【28話】黒装束の拠点を発見


 ギルド長との交渉を終え、組織の情報を手に入れた俺は囮役を引き受けた。

どうやら奴らは既に多くの犯罪に手を染めていて、非合法の奴隷売買や殺人などを繰り返しているらしい。

しかし、それだけなら厄介な犯罪者集団として認識されるだけに過ぎないのだが、どうやら裏にいるのは魔族らしいという噂もあり、手を打たなければ止められなくなると判断された。


 まだ情報が露呈したばかりで組織の規模は不明だが、この港町で暗躍しているのは間違いないとの事。


「んー。あれだけ間抜けな奴らなのに、情報が露呈したばかり、か。こりゃ少なくとも、この町で活動を始めた魔族とやらは最近来た奴だな。優秀な前任と交代した奴が無能だったという線もあるが、何にせよ今回の魔族だけはぶっとばさないと」


 ちなみに現在、レビエーラを適当に散策して囮役を実行中。

それと、かなり離れた位置に同じ依頼を受けた冒険者達が複数いるようだが、どいつもこいつも隠形がめちゃくちゃ下手だ。

隠す気があるのだろうか。


 信頼のおけるベテランを派遣すると言っていたが、もっと優秀な人材を派遣して欲しいものである。

そんな事を考えながら路地裏に入ったり出たりしていると、ついに向こうからの接触があったようだ。


「あぁ、やっと来たか。出て来なよ、ちゃんと奴隷達は用意できているんだろうね」

「…………仰せのままに」


 声をかけると、前回と同じように屋根から黒装束たちが飛び降りてくる。

この組織の下っ端ってみんなこの服装なのかな。


「で、どれくらいの数が用意できたんだ? ……あぁ、ここで言わなくていい。どこに監視の目があるか分からないからね。とりあえず拠点で詳しい説明を頼む」

「はっ!」


 それなりの演技をしつつ拠点へと誘導をかける。

俺の言葉を疑いもせず鵜呑みにする黒装束さん達だが、昨日の仲間が帰ってこなかった事とか気にしないんだろうか。


「それにしても昨日は災難だったよ。案内役の奴らが聖剣の所持者にられちゃってさ、一旦は身を引いたけど、次に会ったら容赦はしないつもりだ」

「もちろんで御座います。しかし、仲間からの連絡が途絶えた時はまさかとは思いましたが、鼠共にあのような大物が混ざっているとは思いませんでした。敵も案外狡猾のようです」


 悔しそうにしてる所悪いけど、貴方たちが間抜けなだけだと思うよ。

……言わないけど。


 そして黒装束さん達について行くこと数分、路地裏からスラム街へ入り奥へ奥へと進んでいくと、古ぼけた建物が見えて来た。

スラム街にあるにしてはしっかりした建物だが、それでも至る所が朽ちており、物件としての価値はあまりなさそうに見える。


 なるほど、見た目は秘密基地のそれっぽい感じがする。

ロマンがあるね。


「さて、ついたかな」

「はい。周辺の村を含め、攫った奴隷共は地下にまとめられておりますので、一度拝見していただければと。今回はそれなりに上等な肉も混ざっております」

「……そうか、それはご苦労だね」


 案内のお礼と共に剣を抜き、背後から黒装束の首をまとめて刎ねる。

同時に、こちらの様子を伺っていた冒険者とアザミさんが雪崩れ込んできた。

俺を含めて数は14名くらいかな、かなり大所帯だ。


「お疲れ様ですルーケイドさんっ! ここまで簡単に事が運ぶなんて、期待以上ですよっ!」

「声が大きいよアザミさん」

「あっ……」


 俺の手を取りぶんぶんと振り回していたアザミさんが急停止する。

この子も結構迂闊な事をするね。

周りの冒険者も若いっていいなぁとか呑気な事言ってないで、少しは警戒心を持って欲しい所だ。


 いくら相手が雑魚だとは言っても、人質が居る以上はまだ相手側がやや有利なんだから。

【感知】の反応的には地下の動きに目立った様子はないので、まだ気づかれてないんだろうけどさ。


 それにしても、ふむ。

地上一階には誰もおらず、地下一階に八十三人、地下二階に七人か。

数的に見ても攫われた人たちがいるのは地下一階って事で間違いなさそうだ。


 ここは冒険者達に救出を優先してもらって、俺は二階の散策を進めた方が良さそうだ。


「それよりも皆さん、こいつらから聞き出した情報によると、地下一階に奴隷が集められているらしいです。地上には敵がいないようなので、一気に攻め込むのが良いんじゃないですか」


 周りから、ほぅっという感心したような息が漏れる。

おそらく囮役ついでに聞き出した情報だと思ったのだろう。

実際は固有技能ユニークスキルの力なんだけど、手札は隠しておいた方がいい。


「分かりました、情報をありがとうございます。それでは私が先陣を切りますので、皆さんはそれぞれ救出活動にあたって下さい。ルーケイドさんは殿をお願いしますね?」

「はいよー」


 殿とは都合がいい。

地下二階への隠し通路は【感知】で把握済みなので、これなら後ろからこっそり抜け出してボスを始末してしまえそうだ。


「それでは、作戦開始っ!!」

「「「おぉ!!」」」


 彼女の号令と共に、全員が飛び出した。

いや、だからそんな大声だしたら気づかれちゃうって……。


 冒険者不用心すぎないか。

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