ex お互い様
グレンが出ていった後、アリサとリーナはクルージが起きるのをただ待つこ事にした。
それしかする事がなかったし、それ以外の事をしようとも思えなかった。
そんな酷く沈んだ空気の中で、アリサがポツリと言う。
「……ボク、言ったんですよ。クルージさんにこの依頼は受けた方が良いって。正直、どこか楽観的に考えてたのかもしれません」
クルージが抱えている物を、あの墓地で知った。
だからこそ。きっとこの依頼をこなす事は、クルージを少しでも立ち直らせる為にはいい機会だと思って。そう思って少し背中を押したつもりだった。
だけど結果的に多分、クルージとこの村の人間との間に開いた溝は修復不能な程に大きくて。どう考えても修復できるとは思えなくて。
だから実質的に、崖の底に突き落としたようにも感じられて。
結果論でしかないのだけれど、それでも無理矢理にでも止めておくべきだったと、戦いの中での行動以前からの自分の言動に後悔しか沸いてこない。
そんなアリサにリーナは言う。
「……あんまり思い詰めないで欲しいっすよ。少なくともアリサちゃんや先輩にグレンさんは何も悪くない筈なんすから」
「……それならリーナさんもですよね」
「ははは、そう言ってくれると気が楽っすね……」
そんな風に苦笑を浮かべたリーナは、一拍空けてからアリサに問いかける。
「そういえばアリサちゃん。そういえばあの時、先輩に受けた方が言いっていったのって、なんか特別な理由とかあったんすかね? 先輩にしても、ただ自分の故郷だからって理由で動いてるようには見えなかったんすけど」
「あーえーっと……そうですね……」
事の詳細はクルージにとってはあまり人に知られたくない事なのかもしれないと思ってアリサは言葉を詰まらせるが、どうやらその反応をアリサは少し勘違いして受け取ったようで、慌てて言う。
「あ、いや、アリサちゃん! 別に傷を抉るとか、そんなつもりは無かったっすからね!? ほら、普通に
気になっただけで……」
先程まさに思い詰めていた事だった事そのものだったからだろう。リーナは自分の問いでアリサの傷を抉ったのではないかと心配してくれたらしい。
だけどそうではなくて。
「大丈夫ですよリーナさん。別にそれは大丈夫なんで……ただクルージさん的にはこの話あんまり人にしてほしくないんじゃないかなーって思って」
「あー、そういう事っすか」
リーナはどこか安心したように息を付いた後、一拍空けてから言う。
「まあそういう事ならしゃーないっすね……アリサちゃんがそう言うならほんと、人に言わない方が良い事なのかもしれないっすから。別にいいっすよ言わなくて」
リーナは気を使うようにそう言う。
だけど……本当にそれでいいのだろうか?
……少なくとも悪くはないだろう。実際第三者である自分が気軽に誰かに話していいような話ではないから。
だけどきっと、あの事をリーナは。
クルージの周りにいる繋がりが強い人間は知っておくべきだと思った。
そうすれば……きっと、クルージがもしもの時に、何か適切な言葉を掛けられるかもしれない。
自分がそれをできるのかは分からないけれど、少なくともできるかもしれない人が増えるかもしれない。
だとしたら、話すべきなのかもしれないって、そう思う。
「……いや、聞いて貰ってもいいですか? 多分リーナさんには知っておいてくれた方が良いかなとも思うんで」
「いいんすか?」
「……たぶんそれが一番いいです。それに、以前クルージさんもボクが隠してた事、リーナさんに喋っちゃいましたからね。お互い様って事で」
「なるほど。確かにお互い様っすね」
そう言ってリーナは微かに笑みを浮かべた後、アリサに聞いた。
「それで、先輩は一体何を抱えてるんすか?」
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