60 内緒の話

 買い物から帰って来たリーナは早速調理に取りかかり出した。


「リーナさん、何か手伝う事ありますか?」


「じゃあ食後にまた皿洗いとか頼んでいいっすか?」


「わ、分かりました……じゃあそれで」


「まあ近々アリサちゃんはキッチンに立てるようになる予定なんで、今度は違う事頼むっすよ」


「は、はい!」


 そんな風にアリサが曇ったり明るくなったりする中、リーナに聞いてみる。


「ちなみに何作るんだ?」


「ハンバーグっす。お肉食べて明日に備えるっすよ」


「おー」


 ハンバーグもイメージ的に結構料理の力量差が出る品な気がする。

 だけどそこは信頼感が違う。絶対美味いのが出てくるであろう確信がある。楽しみ過ぎてヤバイ。


「まあとにかく三人はくつろいでるっすよ。特に先輩。無理に動かない方が良いっすから。先輩は皿洗いも免除って事で」


「わ、悪いな」


「いえいえっす」


 そう言うリーナにキッチンを任せて俺達はお言葉に甘えてリビングでくつろぐ事にした。

 した……のだが、グレンが俺達にしか聞こえないような小さな声で言う。


「……クルージ。アリサ。話がある。ちょっと工房まで来てくれるか?」


「……え、どしたこんな小声で……何? リーナに聞こえちゃマズイような話か?」


「……まああまり聞かれない方がいい話だな」


「……もしかして買い物行ってる時に何かあったんですか?」


「……とりあえず何もなかった。あったのはそれより少し前だよ。まあとにかく頼むわ」


「……はい」


「……分かった」


 グレンが何を言いたいのかは分からないが、割と真剣な表情を浮かべている辺り真面目な話ではあるのだろう。

 それをアリサも感じ取ったのか頷いていた。

 だけどまあ、何も言わないで部屋を空けてくのもおかしい気がするから。


「……じゃあとりあえず適当に理由付けて行くか」


「……そうですね」


「……じゃあ俺が適当に」


 そう言ったグレンはリーナに言う。


「リーナ。すぐ戻るけどちょっと二人工房に借りてくわ」


「どしたんすか?」


 キッチンから顔を出すリーナにグレンは言う。


「ちょっと明日の下準備をな。皆今日は疲れただろうし早く寝てえだろ。少しでも進めとく」


「あーなるほど。あ、でも先輩酷使しちゃ駄目っすよ」


「分かってる」


「酷使されようにも、俺多分何もできねえからな今」


「分かってるなら良いっすよ。じゃあそっちはよろしくっす」


「じゃあちょっと行ってきますね」


 そう言って俺達はリビングを後にしてグレンの工房へと向かう。


「疑いも無くあっさり行けたな」


「まあ完全に嘘にしない為にも、軽くは何かやっておこうぜ……まあお前準備って言ってたけど、あえて攻防で準備するようなものってあるか?」


「まあ一応な。ついでにそっちも少し進めるとして……まあ、先に本題だ」


 工房に入り扉を閉めたグレンは言う。


「リーナの事で俺なりにいくつか気付いた事がある。そんでそれは、多分お前らは頭に入れておいた方が良いような話だ。そういう話をお前らにしようと思う」


 そんな、俺達がつい先程していた話を掘り下げて行くように。

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