【61話】助っ人との合流
作戦会議の後はすぐさま王との謁見となり、大会を見学しに立ち寄っている貴族や騎士が見守る中、事前に示し合わせていた通りの褒美を受け取って解散となった。
褒美の内容は軽く金貨二百枚程度で、日本円に換算すると二百万円。
一国の王が出す褒美としては安過ぎる金額らしいが、あまり多くを与えても周りからの嫉妬があるとの事なので、とりあえずの演出としてはこのくらいで丁度いいのだとか。
いくら大会優勝者にして高ランク冒険者といっても、所詮は他国の平民と見下す貴族も多くいるらしく、理解がない者達の反発を無暗に買う事もないだろうという判断だ。
それに、追加報酬が入った事で真っ二つになっているサーニャの杖も新調できたし、もう一度魔法銀の杖が手に入った今、特に思うところはない。
あとはヴラド伯父さんと合流し、向こう側が動きだすまで静かに潜伏するだけである。
「それにしても黒幕の一人が四天王か……。魔王に反旗を翻すくらいだから嫌な予感はしてたけど、予想以上の組織だなぁ」
例え今回たまたま
その上相手は魔大陸から上手く身を隠せるように、この大陸を基点にして暗躍しているのだ。
解決できない事もないとは思うが、意外と根が深そうな問題である。
もっとサクッと組織のトップに会いたい物だ。
そんな事を考えながら王都から身を隠し野営を続けていると、【感知】に信じられない程の魔力量を持った人物が引っかかった。
向こうは見事な隠形により背後から近づいているようだが、それでも俺のスキルは誤魔化せない。
ようやく今回の主力のお出ましのようだ。
「ふむ、儂の存在に軽く気づくか。話には聞いていたが、やはり小僧の固有技能はデタラメな精度じゃなぁ。さすがはあの二人から生まれた原種魔族といった所か」
「昨日ぶりだねヴラド伯父さん。スキルに関してはまあ、俺の唯一無二の武器だからね。そうそう誤魔化されないよ」
というか原種魔族ってなに。
そのワード初めて聞いたんだけど。
定期連絡の時に詳しい話は魔大陸に戻ってからと言っていたから、この件についてもまた後でという事なのだろうか。
「小僧が疑問に思うのも無理はないが、詳細は魔大陸に戻ってから魔王にでも聞くと良い。それよりもお主らがサーニャとディーか、甥っ子が世話になったのぅ」
「こんばんは公爵さまぁー。私達にお礼なんて恐れ多いですー。ほら、ディーも挨拶しなさいー」
「うっす! 今度手合わせしてください!」
やはり後で話すという事で間違いないらしい。
それにしてもディー、お前まだ暴れ足りないのかよ。
ヴラド公爵を見た途端に目がギラギラ燃え
よほど俺に負けたのが悔しかったらしいな。
「はっはっはっ! いいぞ若造、その意気だ。やはり若い奴はそうでなくてはいかん。どれ、小僧を鍛えるついでと言ってはなんだが、魔大陸に戻ったら儂が稽古をつけてやろう。まだ力の使い方も分かっていないような未熟者とはいえ、お前が相手をしたのはこの小僧。絶望的な自力の差を覆し粘って見せたその根性、儂は高く評価しておるぞ」
「っしゃぁぁぁああ! やりぃ!」
吸血帝王の修行を受けられると知って喜ぶ親友。
というか、伯父さんには試合で俺が劣勢だったことを伝えたはずなんだが、こちらが負ける事を微塵も想定していないのは何故なんだろうか。
とても気になる言い方だ。
「ところで伯父さん。合流したのはいいけど、防衛戦まではどうするの?」
「……ふむ。まあ儂の顔を知っている者が近くに居る以上、ある程度くらいは気をつけなくてはならんが、問題ないだろう。小僧には通用しなかったが、部下も含めて弓兵やら子孫やらを誤魔化すくらいの隠形は楽勝じゃな」
どうやら勇者の仲間に顔がバレる事を警戒したらしいが、それも問題ないらしい。
勇者やその仲間が魔大陸に攻め込んだ時に、当然四天王である伯父さんも戦ったのだろうし、向こうもこちらの素顔や能力を知っていてもおかしくはないが、ヴラド伯父さんが大丈夫と言うのなら本当にそうなのだろう。
「わかったよ。じゃあ防衛戦では別勢力としての参加という事でいいのかな」
「そうなるな。潜伏するついでに都に入り込んで居る偵察魔族共を駆逐しておくが、お前達も気を付けるのだぞ。そろそろ戦いが始まる頃合いじゃ」
そういって蝙蝠の翼を生やした吸血帝王は闇夜を滑空していき、王都へと潜り込んでいった。
というか偵察魔族をついで感覚で駆逐できちゃうんだ、やばいな四天王。
修行の時にどうやったのか教えてもらおう。
そうして強力な助っ人との合流も果たし、追加で二日ほど野宿したその日の夜。
ついに王都で怪しい影が蠢き始めた。
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