バーグさん、今日はとりあえず寝ることにするよ、目覚めたらなんかいいアイデアが湧くかもしれないからね」

「偉いです、関川サン。それじゃ今日はゆっくり寝てくださいなっ」


 そして、翌朝目覚めた私に、朝陽と共に一つの物語が降りてきた……


 と書きたいところだけれど、実はめちゃめちゃ眠れないほど考えた。

 そして寝不足の最悪の目覚めとともに生み出されたのが第7作目。


『北乃君の最高の目覚めの話』


 書き上げたというカタルシスだけはあった……

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