11 頼られたので頑張ろうか……
「着いたぞ、此処が俺の工房兼自宅だ」
「うわ……外観だけでも、結構立派なの分かるな……」
「中の工房もすげえ良い感じでな、実家の工房で満足できるレベルなのにそれよりも一段良い感じ。加えて今はまだ活用できそうにねえけど、打った刀売れるような小さめの店舗スペースもある。超超超超優良物件だ」
「優良……ですか」
「いやまあ優良っすよ、この立地条件でそれだけ立派な場所を安く借りられたんなら……色々な事に目を瞑れば」
「いやさ、お前ら言いたい事は分かるんだけど、そう警戒すんな。俺がしばらく住んで全く害が無かったんだから、大丈夫だって」
そう言ってグレンは扉を開けて中へ。
「じゃあ上がってくれ。茶位は出すぜ」
「お、おう……」
グレンには悪いがあまり長居したくねえなぁ。
……まあとりあえず入ろう。
入るしかねえし。
「じゃあえーっと……お邪魔します」
「お邪魔するっす」
「おじゃま……」
各々そう言って入り口に足を踏み入れた所で、アリサだけが何か感づいたように立ち止まって押し黙る。
「……ど、どうしたっすかアリサちゃん」
「……なんかあったか?」
リーナと俺が小声で確認すると、アリサはやや真剣な表情で言う。
「……気を付けてください。多分……うまくは言えないし、言いたくもないんですけど……何かいます」
「……マジっすか?」
「……マジ……な気がします」
「マジかぁ……」
なんかこう……アリサも見えたりはしてないんだろうし、確信も持ててないようだけど、アリサがそういう事を言い出すと……なんかこう……マジな気しかしない。
……俺達は本当にこのまま先へと進んでもいいのか!?
「どした? 一応言っとくけど、この辺は土足OKだからな?」
「お、おう、了解」
進まねえといけねえんだよなぁ。
「……気を付けていきましょう」
「……ああ」
「……了解っす」
そして俺達は進み出す。
……いや、俺だけだ。
「あのー二人共?」
俺だけが一歩先に進んだ感じで、二人と足並みが揃わない。
なんか二人して俺の服の裾掴んで立ち止まってるんだが。
「あ、いや……普通に怖くて」
「……同じくっす」
「……」
ど、どうやら俺がしっかりしないといけないみたいだ……。
い、いや、でも俺も無茶苦茶怖いんだが……いや、頑張れ俺!
なんか頼られてる感あるし……普段言いたくないが頼りないんだから!
頑張れる所は頑張るんだよ!
「ま、任せろ!」
だ、大丈夫か? 声震えてないか?
「おいお前ら、なんでそんな所で突っ立ってんだ。早く来いよ」
「お、おう」
で、お前はなんでそんなに平然としてんだよグレン……俺親友なのにお前の事がちょっと分からなくなってきたよ……。
親友に対してそんな事を考えながら、俺達は今度こそグレンの工房の中へと足取りを進めた。
……進みたくねぇ。
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