【41話】称号をてにいれた!
とりあえず一番厄介な魔族側を追い払ったので、冒険者の安否と親友達の様子を確認する。
「……す、すげえ。あいつ、魔族を単独で返り討ちにしちまったぞ」
「いや、あの双剣士も凄いが、向こうの竜王と戦っている二人も凄いぞ! まるで英雄の戦いを目の当たりにしているようだ」
「ばっかお前、違うだろ! まるで英雄みたいな、じゃねぇ、どこからどうみても英雄だ!!」
「ちがいねぇ!」
いつの間にか冒険者は完全復帰しており、観戦モードに入り実況を楽しんでいるようだ。
さすがCランクとはいえプロだな、立ち直りが早い。
でもって、ディー達はというと……。
「ディー、こっちはもう片付いたよ。手を貸そうか?」
「冗談だろルー!? 今ちょうど決着がつきそうな所なんだよっ、横取りしたら三日は恨むぞ!」
「ははは、分かったよ。了解だ」
どうやら中級ドラゴン程度ではディーとサーニャのタッグの相手は不足だったらしく、天空から降り注ぐ氷の槍に滅多刺しにされ、迫りくる
既に勝負ありのようだ。
そしてラストスパートとばかりに加速した彼の大剣が、満身創痍のドラゴンの首筋へめがけて迫っていき、ズバンッという大きな音と共に肉を断ち切る。
「おっしゃぁ! 勝負ありだぜ大トカゲ!」
「まあー、魔法の練習くらいにはなったわねー」
中級ドラゴンを倒し、満面の笑みを浮かべるディーと平常心のサーニャ。
ここ最近大した相手と本気で戦えなかったし、二人には良い気分転換になはなっただろう。
正直訓練だけじゃマンネリ化するし、俺も実践を積めた事には感謝している。
「うぉぉぉおお!? 本当に勝っちまいやがったぞあの二人! 英雄だ、新しい英雄の誕生だぁ!」
「あぁ、俺達は今、伝説を目の当たりにしているっ!
「「「うぅぉおおおおお!」」」
やけにテンションの上がった冒険者たちが立ち上がり、こちらに駆け寄ってくる。
それになんだその恥ずかしい称号は、とてもカッコいいじゃないか。
地位向上の目的にも繋がる、素晴らしい栄誉だ。
くっ、右腕が疼く。
俺の封印された黒歴史が、また幕を開けようとしている、……だと。
それからは集まった第一組にその場で胴上げされそうになりつつも、とりあえず今は現状の報告が先だという事を伝え、一旦彼らと共に冒険者組合へと戻る事に。
ちなみに、せっかくなので中級ドラゴンの素材を運ぶ事になったのだが、とてもあの巨体を運ぶには人員が足りなかったため、重要な部位だけを剥ぎ取りあとから再度訪れることになった。
まあ二十メートルくらいあるもんね、あの大トカゲ。
これなら素材の売上金も期待できそうだ。
──☆☆☆──
翌日、持ち帰った部位と俺達の証言により、ドラゴンの討伐成功と魔族の撃退成功の報がヨルン町に響き渡った。
いや、ヨルンだけではなく、周辺から集まった冒険者や騎士達がその事を広めていき、もはやその勢いは留まる所を知らない。
このまま行けば、ガイオン王国全土に広まるんじゃないかっていうくらい、もの凄い勢いで拡散されていってる。
「にしても、また特例でランクアップか。やっぱり美味しい依頼だったね」
きな臭い話には福があるとは、よく言ったもんだ。
いや、言ってるのは俺だけなんだけどね。
「Aランク昇格だっけか? 確か英雄の一歩手前の称号らしいな」
「称号じゃなくてー、資格といって欲しいわー」
「ともあれ、これでだいぶ動きやすくなった事には変わりないね。なにせ竜殺しに大魔導士に剣聖だ」
俺達は今回の功績を大きく評価され、莫大な報酬と二段階昇格という大偉業を達成していた。
なんでもAランクになると大国の下級貴族と同等の権力があるらしいので、勇者訪問の目標にかなり近づいたと見ていいだろう。
称号についてはこれといって得に効果はないんだけど、それでもこういった肩書がつくと言う事は上位ランカーの特権らしいので、ありがたく受け取っておく事にする。
「で、この後はどうするんだよルー。さすがにもうこの町でやる事は何も無いし、あの大トカゲの素材だってヨルンの技術者じゃ加工もできねぇだろ」
「ああ、その事についてなんだけど、もう予定は立ってるよ。さすがに二ヶ月も無為に過ごすのはもったいないし、次の予定地へ移動する事はアザミさんに手紙で伝えた。届くのはまだ先になるだろうけどね」
「……って事は、やっぱ行くのか!?」
ディーがワクワクが抑えきれないと言った感じで、期待の籠った声で聞き返す。
それもそのはずだ、なにせ次の目的地は──。
「ああ、行くよ王都に。勇者のパーティーメンバーやその子孫達も出場する、ガイオン王国最大のビッグイベント、闘技大会に参加するためにね」
「ぃいいいいよっしゃぁあああああ!!!」
俺の決定に、親友が大声を上げて喜ぶ。
出場資格は有力者の推薦またはBランク冒険者以上となっているために、今回の功績がなければ参加する事も出来なかった訳だけど、その条件は満たした。
そもそも、つい最近までは闘技大会がある事すら知らなかったんだけど、色々と偉業を達成した事でこういった手合いの話も流れて来たのだ。
ただ勇者本人に会えるわけではないので、まだまだ道のりは遠いといった所だけどね。
それでもその子孫達やパーティーメンバーに接触でき、コネを作る良い機会だ。
定期連絡でもこの事を伝え、旅が順調に進んでいる事を父さん達に知らせてあげたい。
そしてなにより、周辺国家から集まった人間大陸の実力者たち、そんな彼らと実践経験を積めるなんて願っても無い事だ。
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