【78話】威力の狂った破壊光線
俺にサックリと最後の仕上げを施した魔神は言う。
「さて、これで君に施す修行は今のところ完了だ。どんな力が目覚めたのかの説明が必要かい?」
「いや、いい。さっきは驚いた事で頭がフリーズしていたけど、今なら自分の力がよく分かる。その使い方もね」
「そうかい、それは僥倖」
可能性と自由の権能を使って強化された俺の力は、一言で言えば万能の魔法陣。
頭に流れ込むのは今まで知らなかったはずの魔法構築方法や、新たな魔法式。
既存の物は勿論、オリジナルの魔法までありとあらゆる法則が俺の中に渦を巻く。
まさに魔法全ての可能性が最高の自由度を以って俺に宿った感じだ。
このとんでもない知識と力を、理解するなという方が難しい。
さらにとんでもない事に、魔神と磨いてきた原種魔族を超える程の基礎能力を駆使して使えば、これからはミスリルボールを使わずとも、【念力】で自分の魔力を操作するだけで魔法陣が描けてしまうだろう。
チートだこんなの、万能過ぎる。
「やばいね、これは」
「それはそうさ。僕に出来る全てを、今の君に可能な限り詰め込んだのだからね。それでやばくないという方が難しい。むしろよく二年間も戦いだけの日々を過ごせたね、その事の方が驚きだよ」
そう言った魔神は今までのニヤニヤとした笑みではなく、純粋な笑顔で俺を賞賛した。
「まあ、修行の内容が案外楽しかったからね。そりゃあ夢中にもなるさ」
「それで良いのさ、努力なんて苦しんでやるものじゃないからね。楽しんだ者勝ちだよ。ではそろそろ現世に君を戻すけど、準備はいいかい?」
「ああ、問題ないよ。……お世話になりました!」
祖先である彼に修行をつけてくれた事に対する感謝を伝え、魂を現世に戻すように伝える。
二年間ちょっとの間にどんな変化があったのかは分からないけど、とりあえずディーやサーニャ、そして皆と再会できるのが楽しみだ。
「分かった。じゃあまたいずれ合う時を楽しみにしているよ。さらばだ我が最愛の子孫、ルーケイド・アマイモン。思うがままに、その人生を謳歌してくると良い」
魔神アレスリード・アマイモンが手をかざすと何処かで見た事のある魔法陣が起動し、俺の思考はぷっつりと途絶えた。
──☆☆☆──
「……ん? ああ、現世に戻って来たのか。よっこいしょ」
目が覚めた。
とりあえず起き上がって自分の体を確認するが、13歳ちょっとの時と比べ、16歳となった俺の体に少しだけ違和感を感じる。
なんか向こうで修行していた時よりも、さらに力が溢れ出てくるような、そんな活力に満ちた感じがあるのだ。
もしかして体の成長が無かった謎空間での修行と違い、肉体は肉体で、別々に進化を遂げていたのかな?
これは思わぬところでボーナスが出たな。
それに髪の毛もかなり長くなっており、銀髪が伸び放題になっているようだ。
すごいなこれ、足元まであるぞ。
「で、現状確認は良いのだけど、どうやってこの原初の間から出れば良いんだ? 封印は外から掛かってるはずだしなぁ」
そう思ったところで、ふと妙案が浮かぶ。
「そうだ、せっかくだから魔法陣の力でも試してみよう」
一瞬で思いついた魔法の術式を【念力】による力任せの魔力で描き上げ、空中に必要となる魔法陣を構築する。
うわっ、便利だなこれ。
ミスリルボールを一々操作するより、手軽な上に速い。
「さて、扉を破壊するのはちょっと申し訳ないけど、ここから出るために一発入れさせてもらうよ。……ハァッ!!」
気合を入れて魔法陣に込められたエネルギーを解放する。
ちなみに構築したのは魔法とは呼べないような単純なオリジナル術式で、込めた無属性の魔力がそのままビームとなって放出するというだけの荒業だ。
まだこの世界には存在しない技術のようだけど、誰かが構築を発明したとしても、原種魔族などの特例を除き魔力総量の関係で、魔法そのものを発動させる事は困難だろう。
そして発動した俺の破壊光線は予想通り原初の間の封印をぶち抜き、さらにその奥にある魔王城もぶち抜き、トドメとばかりに都市の城壁をぶち抜き、最後には雲を華麗に突き抜けていった。
まさに破壊光線の名に恥じない、意味不明な威力を有した攻撃だ。
今も放った光線の反動で城全体が大きく揺れている。
「ごめんちょっと、何言ってるか分からない」
いや、予想通りなのは封印をぶち抜いたところまでで、その先に関しては完全に予想外ですよ。
何が起きたんだ。
確かに気合を入れて魔力を込めたけど、まさかここまでの威力があるなんて思ってなかったよ!?
というか、明らかに謎空間で修行をしていた時よりも力が増している。
あの魔神、最後の最後で俺に何をやらかしたんだ!?
するとこの騒ぎに反応して、複数の巨大な魔力がこちらに近づいて来るのが分かった。
【感知】の範囲も尋常じゃない程に上がってるなぁ。
おそらく駆けつけてきているのは魔王ドラウグルと、四天王、そして親友達だろう。
騎士達の反応もちらほらと感知できるが、魔王や親友に比べて力が弱すぎて数に入れて良いのか分からない。
殆どの者達は腰を抜かしているようだ。
というか、ディーやサーニャが四天王達と比べても遜色がない程に強化されている事に、驚きを隠せない。
すると、遠くから魔王と伯父さんの叫び声が聞こえて来た。
部屋が貫通しているおかげで、よく聞こえる。
「おいそこの騎士、何があったっ!!! あいつは、ルーケイドの奴は大丈夫なのかっ!!?」
「そ、それが……」
どうやら心配をかけさせてしまったらしい。
怒鳴られている騎士さんが可哀そうなので、こちらから出向いた方が良いだろう。
「ええい、こんな雑兵にかまけている時間など無いわいっ! 先に駆けつけた方が賢明──」
「おーい! 大丈夫だよ伯父さん! たった今復活しました!」
「──じゃ? な、何ぃいいいい!!?」
ヴラド伯父さんの判断に被せて存在をアピールすると、彼は大きく口を開いて固まってしまった。
指つっこみたい。
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