お通夜の日のこと その3

 2018年6月18日のお通夜の席では、出席された方々から市原先生の様々な話を聞きました。

 まあどれも予想通りというか予想以上というか。


 友人「Y」から聞いた、四谷時代に酔ってケンカばかりしてたから、四谷の飲み屋は軒並み出入り禁止だったとかは、まあそうだろうなとしか。


 電車の中でその筋の人たちから因縁つけられた話も聞きました。あの見た目では同業者と思われても仕方ないなあ。相手は3人いたというから絶対勝てると思っていたんでしょうね。

 先生に「降りろ」と言われて電車からホームに降りて、その後3人まとめてあっさりKOされたそうで。でもそれ以降は帰宅時のルートを毎日変えることにしてたとか。勝っても本職相手だとその後が面倒だから大変です。


「総本部放浪時代のこと その1」でも書いた、下の階のテナントから稽古中に苦情が来ても「構うこたぁない! 今まで以上に声出していけ! 」で押し通した話が出た時は、私も現場にいましたので「そうそうあったあった」と一緒に盛り上がりました。

 みな、市原先生から多大なる恩と多大なる理不尽を受けてましたので、思い出話は尽きません。

 組手で市原先生に当てにいったら、顔面にバチンと一発返されたのは歯医者の馬場さんの話。「『先生が相手だから手を抜いたら失礼だと思って』って言ったらさ『限度ってのがあるだろ!』と言われちゃった」のだそうです。


 人を評価する物差しに、「良い」「悪い」の他に「凄い」という目盛りがある事を道場に入ってから気づきましたが、このお通夜の席で久しぶりにそれを思い出しました。


 中でも娘さんからの話は面白かった。

 家で留守番しているうちに鍵かけたまま眠ってしまったら、鍵を持ってない市原先生が3階の社宅の窓をぶち破って入ってきたとか。3階までベランダをよじ登ってきたらしい。


 あと一番笑えたのが、娘さんが学校から帰宅すると、先生が居間に寝転びながらAV見てた話ですね。

 反応に困り固まる娘さんに、先生は寝転びながら首だけ向けて「おう!」とだけ言って、そのままAV見続けたという。

 鋼の精神力だな! ちょっと真似できない!


 そうだ、娘さんと息子さんに、「金澤弘和「館長」のこと その3」でも書いた、先生と3件飲み屋に付き合った話をしたら、2人揃って「すみませんすみません」と謝られてしまった。いや、あれはいい思い出でして。


 それと、私が警備で配属された先が、市原先生が勤めていたのと同じ場所だという事、そこで「職場でのこと その3」でも書いた「あいつは俺にれてるからな」と先生が奥様の事を言ってた話をしたところ、これまた2人揃って頭を抱えて「バカだ…バカだ…」とうめいてて、思わず笑ってしまった。


 この数年前から、私は小説を少しずつ書いてネットに載せてました。いろいろとキャラクター作りをしていくうちに市原先生をモデルにした「パンチパーマの体育会系数学教師」というのを出そうと考えていたんです。

 その事を娘さんと話しているうちに、せめて自分が知っている事だけでも市原先生の事を文章にして残しておかなくては、という意思が、自分の中ではっきりと固まっていくのを感じました。

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