【57話】ルーケイドvs本気ディー(3)
【闇の衣】をひっぺがされ、その効果が微弱になったディーが突進してくる。
しかしここまで効果が落ちると既に俺の方が動きは上で、まだ魔力ダメージによる反撃があるとはいえ、気になるほどでもなくなった。
「くそっ、いきなり強くなりやがって! 攻撃が当たらねぇぞ!」
いや、俺が強くなったんじゃなくてディーが弱くなったんだが、まあ彼の感覚的にはそう見えるのかもしれない。
まだまだ彼の方が残存体力は大きいが、この調子なら逆転するのも時間の問題だろう。
だが調子の良い時程攻撃を疎かにしてはいけないし、油断をしてもいけない。
できれば彼が逆転の策を思いつかないうちに、一気に勝負を決めてしまいたいところだ。
「【連撃】五の型」
「ガァァァァアアアッ!? ガッ、ハァ……!!」
「そらそら、どんどん行くぞっ!」
五の型、五の型、五の型と、何度も最大火力をぶっぱなし、ぐいぐいディーを追い込んでいく。
さすがに全弾命中とはいかないが、それでもオーラが激減したその体には剣がよく食い込み、一撃一撃と大ダメージを与えて行っているようだ。
だんだんとダメージの均衡が俺に有利になりつつあるし、そろそろ向こうも焦って来たんじゃないかな。
「ハァッ! ハァッ! くそ、このままじゃ絶対に勝てないじゃねぇかよ」
「そう思うなら降参したらどうかな」
「へっ、馬鹿言うんじゃねぇ、死んでも降参なんかしねぇよ。……それにまだ、手がない訳でもないんだぜ?」
「…………まじ?」
どういう事だろうか、まさか状況を覆す策をもう思いついたのか?
すると突然俺に背を向けてディーが走り出し、一目散に剣の間合いから逃げ出した。
おいおい、確かに予想外な行動だけど、それは悪手だろ。
こんなの一瞬で追いついて追撃を行えば、それで勝負ありだ。
そう思った所で、背を向けいたディーが急にこちらに向き直り、大剣を大きく振りかぶった。
えっ、まさかあいつ、一か八か俺に剣を投擲するつもりかぁ!?
思い切りよすぎだろっ!!
それならここは【回避】の型を……、いや、違う!!
「剣が無くなるのは確かに痛ぇが、これでさらに形成逆転、だっ!!!」
「──しまっ!!」
ギィッィイインッ!!!
俺が一瞬の躊躇いを見せた瞬間、ディーが大剣を投げ、空に大きな金属音が響き渡った。
そう、彼は俺に向けて剣を投擲するのではなく、ミスリルボール・ガンマに向けて投げ放ったのだ。
だけど本当に思い切りが良いな、確かにガンマは大剣に弾かれて【念力】の影響外である場外にぶっとんでいったが、それは剣も同じ。
これではいくらオーラが戻っても、拳で戦う事になるぞ。
まあでも、ディーの場合はその拳すら凶器なんだけどね。
「よしっ! 力が戻ったぜ! さぁて、お次は第三ラウンドといこうじゃねぇか」
「は、はははっ! ……やるじゃないか」
剣を持った俺とオーラを纏ったディー、総合的には俺にやや有利だが、あの拳をまともに食らえば俺でも危ない。
大剣とは違って防御には不向きだが、格闘術は小回りが利くし、攻撃がいままでよりも素早くなる。
……厄介だな。
無暗に突っ込めば身軽になった格闘術からのカウンターが来るだろうし、行動の制御に重きを置く【反撃】と【回避】で様子を見るべきだろう。
「おらっ! ボサッとしている暇はないぜ親友!」
「【回避】」
「まだまだまだぁ!!」
次々と飛んでくる拳を回避し続け隙を伺う。
攻撃速度が上がった分被弾する事が多くなったが、大剣ほど脅威となる威力ではないので、掠った程度は許容範囲として動く事で会心の一撃となる攻撃だけを避けていく。
それから威力の強弱がついた連続パンチが飛び交う中、ジャブと判断できる弱い打撃を見切って反撃に移る。
もちろんその打撃は食らう事になるが、受けるダメージよりも剣での反撃の方が手痛いしっぺ返しとなるはずだ。
ここで五の型が決まり向こうが怯めば、後は【連撃】で押しに押しまくるだけで勝てるはず。
これで勝負ありだよ、親友。
「【反撃】五の型」
「……甘いぜ、ルー」
「なっ!?」
五の型を使用した瞬間、その攻撃に怯むと思っていたディーの攻撃速度が更に上昇し、ダメージ覚悟で今まで以上の特攻を放ってきた。
まじかよこいつ、【闇の衣】で防御力が上がっているのを良い事に、剣と拳でノーガードの殴り合いを始める気かっ!?
