僕達、雄じゃなかったんです

桜木 玲音

亀と蛇……

 その亀は18年前に子供達にせがまれて購入したクサガメです。

 名前はリュウです。その名の通り、亀ながら天翔けるイメージでリュウ(竜)と名付けられました。

 来た時は本当に小さくて可愛い亀でした。

 獣医師の先生も認める雄でした。しかし……

 リュウが家に来て7・8年経った初夏の有る日、リュウは丸くて白い卵を独りで産みました。

 相棒がいないので無精卵なのは決まりです。

 亀の雌雄を見分けるのは肛門の位置だそうです。

 今もそれは先生に見て頂いた時と同じ位置に有るのですが……

 自分しかいないと判断すると雄なのに雌になってしまうのか?


 それから毎年同じ季節が来るとリュウは卵を産みます。

 きっと彼、いえ彼女は名前がリュウに決まった時に呟いていたのでしょうね。

 私……雌なんだけど。


 そして蛇……十年前ペットショップで購入した雄のアオダイショウ。ちなみに色素の無いアルビノです。雄だから私にも買えたのです。もしもこれが雄だったら三倍以上の値段が付いていてもおかしく無く、私には手が届かなかった蛇君です。

 しかし……性格は他の種類に比べて大人しいと書かれていたのに、ウチの蛇君は気性が滅法荒いのです。とにかく暴れん坊なのです。餌のマウスを差し出すと引ったくる。機嫌が悪いとシューと威嚇する。勢い余ってガラスの面にぶつかるのは日常です。それを見るにつけ、やっぱり雄は性格も豪胆なんだね、と思っていました。

 なのに……何故ウチの爬虫類どもは性転換してしまうのか……

 蛇君も……三年目の春に卵を産みました。

 名前はシロガネのままにしています。

 この子も獣医師の先生に軽く「雄だね。間違い無いよ。」

 と言われていたのに……

 わらわは雄などではない!! 

 アイツなら呟くどころか叫んでいたかもしれない。


 ペットショップの人には本当は雌だったよ、とは打ち明けていません。


 何て事は無い話しでしたね。

 最後までお読み頂きましてありがとうございました。



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僕達、雄じゃなかったんです 桜木 玲音 @minazuki-ichigo

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