【56話】ルーケイドvs本気ディー(2)
俺の【回避】や【反撃】を駆使した念力の型と、ディーの防御不能な超速度かつ超威力の斬撃が交差していく。
しかし一撃、二撃、三撃と剣を交える度に俺の体は闇の衣に蝕まれていき、最初は拮抗していた体力も今ではだいぶ均衡が崩れてきてしまった。
俺に魔力ダメージが入り過ぎているのだ。
なにせ、向こうは防御しても攻撃しても
はっきり言ってチートだこんなの、まるで隙が見当たらない。
ただ、一撃ごとの魔力ダメージはそれほどでもなく、俺も一応高位の魔族だからなのか、闇属性に対する耐性がかなりある。
纏わりつくオーラで反撃されるのを覚悟で突撃すれば、突破口が見えなくもないといった感じだ。
それにあれだけの大技だ、通常の【身体強化】よりも大量のエネルギーを消費するはずだし、反動がないなんてことはあり得ない。
だとすれば、このまま耐え続けて魔力切れを狙うのも一つの手ではあるだろう。
俺の体力が切れるのが先か、ディーの魔力が切れるのが先か、持久戦と行こうじゃないか。
「どうしたどうしたぁ!! 逃げてばかりじゃ勝ち目はないぜ親友! まさかこのまま終わるなんて事はないよなぁ!」
「くっ……」
……とはいっても、やはり気の抜けないこの攻防をいつまでも続けていく自信はない。
なにせ攻め手がディーで、守り手が俺だ。
攻めている方は剣を叩きつけるだけで良かもしれないが、守っている方は常に神経を使い、一歩間違えれば大剣の一撃をもろに食らってしまう恐れを考慮して、慎重に立ち回らねばならない。
故に集中力が切れた段階で敗北が確定するし、持久戦に持ち込むにしても、何か切っ掛けがないと持たないだろう。
そしてその切っ掛け作りとして、俺の手札の中ではミスリルボールが有用ではあるが、あいにくこいつらを取り出すだけの余裕がない。
やはり一度大技を決めて、そこで耐性を立て直すしかないようだ。
「楽しいなぁ親友っ! こうやって我武者羅に戦ってると、初めてお前と戦った時を思い出すぜ!」
「…………」
ディーが饒舌に語り、剣を振り回すのに夢中になっている間も、大技である【連撃】五の型を使用するために隙を伺い、作戦を考える。
まずは【反撃】の型で剣を滑らせ、そこから……。
「あの時は俺もただのガキでよ、剣の振り方も分からねぇから取っ組み合いにしからなかったが、今回は違う! 面と向かって力と技術をぶつけ合い、いつも遥か先を突っ走っていたお前に、こうして正面から力を認めさせる事ができるんだよ! お前に分かるかよ、その意味がっ!」
「…………」
「分からねぇだろうなぁ親友っ! 俺は悔しかったぜ、自分の不甲斐なさが、自分の至らなさが! 目の前にいるでけぇ背中に引っ張られてばかりでよ、絶対に負けねぇ、絶対に間違わねぇ、そんな英雄に付いて行くだけでしかなった、俺の気持ちが!! お前に分かるかよって聞いてんだよ!!!」
ディーが溜め込んでいた感情を爆発させ、それに呼応して一段と闇のオーラが膨れ上がる。
だが全ての能力が向上していくと同時に剣の振り方も大振りになっていき、僅かな隙がうまれはじめた。
彼自身、自分のパワーを制御しきれなくなってきているのだ。
確かに能力が向上すれば基本的には強くなる。
しかし素の状態で訓練を積み、平常心を保つ事を前提に磨いてきた彼の剣技は、その急激なパワーの上昇を計算に入れて設計されていないのだ。
僅かな力み方の違いが剣筋を鈍らせ、いつもと違うエネルギーの運用が認識に誤差を生み出す。
その誤差こそが、今の俺がつくべき最大の好機。
「意味も無く力みすぎだぞディー、【反撃】一の型」
「……なっ!?」
彼が剣技のコントロールを誤り、少しだけ大振りになりすぎた所を狙ってカウンターを決める。
カウンターといっても、【反撃】のアシストを利用して剣と剣を滑らせただけだが、今はこれで十分だ。
一度でもこの猛攻から逃れられたなら、あとは最大火力をぶち込むだけなのだから。
そして剣と剣が交差し一瞬の間が出来た瞬間、【連撃】五の型を発動する。
間をおかず発動した五連撃は、彼の大剣に阻まれる事なく【闇の衣】を纏った肉体に吸い込まれて行き、その四肢を抉った。
「うぉぉぉおおおおっ!!!」
「くっ、そっ、がぁぁああっ! お前、最初からこれを狙って……ッ!!」
「まだまだいくぞディーッ!!」
大技は決まったが部位の切断はできておらず、それどころかオーラと筋肉に阻まれ骨にすら到達していない。
恐らくこのまま攻撃を続けても倒し切れないし、一度警戒させてしまった以上は二度目のチャンスはやってこないだろう。
なのでここは当初の予定通り、相手が怯んでいる隙を利用してミスリルボール・ガンマを召喚する。
ガンマの効果は吸収。
魔法ではないとはいえ、可視化している程の闇属性魔力を纏った今のディーならば、闇という魔法陣を描くだけでだいぶ弱体化させられるだろう。
「まさかルー、……お前ぇっ!!」
「そのまさかだよ。立体魔法陣、起動っ!!」
「……くそがっ!」
俺のやりたい事に気づいたらしいディーが悪態をつくが、もはや時遅し。
一瞬で魔法陣を完成させたガンマが空高くからディーの力を吸い取り、そのスキルを弱体化させていく。
今の状態でもかなりの力があるだろうし、ガンマを先に狙って壊そうと思えば不可能ではないだろうが、そんな事をしている暇があるほど、既に今の力量差はかけ離れて居ない。
もし俺を無視してガンマにジャンプ攻撃でもしようものなら、その隙を利用して即座にディーの両足を断ち切るだろう。
「ここからが本番だぜ、
「チィッ! さすがに一方的に倒せるほど甘くはねぇってことかよ、
全くもってその通りだ。
しばらくボコボコにされている間に受けたこのダメージ、早々に挽回させてもらうぞ。
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