【31話】定期連絡
突入作戦から数時間後、黒装束と一先ずの決着を終えたその日の夜、俺は親友の二人に集めてもらった情報を吟味していた。
ちなみに冒険者としての初仕事は最大の評価を以て達成と見做され、俺だけ抜け駆けする形で問答無用のDランク昇格となっている。
本来ならDランク昇級への試験があるはずなのだが、今回はギルドマスターからの指名依頼という事もあり特例とのこと。
報酬もたんまりもらったし、やはり活動場所を冒険者組合にして正解だったようだ。
「……で、結局あの魔族が知っていたのは現魔王への謀反と、何ヵ所かの支部の場所だけってことかな」
「そうなるな。サーニャの魔法で精神をやられちまってたみたいだから、嘘は言ってないと思うぜ」
「ふむ」
あー、これはたぶんアレだな、トカゲの尻尾切りと言う奴だ。
なぜあんな無能を派遣したのか気になっていたけど、まず間違いなく捨て駒にされたんだろう。
魔大陸にいる魔王に対して謀反をするっていうんだから、ワザと魔族の情報を流し、あちらから自分達に敵対する魔族が流れ出てこないように邪魔をしたんだな。
自分たちに味方する魔族の侵入ルートを既に確保し、一般の魔族船を潰したかったに違いない。
「何か分かったのか?」
「ああ、少しだけ予想はついたよ。ただ気になるのが、一体誰がそんなバカげたことをしているのかって事だけど……、うーん」
「確かに。なんにせよそこが問題だよなぁ」
「そうねぇ……」
三人で考え込むも、思い当たる人物がいない。
魔王に勝つとか考えているくらいだし、間違いなくそれなりに実力のある魔族なんだろうけどね。
さすがに、雑魚魔族がこの大陸に来て思い上がったっていう線は無いだろうし、魔王の力っていうのはそこまで甘くないだろう。
本当に謎だ。
そして、そんな感じで三人でうんうんと頭を悩ませていると、突然部屋の窓からコンコンというノック音が聞こえて来た。
「おっと。どうやら定期連絡の時間みたいだね」
「左様。早速迎えに来てやったぞ小僧」
窓には小さな蝙蝠がへばりついており、爛々とした真紅の瞳でこちらを凝視している。
「どうも。お世話になります、ヴラド伯父さん」
「フンッ、礼などいらぬわ。戦友であるウルベルトの奴と我が妹ベルニーニの息子のためならば、儂の分身を飛ばすことなど訳はない」
そう、なにを隠そうこの蝙蝠さん、ベルニーニ母さんの兄である
今回は俺への安全を考慮した父さんがヴラド伯父さんへと連絡を取り、定期連絡だけでもお願いできないかと頼み込んだのだ。
ヴラド伯父さんはウルベルト父さんと同じ四天王の一人だし、ベルニーニ母さんのお兄さんという事もあって二つ返事で了承してくれた、仲間想いの良い魔族だったりする。
普段はツンツンだけどね。
余談だが、伯父さんの分身能力は吸血鬼の頂点にしか使えない
だが、あんまり長時間は思念を飛ばしていられないみたいなので、今回あった事を手短に話すとする。
「ありがとう伯父さん、俺の安全に関しては特に問題ないよ。ただ一つ、気になる問題はあるみたいだけどね」
「ふむ、なんだ?」
「いや、どの程度の規模なのかはまだ分からないんだけどさ、こちらにいる一部の魔族が魔大陸に謀反を起こそうとしているみたいなんだ。詳しく話すと長くなるんだけど、とりあえず拠点は一つ潰しておいたから、レビエーラに関しては問題ないよ」
「…………馬鹿な」
伯父さんが驚くが、あまり詳しく話す時間はない。
「まあ、問題はとりあえずそれだけだから、この件に関しては伯父さんも調査をした方がいいかもね。魔王様に挑むくらいの自信がある魔族ってことだし、放っておくのはマズいでしょ?」
「……そうじゃな、情報に感謝するぞルーケイドよ。儂も個人的な探りを入れてみるとしよう。では、さらばだ」
それだけ言い残し、蝙蝠は飛び去って行った。
思念が飛ばせなくなると野生に戻るらしいので、また魔力が貯まり連絡が取れるまでは数日かかる。
野生に戻った分身蝙蝠に関しては、こちらをマーキングする能力があるらしいので放っておけばまた近づいてくるだろう。
「行ったね」
「ああ。……っていうかよぉ、四天王ってやっぱ化け物ばっかなんだな。規格外すぎるだろ、能力とか色々」
「あらー、ディーにしては珍しく怖気づいちゃったのかしらー? 軟弱ねぇー」
「ばっか! お前、そんな訳ねぇだろっ!? 俺はただ、打倒ルーの時のために色々と能力の考察をだな」
「うそくさーい」
伯父さんが帰って行ったのを皮切りに、ディーとサーニャがいつものようにじゃれ合う。
仲が良いようで何よりだ。
それにしても四天王、か。
パワータイプのウルベルト父さんは
ヴラド伯父さんも
どれもこれも規格外の力を持った存在であり、魔大陸の重要人物。
この人達に加えて魔王までも敵に回そうとする魔族とは、一体何者なのだろうか。
できれば勇者訪問の邪魔にだけはなってくれるなよと思うばかりだ。
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