12 後輩冒険者

「あ、一応知ってると思うっすけど、私の名前はリーナっす! 冒険者三日目っすね! つまりお二人の後輩って訳です」


 俺達が自己紹介した流れて、リーナも自己紹介をする。

 そしてそのまま笑みを浮かべて俺達に言った。


「とりあえず今後ともよろしくっす。クルージ先輩。アリサ先輩」


「……」


 なんだろう。その先輩という言葉を聞いて、なにか凄いピースがひったりと嵌まった様な気がした。

 今までのクセの強い話し方が……なんとなくしっくり来はじめたぞ! なんかよくわからないけど、後輩感が凄いわ。


「ああ、よろしく。っても先輩らしい事できるか分からねえけどな」


 色々としっくり来た所で俺がそう言葉を返すと、隣りのアリサが凄くぎこちなくリーナに言う。


「ボ、ボクも先輩らしい事とかあんまりできないと思いますけど、その、分からない事とかあったら、色々教えますよ!」


 一目見て。一言聞いただけで何となく察する事が出来た。


 アリサはどこか舞い上がっている。


 当然と言えば当然なのかもしれない。

 少し話していれば分かる。アリサが誰かと話したりというコミュニケーションを取る事が好きな事位。

 なのにアリサはまともに人と接してこなかった。接する機会を与えられなかった。手を伸ばす事が出来なかった。

 そんな中でこうして機会ができて。少なくとも今は手を伸ばす事ができる状態で。

 しかもそれが同性の同い年の相手で。加えてアリサのスキルに……そのスキルを持つアリサに、嫌悪感を抱いていない。

 ……こんなのさ、舞い上がらない筈がないだろう。


「ほんとっすか!? ありがとうございます! 一応一通りに説明は受けたんすけど分かんない事まだ一杯あって困ってたんすよぉ! ありがとうっすアリサ先輩!」


「あ、でもちょっと待ってください。なんか先輩って呼ばれるのは流石にしっくり来ないです。聞いた話によるとボク達同い年らしいですよ?」


「あ、そうなんすか。まあ確かにそんな感じするっすね」


「まあそんな感じなんで、先輩は付けなくていいですよ」


「そうご希望ならそうっすね……アリサちゃんなんてどうっすか?」


 そうリーナは満面の笑みで言う。

 そしてアリサは……凄い満更でもない表情浮かべてた。


 なんかこう……凄い幸せそうである。


 年の近い友達と話すという、ごく当たり前の事しかしていないのに。

 いや、まだ正確には友達という訳ではないか。


「いいですよ、それで」


「じゃあアリサちゃん! これから同じ冒険者同士、仲良くするっすよ」


「は、はい!」


 でもこの二人なら結構それも秒読みなんじゃないかなと思う。


 ……もっともこの時はまだ、そうなるに至る為に一つ大きな壁がある事を忘れていたのだけれど。

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