正気じゃないぞっ!!
「おらおらおらおらおらおらぁっ!!!! どうせ引いて負けるなら、お前も道づれだぜルーっ!! 先に気力が切れたの方負けって訳だ、覚悟するんだなぁ!!」
「くっ、そぉぉおおおおおっ!!!」
嵌められた、完全に嵌められた。
確かにこれじゃあ攻撃を止めた方が連撃から逃げられなくなり、そのまま一方的に殴られ敗北が決定する。
不格好ではあるが、思っていた以上に有効な作戦だ。
だけど、分かっていたとしてもやるか普通!?
どんだけ戦闘狂なんだよお前!!
それからというもの、ディーの右ストレートが鳩尾にめり込み、アシストの効いた俺の双剣が胴を横凪に切り刻み、まさに死力を尽くした殴り合いが続いた。
既にお互い気力だけで立っているような状況であり、こちらも剣を握る手に感覚がない。
ありえない耐久力だ、ゲームのラスボスか何かなのかお前は。
だめだ、もうマジで限界だ。
そろそろ決着つけないと本気で負ける。
「ガッハァッ!! ……さすがにキツイ、ぜっ!! ゼラァァッ!!」
「ったりまえ、だろっ! ハァッ!」
朦朧とした意識の中、無造作に振るった双剣と拳が交差する。
拳は俺の顔面に直撃し、剣は向こうの脇腹を貫いた。
どうやら向こうもオーラの限界が近かったらしく、今まで深く刺さりはしなかった剣がよやくまともに攻撃を与えたようだ。
だが同時に俺の方も限界だったのか、ディーの拳を受けた瞬間足元がガクつき、その場に倒れ伏す。
力が入らない。
「……はぁっ、はぁっ、な、なんだよルー。もうおしまいかよ」
「はははっ、ディーこそ、無様にぶっ倒れてるじゃないか」
俺達はお互いの攻撃でダブルノックアウトし、立ち上がることが出来ない。
「く、くくくっ、見たかよ俺の実力。なぁおい、どうなんだよ
「ああ、ものすごい強さだった、頭おかしいんじゃないかって思ったよ。……だからこそ、まだいける。まだ立たなきゃいけない」
「…………なっ!?」
「この、こんちくしょう、がぁあああっ!!!」
俺は最後の気力を振り絞り、這いつくばる親友の前で立ち上がろうとする。
ここで倒れ続けるのは簡単だが、そうしてはいけない気がする。
そうしてしまっては、彼の期待に応えられない。
たかが俺なんかを目標とする、彼の期待に応えられなくなってしまう。
だからこそ体が悲鳴を上げ、痛みが命の危険を知らせるのも無視してでも立たなくてはいけない。
「…………おかしいだろ。……なんで立てるんだ、お前?」
「は、ははは。……そりゃあ、
そうして完全に立ち上がった時、遠くから審判の合図が聞こえて来た。
まだまだお前に負ける気は無いよ、
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