13 出現ポイント 上
「それで今、村の方はどうなってんだ?」
受付嬢さんが応接室を退出した後、俺達はソファーに座り改めて依頼の打ち合わせをする事にした。
「男連中が魔獣相手にしてる訳だけど、まあそれもジリ貧だわな」
一応村の連中は俺がそうだったように、それなりに戦える連中が多い。だから一度の魔獣の襲撃位ならなんとかなるだろう。
そして今日までなんとかしてきた。
「流石に大元を叩ける様な余裕はねえ。だからギルドに依頼した訳だ。大元を叩く事に加えて、それまでに襲撃があった場合の防衛のサポート。改めてになるけど、お前らにはそれを頼みたい」
と、グレンはあまり頼みたくなさそうな表情で言う。
そしてそんなグレンにアリサが問いかける。
「それで、その大元の出現ポイントはある程度目星がついてるんですか?」
ああ、そうだ。その辺はどうなっているのだろう。
受付嬢さんは依頼人に聞いてくれと言っていた訳だし、ある程度割り出せていると思うけど……。
そして俺の予想通り、グレンは言う。
「ああ。その辺はある程度だけど割り出せてる」
そしてグレンは一拍空けてから言った。
「神樹の森……って言ったらクルージは分かるよな」
「……ああ」
俺はグレンの言葉に頷いた。
「あの、クルージさん。神樹の森っていうのは……」
「ああ。ラーンの村から少し離れた所にある広い森でな。俺達の村ではその森の中心にある大樹を神様が宿っているって奉ってるんだ」
「ま、神様なんて本当にいるかどうかは分かんねえけどな」
グレンは軽くため息を付く様にそう言う。
「お前それ、村の大人の前で言うなよ」
「分かってる。俺だって馬鹿じゃねえ。こういうのは言っていい奴の前でしか言わねえからよ」
「俺は言って良い奴なのか?」
「別にお前だって馬鹿正直に信じきってる訳じゃねえだろ」
「……まあ確かに」
実際本当に神様がいるのだとすれば、あの村ほんとどうにかしてやってくれよとは思う。
俺がもう少しまともに皆の事を考えられて居ればそれで解決したのだろうけど、それにしたって少しあの村では不運な事が起きすぎているから。
いくらなんでもあんまりだと思うから。
……まあそれは今考えたって仕方がない事だけど。
「それで、なんで神樹の森から出てきてるって分かったんだ? あそこ村の行事位でしか立ち入らないだろ」
というか立ち入る事を禁じられている。
俺とアリサとで以前受けた森での魔獣討伐なんかは、そこで何かをする事を生業とする人間がいるからこそ発覚した事であり、そういう存在が居ない神樹の森から魔獣が出てきているというのはどうやって得た情報なのだろうか?
「ああ、それな。まあ大雑把にどの方角から来るかは襲撃を受ければ分かるだろ? で、その先に何があるのかを考えればある程度割り出せる。そんでとりあえず……その方角にあった神樹の森の前で張ったんだよ」
「張ったって誰が」
「俺がだよ」
……行動力あんなーコイツ。
「そしたら神樹の森から魔獣が出てくるのを見たって訳だ。いやー死ぬかと思った」
……まあ魔獣が出て来た所を見たなら最悪戦闘になるわな。
しかしそれでもなんやかんや生きて帰ってきてる辺り流石はグレンである。
……多分グレンは村の中では一番強いだろうし。
そしてグレンは話を纏めるように言う。
「で、まあそれで確定している訳ではないんだろうけど……多分出てきてんのは神樹の森だと思う。そんでっそれで確実に解決するかどうかは分からねえが、そこで根源を叩き潰して繁殖を止めるんだ」
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