ただキミを幸せにする為の物語 －SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでＳＳランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます－

31 試験終了

「っしゃあ！　これでアリサちゃんＳＳランクっすよ！」

「絶対やるって思ってたけど、やっぱアリサすげえわ。なんかほんと……凄かったな」

　最後のＳＳランクのテスト。

　端から見てる感じだと、ドラゴンの攻撃は正直色々と無茶苦茶で。このテストの悪いところが全部詰まったような内容で。

　正直初見じゃどうにもならないんじゃないかとも思ったけど、アリサはその全てを悠々と躱していた。

　そして的確に攻撃して勝利を掴み取る。

　あまりに鮮やかな動きで……ほんと、それを見せられると少しでも隣に立っていて恥ずかしくないよう実力を付けなければならないと思う。

「……あ」

　俺がそんな風に考えていた所で、先程と同じく語るまでも無いとばかりに無言で腕を組み頷いていたグレンが、何かに気付いたように声を上げる。

「ん？　どうした？」

「なんかあったっすか？」

「あ、いや……俺もアリサすげえなって思いながら見てたんだけどさ、今になって結構とんでもねえ事に気付いてよ」

「とんでもない事？」

　俺が聞き返すと、少々言いにくそうな感じでグレンが言う。

「俺Ｓランクのテストが始まる時に、お前にちゃんと見とけって言ったよな？　怪我完治したらテスト受けさせられるだろうからって」

「ん？　ああ、だからちゃんと見てたぞ。正直厳しいだろうけど、うまくやらねえとな」

「ああ、その様子だと気付いていねえみたいだな」

「気付くって何に……リーナはなんか分かるか？」

「いや、私も分かんないっすよ……あ」

　そしてリーナも何かに気付いたようにそう声を上げる。

「リーナも気付いたか」

「これは……ちょっと言いにくいっすね」

「あの、俺全く分かんねえから教えてくれね？」

「……分かった」

　グレンは一拍空けてから言う。

「クルージ。お前がテストを受けんのは、Ｓランクが逆に高すぎるんじゃないかって理由からだろ？　だけど冷静に考えてＳランクの奴がＳランクの昇格テスト受けんのはおかしいだろ。現状維持の為にテスト受けるなんて事はまずねえ筈だからな」

「……」

　俺もなんとなく言いたいことが理解できて来た。

「つまり……俺、今のドラゴンと戦わねえといけねえの？」

「もしくはそれに準ずる無茶苦茶な何かだな」

「ご、ご愁傷様っす……」

「えぇ……」

　そんなのお前……俺絶対瞬殺されるじゃん。

　Ｓランクは難しいけどもしかしたらって思えてたけど、これは完全に投身自殺じゃね？

　……あーうん。それは無理だ。

「リーナ」

「な、なんすか」

「正直、このテストで攻撃喰らって気絶するのってどんな気分だった？」

「……お、思い出したくないっす。聞かないでください」

「こ、これはどっちだ……マジでそんなにヤバいのか？　それともふざけてるだけなのか？

「う……ッ！」

　不快な事を思い出して吐き気を催したようにリーナが口元に手を当てる。

「ちょっと待って……これマジでどっちだ！」

「さあどっちっすかね！　当ててみてほしいっすよ！」

「あ、これは大丈夫な奴だな」

　脅かしやがって、マジでびっくりした。

「正解っす。思い出して吐き気を催す程の物じゃないっすよ」

「だよな。それならちょっと安心だ」

「でも死ぬ程痛いんで、覚悟はしといた方がいいっすよ」

「ちょっと待てこれはどっちだ！？」

　……駄目だ。なんか考えたくなくなってきた。

「ま、良いよ別に。俺無傷で勝つから」

「教えてやれよリーナ。クルージの奴現実逃避始めたぞ」

「現実逃避だけど指摘すんのやめてくれねえかな！？」

「あ、先輩！　一応言っとくと痛くは無かったっすよ。ただ凄い不快感が有った位で……」

「け、結局あんまり受けたくない事に変わりはねえ……」

　……まあとにかく。

　俺の事は完全に後日の話だから、これ以上此処でしていても仕方が無くて。

「さてと……今度は現実逃避とかって訳じゃねえんだけど、マジでそろそろアリサ迎えに行こうぜ」

「そうだな。次も誰か出てくるかもしれねえけど興味ねえし」

「そうっすね。そうと決まれば出待ちするっすよ！」

　そうして途中現実逃避を挟みながらも観戦を終えた俺達は、アリサの元へと向かう事にした。