15 出現ポイント 下
そう言ったグレンは一拍空けてから言う。
「他の所でも魔獣が出現しまくってる所を見ると……ましてや一度処理した所でもってなると、正直自然現象なのかも怪しい所だと思うんだ」
「それってつまり……人為的に起きてる事件だって言いたいのか?」
「その可能性も俺はあると思ってる」
真剣な表情を浮かべてグレンは言う。
「そもそも前提条件として場に漂う瘴気を止めれば魔獣の繁殖は止まるって事にしてるけど、知っての通りあくまでそれはそういう説があるってだけだ。実際の所がどうなのかという生物学的な確証は取れてねえ。だけど実際にそれで毎回止まってんだから大体は合ってると思って間違いねえと思うんだ」
それでも、とグレンは言う。
「イレギュラーは起こる。そういう今まで通りのやり方でどうにもならねえって事は普通に起こり得る可能性がある事だ」
だけど、とグレンは言う。
「イレギュラーってのは本来起きねえからこそイレギュラーなんだ。特に生物学的な話になれば正直起きるより起こされる可能性の方が高いと思う。ましてや魔獣の発生っていうそれそのものがイレギュラーな現象が、なんの前触れもなくそこら中でおきまくってんだ。考えれば考える程、俺にはこの国の魔獣騒動が人為的に起こされたものなんじゃないかって思うよ」
「……」
思うに、グレンという俺の親友は地頭が良い。
何か細かな事によく気付くし、洞察力も少なくとも俺よりは優れていると言える。
そんなグレンがそう言うのなら……確かにそうかもしれないと思う自分がいた。
……だけどだとすれば腑に落ちない事がある。
「でもそうする事になんのメリットがある?」
仮にそれが人為的に行われたものだとしても、そういう犯行に及ぶだけの行動理由。メリットが浮かんでこない。
ましてやこれだけの規模で起きている事だ。一個人の犯行とは考えにくい事を考えると……適当なしょうもないいたずらという様な理由ではないだろう。
それに関してグレンは言う。
「さあな。知らねえよんな事」
そんな当然と言えば当然な事をグレンは言う。
「まあそうだよな」
「まあ意味の分からない事件ってのは、基本的に犯人の動機も理解できねえ。サイコパスみてえな発想してなきゃ後はソイツのエゴだ。本人以外が考えられる物じゃねえよ」
そう言ったグレンは、まあとにかくと話を纏める。
「そんな訳でさっき言った通りだ。その辺周り、お前らと魔獣どうにかした後そのまま探ってみる」
「探ってみる……か。その場に何かあったとして、俺達だけでどうにかなるか?」
専門的な知識が居る様な事ならば、この場にその専門家はいない。
……いや、なんかリーナがしれっと知ってそうな気もしなくもないけど。
と、そんな事を考えていた所でグレンが言う。
「いや、俺達じゃねえ。俺だ」
「一人?」
「魔獣の討伐までがギルドに出した依頼だ。そして出せる報酬もそこまでの奴まで。こっから先は依頼外の話だ」
「いやいやいや、待て待て。グレンストップ」
俺はグレンに思わず言う。
「馬鹿かよ。普通に考えてダチがそんな事言ってて、じゃあ頑張れって話終わらせられっかよ」
「……クルージ」
「つーか村の問題なら俺の問題でもある訳だしお前だけにやらせる理由がねえ。金なんていらねえし手伝うよ」
だから、と俺はグレンに言う。
「俺達二人でやる」
「「いやそれはそれでおかしい!」」
俺の発言に二人からツッコミが入った。
いやーだってさ。
「一応仕事外であぶねえかもしれねえ事やるんだぞ? 何もおかしくねえだろ」
「いやまあそりゃ確かにそうかもしれないですけど……でもほら、乗りかかった船って奴ですよ。それに危ない事するからこそ少しでも戦力いりませんか?」
「そうっすよ。危ないかもしれないって言ってるのに、ウチの圧倒的エースのアリサちゃん抜いてどうすんすか! 先輩一人じゃなんか不安っすよ! 私達も行くっす」
「……ッ!?」
イカンイカン言葉が心臓に突きささるぅ! 悪気は絶対無いんだろうけど突き刺さるぅ!
「り、リーナさん! オブラート。もうちょっとオブラート包んでください!」
オブラート包めってお前……それ包まないといけないって分かってる時点で……。
いや、うん。凄く気を使ってるだけだな。そういう事そういう事。
……マジでもっとがんばろ。
……まあとにかくだ。
「そんな訳で俺達は三人共協力するつもりでいるんだけど……どうだ?」
「……まあ正直手伝ってもらえるなら手伝って貰った方が助かるわな。つーかまあよく考えてみれば俺やラーンの村で完結する話じゃ無さそうだし……じゃあよろしく頼むわ」
こうして、俺達のやるべき事が追加された。
ラーンの村の防衛。
神樹の森での魔獣の討伐。
そして……このイレギュラーな事態の原因を探る。
この三つだ
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