幕間 ~関川、風邪をひく~

「さて、バーグさんは読んでくれたかな? 三話目」


 私はちょっとドキドキしながらパソコンのスイッチをいれた。

 この間はバーグさんはしっかりとアニメになっていた。

 声も可愛いし、なんだか恋人にでも会いに行くような気分。


 が……


「ナントカ キリヌケマシタネ セキカワサン」


 なんともマシンっぽい感じの声。

 現れたのはカクカクのポリゴン姿のバーグさんだった。

 なんか技術は上がってるんだろうけど、表現が退化しているような……


「なんとか書き上げたよ。思えばキミのヒントが良かったみたい」

「エッヘン ソウデショウ ナントイッテモ シッピツシエンエーアイデスカラ」


 どうにも違和感がぬぐえないが、まぁ気にしない方がいいだろう。


「そうそう、北乃家に「三奈」って娘を作ったんだ。それと義理のお母さん「ハナ」さんも登場させたんだ」

「キタノサンハ オムコサン ナノデスカ?」

「そこまでは考えてないんだよね、行き当たりばったりだからね」

「セキカワサン ラシイデスネ フフフ」


 まぁこれで家族も増やしたし、ちょっとは話も作りやすくなるはず。

 それに困ったらまたキャラクターを作り出せばいいのだ。


「デハ ツギノ オダイデス」

「そうだったね、今度はなにかな? 少し書きやすいのにして欲しいよ」


「オダイハ 【カミ ペン マルマル】デス」


 やっぱり容赦ない。

 というか出題者の思考がまったく読めない。


?」


 と、ポリゴンのバーグさんが指を一本立てて唇に当てた。

 さらにあのポーズ、片足をぴょんと上げて、パチリとウィンクしてみせた。

「ソレハ ヒミツ」

 きっと可愛いのだろう。でも画像が荒すぎて今一つのめりこめない……


 一昔前のCGなんてのはこんなものだったし、当時は感動すらしたものだけれど。

 一度進んだ人間の感性というのは、なかなか昔には戻れないのだ。


 まぁ、いい。時間はある。

 休みも一日あるから余裕だろう。


 紙とペン、それからムニャムニャだな。

 シチュエーションラブコメに比べればハードルは低い。


「まぁなんか考えてみるよ……フ、フェックション!」


 あれ。なんかくしゃみが出た。

 そういえばここのトコ、仕事がハードだったからなぁ。

 ちょっと疲れが出てきたのかもしれない。


「カゼガハヤッテイル ソウデス オダイジニ シテクダサイナッ」

「うん。たぶん風邪じゃないよ。疲れただけ」


 


 だが……なんとこの後、私は本格的に風邪をひくのである。

 それもしっかり熱まで出して、丸二日ほどを寝て過ごす羽目になるのである。


 つくづく思う。

 どんな小説、物語だって、簡単に出来上がる作品なんてないのだ。


 そして病み上がりのきついコンディションの中、何とか書きあげたのが続く四作目。タイトルは『紙とペンと……パニックの話』。 

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