幕間 ~バーグさんとの語らい~

「こんばんは! 読みましたよ、フクロウの話」


 パソコンを立ち上げると同時にバーグさんの声がした。

 同時に画面いっぱいに彼女のイラストが展開した。

 なんだか存在感が増しているが、まぁイラストが拡大しただけだろう。


「まぁ、二時間で書けるのはアレくらいが限度かな」

「短いけれど、なかなか面白かったですよ。まぁ肩慣らしですよね」


「そんなことないよ。今だせる全力投球」

「それなら、さらなるレベルアップのために次のお題が必要ですね!」


……レベルアップ。魅力的だがどうにも胡散臭いキーワードでもある。

 そもそもそんな簡単にレベルアップなんかできるものだろうか?

 まぁ短編はこれまで書いてこなかったから、ちょっと楽しかったけど。


「で、次のお題って?」

「ずばり【二番目】がテーマです」


「またなんか変なお題だな……」

「そこはまぁ、あまり深く考えないようにしましょうよ」


「だって執筆支援が目的なら、なにか方向性くらい……」

「そ、それは……たぶん……フリーダム、そうフリーダムですよっ!」


「自由ってこと?」

「そうです! 執筆とは自由なモノ、想像力を自由に羽ばたかせるのですっ!」


 バーグさんはまるで天使のように、どこか斜め上の方向に手を合わせた。

 まぁ一理ある。

 一理あるけれど、そもそもがオカシイ。

 どこがおかしいかといえば。


「だったらそのお題は自由の枷にしかならないよね?」


 バーグさんのイラスト、そのネガとポジが反転した。

 ちょっと懐かしい表現方法でもある。


「しかし、なんともアイデアが浮かばないんだよな……二番目……ナンバーツーの良さとか悲哀みたいなものを期待してるんだろうけど……」

「きっとなにか思い浮かびますよ! 頑張ってくださいなっ!」


 バーグさんはなんだか逃げるように、慌ただしく消えてしまった。


 そして私はそこから延々と二番目について考えることになる。

 二番目のポジションならではの個性的なキャラクターがいいだろう。

 それを生かすのはどんなジャンルだろう?

 ファンタジー? 現代ドラマ? ラブコメ? ホラー?


 そして考えに考え続け、時間が無くなってきて、とうとう別方向に舵を切ることになる。

 具体的には『二番目が重要であればいい』という拡大解釈にたどり着くのである。


 それが続く二作目『二番目を狙う夫婦の話』である。


 しかも私はここで連作短編を作ることを早々に決めた!

 これならいろいろと話や舞台やキャラクターを作らないで済む!

『モノノ怪クリニック』で試した手法でもあるから、少しは慣れもある。


 これは我ながら完璧なアイデアだと思った。


 だがやがて(厳密には第三回目で)、このアイデアが一番大きな枷となって私に襲いかかるのである……

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