22 ウォーミングアップ
「グレンさんどこまで行けますかね」
「お前らが武器取りに行ってる間に話した感じだと多分B。目標Aって所だったな」
「……絶妙な所突いてるっすね。まあとにかく、行ける所まで頑張れって事で。応援してくっすよ」
「まああまり恥ずかしくない程度でな」
「ある程度周りのテンションに合わせながら応援していきましょう」
「いや別に私もバカ騒ぎするつもりはないっすよ……?」
うん、多分お前節度とかしっかり守るからな。知ってる。
そしてそんなやり取りを交わしながらしばらく待っていると、グレンが姿を現した。
「来ましたね」
「こっち見ないっすね」
「集中してんだろ集中」
円状の観覧席の中心にあるフィールドに現れたグレンは集中してるのか俺達の方に視線を向けたりはしない。
多分俺ならしてたわ……いやしねえか、俺の場合超高確率でランク下げる戦いになる訳だし。
そしてグレンを待ち構えるのはギルド職員の制服を着ていない四十代程の男。
……説明によると今回の監査の結果送られてきた外部の公的機関の魔術師らしい。
彼がこのテストの相手役となる訳だ。
とはいえ直接戦う訳ではない。そんな事をすればどちらかに死人が出てもおかしくはなくて、そうでなくとも怪我人が続出。もう色々と本末転倒な事になってしまう。
そこで彼が扱うのは幻術だ。
実体はあるがダメージは肉体ではなく精神的なダメージに変換される。そういう術式。
そういう術式で魔物の再現と、弾き飛ばされたりした際結局床に体を叩きつけられたりすれば大怪我をするので、床と壁に同じような加工を施す。
彼はそれこそその術式でSSランクのテストも取り行えるのだから、正直無茶苦茶高度であまりに都合良く見える術式に思える。
だけどまあ実際の所はそこまで無茶苦茶な術式ではない。
術者と相手。双方がその術式の効力を事前の合意の元受け入れる事で初めて効果を齎すという縛りを化した、実践ではほぼ使えない都合の悪い術式だ。
それ故にそれだけの自由度を誇る。
そんな術者はグレンが定位置に立ったのを見ると、早速幻術を出現させる。
現れたのは小型のゴブリン。
現在ランク無し。実質のFランクのグレンはまず最初にEランクになる為の試験を受ける訳だ。
これで敗北すればFランクスタート。
だけどグレンがこんな所でつまずぐ訳が無くて。
開始の合図が鳴った次の瞬間にはゴブリンの目の前に接近し、何もさせないまま手にしたハンマーを叩きつけ、壁にまで弾き飛ばす。
……こんなのはマジでウォーミングアップにしかならない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます