【42話】定期連絡(2)


 王都行きを決めたその日の夜、久しぶりにヴラド伯父さんからの定期連絡が行われた。

だいたい一週間に一回くらいの頻度で連絡を行っていて、特に伝える事がない時はヴラー村の様子などを教えてもらっている。


「来たぞ小僧。その表情から察するに、何か進展があったようじゃな」

「お疲れ様ですヴラド伯父さん。進展なら確かにあったよ、ついにAランク冒険者になったんだ。それも三人揃って」


 魔族の襲撃に関しても進展はあったが、俺にとってはこの大陸のAランク冒険者になった事が大きい。

なにせ大国の下級貴族と同列だからね、それなりに地位が向上したと見て良いだろう。


「ほう、それは目出度い。して、その功績となった要因はなんじゃ? まあ大体予想はつくがの」

「お察しの通り、今回もまた魔族関連かな。実は龍人族の魔族と戦闘になって、ついでに一緒にいた中級ドラゴンを倒した功績によるものなんだ」


 伯父さんは魔族関連である事ぐらいは予想できていたようだが、まさかドラゴンまでセットで倒していたとは思っていなかったみたいで、少し驚いた雰囲気を醸し出した。

何か気になる事でもあったのだろうか。


「……なに? 龍人族とドラゴンの襲撃じゃと? ……いや、まさか」

「どうしたの?」

「いや、まだ推測に過ぎぬ以上は軽はずみな事は言えぬ。それと済まんがこの件について急用が出来た。定期連絡はしばらく行えなくなるじゃろうから、その間は気を付けて行動せぃ」

「えっ、ちょ! それどういう意味なの? ……あぁ、飛んで行っちゃった」


 何か思わせぶりな事を呟いた後、分身がただの野生コウモリとなって離れて行ってしまった。

伯父さんは反魔王勢力について嗅ぎまわっており、ここ最近色々としっぽを掴んでいっているみたいだから、今の情報で思い当たる何かがあったのかもしれない。


 まあ、何か進展があればまた定期連絡が行われるだろうし、しばらくの間くらいなら危険もないだろう。

特に問題はないかな。


「お疲れルーくん。公爵様の反応を見るにー、今回の事件は根が深そうねー」

「そうだね。ただ、大した情報も持たない俺達に出来る事なんて無いし、やれる事をやって行けばいいさ。とりあえずは闘技大会で好成績を残すことが目標って所かな」


 当たり前の事だが、闘技大会に出るだけでは何の進展にもならない。

勇者関係の者達の目に留まるくらいの活躍をみせ、重要人物達から声をかけられるくらいじゃないと、行く意味が無いのだ。


「その辺は任せろルー、誰が相手だろうと負けるつもりはねぇ。それはもちろん、お前が相手だったとしてもだ。むしろお前と全力で戦える事が俺は一番うれしいぜ、親友」

「ははは、お手柔らかに頼むよディー」

「ばっかお前、手加減なんてする訳ねぇだろ! ルー相手にそんな事をしたら二秒で殺される」


 いや、そういう意味じゃないんだけどな。

というか闘技大会だから流石に殺しは無しだと思うよ。

詳しいルールは現地についてからじゃないと分からないけど、確か真剣での勝負だったはずなので、事故くらいなら有り得なくもないけどね。


 それと闘技大会の日程についてだが、辺境であるヨルンから王都までは馬車で三週間ほどかかるので、一ヶ月後の大会までは時間ギリギリと言ったところだ。

最悪馬車で間に合いそうになかったら、全力で走るという選択もある。


 この大陸の馬は足も四本しかないし、魔大陸ほど無茶苦茶なスピードは出ないのだ。

ただし馬車を乗り捨てる場合は中級ドラゴンの素材も放り出すことになるので、出来ればそれは遠慮したい。


 あのドラゴンの素材は武器にしろ防具にしろ、魔法銀と同等くらいの性能の装備になる。

俺達には防具が不十分なので、この機会に取り替えられれば最高なのだが。


「バカなのはディーの方よー。闘技大会での殺しなんて、許可が下りるはずないじゃないー。大会と言うからには競技なのよー?」

「わ、分かってるってのっ! ただ俺は、手加減なんてつまらねぇ事だけはしたくねぇって念を押しただけだ」

「なら良いわー。私も全力で行くものー」


 確かに手加減などするつもりは微塵も無い。

相手にもよるが、なるべく力を見せつけて注目を集め、自分をアピールしなくちゃならないからね。

例え負けると分かっている試合であっても、目的はそこなのだから最後まで食らいつくつもりだ。


 サーニャも俺の行動理由が分かっているようで、少しでも派手に試合をかき回すつもりらしい。


「まあなんにせよ、なるべく早く王都に着くためにも出発は明日からだ。別れの挨拶が済んでいない人とか居たら、昼までに済ましてくれよ。それじゃお休み」


 まあ、二人もそこらへんはしっかりしているので、やり残した事など無いはずだとは思うけどね。

結局は朝早く出発する事が出来るだろうし、特に心配はしていない。




 ────そして一ヶ月後、俺達はガイオン王国の王都、首都ガルガレオンに到着した。

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