23 大型新人
……さて、今の一体のゴブリンを倒した所でEランクのテストが終わるのかと言われれば、流石にそこまで単純で簡単なテストでもなくて。
それが入り口。
今度は複数体のゴブリンがグレンの周囲に出現……とはいえ別にグレンが苦戦するような相手ではないという事は変わらなくて。
数秒。数秒で危なげなく殲滅。
Eランクの試験はこれにて終了となる。
「おい、すげえなあの新人」
「パワーも滅茶苦茶だし、フィジカルも中々……」
聞こえてくる周囲の声に、俺達三人は黙って頷く。
まだEランク。その程度の相手しか用意されてはいない訳だが、それでも動きである程度実力は察する事が出来るわけで……まあ、ざわつく。
グレンの力はギルドの中でも間違いなく上位層ではある訳で、大型新人な訳だから。
それが分かってくれば騒ぐ。
まあ騒いでも俺の親友は俺達のパーティなんで。
「先輩、ドヤってますね」
「そりゃドヤるわ」
やっぱ親友が良い意味で注目を浴びるのは気持ちがいいなぁ!
「まあこっからだ。まだまだ序の口って所を見せつけてやって欲しい」
……さて、Eランクのテストが終わった訳だが、ここからDランクのテストを受けるのかと言われれば必ずしもそうではないらしい。
今のでグレンのある程度の実力は把握できた筈で、それを踏まえた上で次に受けるテストをどのレベルの物にするかを決定する事になる。
一つ一つ上げると時間も掛かる上に、それだけ受ける側も体力や魔力を消費するので当然と言えば当然の事だろう。
それで例えばグレンが次に挑戦するのがBランクの試験になった場合、成功すれば晴れてBランク。失敗すればBランクの依頼での動きを見た上でランクが決められる。
ちなみに成功して本人が望めば次のランクにも挑めるらしいが、一人一回という制約上連戦になってしまう訳で……体力や魔力の配慮がこの辺りで全くできていない辺り、この新しい査定システムもまた結構ガバガバなのだと言える。
そしてフィールドに入り魔術師の人とグレンと何かしらの確認の様な会話をしていた係の人が、俺達観覧席の人間に向けて言う。
「えー次。Bランクのテストになりまーす」
大体予想通り。
そして此処からがある程度本番と言えるテストになるだろう。
今の動きを見て、適正とされるレベルが選択されたのだから。
……とはいえある程度だ。
まだ魔術も何も使っていない素でBランクが選択されたのだから、現実的にAランクも狙えるだろう。
だからまず此処が通過点。
そしてその通過点の敵がこれだ。
「でけえな」
現れたのは身長三メートル半近い人型の化物。
その巨体に見合った巨大な棍棒を手にしていて、まともに一発食らったら実践だと死にそうな気がする。
「でかいですね……なんですかねあの魔物。見た事ないですけど」
「いやー、あんなの実際に居るのかは分かんないっすよ? あくまで幻術で……言ってしまえばあの魔術師の人のデザインセンスの結果があれなんだと思うっす。さっきのゴブリンも実際のとは割と違う感じしたっすから」
そう言ったリーナは多少血の気の引いたような表情で言う。
「もし……もしっすよ。私が運良くBランクまで行けるような事がもしあったら……私もあの化物とタイマン張らないといけないんすか?」
「アレと全く同じの出て来るかはともかく、直接戦闘をやる時点でアレと同格の奴出て来るんじゃねえかな」
「えぇ……」
「ま、まあグレンの番終わったら軽く作戦会議しような作戦会議」
「そうですね。……というか今更なんですけど、そもそも前衛と後衛の人の試験内容同じな時点で、結構無茶苦茶ですよねこの試験」
「……より一層ギルド職員さん達に同情してくるわ」
「そうっすね……」
……もう、ほんと無茶苦茶。
とはいえ前衛のグレンにとっては割と適切な試験なのだろう。
適切で、そして……まだ通過点の筈だ。
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